<バス旅記>

バスが美しく並ぶ鷲ヶ峰営業所
「川崎市交通局鷲ヶ峰営業所」は市営鷲ヶ峰西住宅に隣接。道路向かい側の市営長沢住宅の建物の下には車庫が構えられていて、バスが行儀よくこちらを向いて1列に並んでいる様子が眺められます。
市北部地域のバス運行の拠点として、麻生区や多摩区へ向かう路線の始発地点となっている一方、宮前平駅行きや溝口駅行きなど宮前区を横断する路線も出発。今回のバスの旅はここから発車です。

尻手黒川道路からは北門を通って
谷間の細くて傾斜のある道を抜けて、稗原交差点を左折。バスは尻手黒川道路を快調に進みます。
「次は北部市場前、北部市場前です」のアナウンスに、ん? ここに市場がある!? と、「次とまります」ボタンをピンポーン。下車した停留所の先の交差点に「川崎市中央卸売市場 北部市場」と書かれた柱が立っているのを見つけました。
川崎市中央卸売市場 北部市場は水産棟、青果棟、関連商品売場棟などに分けられ、卸売業者、仲卸業者、小売業などを営む人々で日々にぎわっています。
通常は一般消費者向けの小売販売はされていませんが、学校の行事や町内のイベントなどで大量の買い出しをする際は利用できて便利。食材はもちろん、焼きそばやたこ焼きを入れる透明パック、割り箸、景品のおもちゃなどのお祭り用品もどどんと揃えられます。
大中小の鍋、フライパン、ボールなどの調理器具を並べるお店やなんでも大量・大パックの食材店もあって、市場ってどうしてこんなに楽しいんでしょう! また、棟内の食堂は一般の人でも出入り自由で、新鮮な魚介類の刺身や定食、天ぷらなどを味わうこともできるのです。
ただし、荷物運搬用の乗り物が忙しそうに行き交っているので、じゅうぶんに気をつけて気をつけて歩きます。

広々として緑あふれる菅生緑地
市場のまわりはぐるりと緑に囲まれています。北部市場が建設された際、自然環境を保全した街づくりが行われたためで、ここは「緑豊かな市場」としても知られているのです。
南門の前には菅生緑地(市民健康の森〈東側地区〉)が広がり、遊具で遊ぶ子どもたちやお弁当を食べる家族連れ、木立のなかをのんびり散策してドングリ拾いを楽しむ人の姿がありました。

散歩にぴったりのユリノキ並木
尻手黒川道路に戻ってバスがくるのを待つ間、停留所が立っている歩道をあらためて眺めます。
大きな岩やベンチなどが美しく配された歩道には、5〜6月にチューリップのような花をつけるユリノキの街路樹。黄色く色づき始めた葉は落ち葉となり、走り行く車によって吹き起こった風にのって、からからからとスキップしていきます。

神聖な雰囲気が漂う犬蔵天神社
バスは清水台交差点を渡って、菅生車庫を過ぎ、犬蔵公民館前停留所へ。宮前区発行の「宮前区歴史地図」に書いてあった犬蔵天神社に行ってみようと下車します。
くねくねとした路地を入って行き、ふと見上げると、住宅と住宅に挟まれた急な階段のてっぺんに犬蔵天神社の小さなお堂。まわりには二十三夜供養塔(月待供養塔)をはじめ、いくつかの石仏が見られます。何年ぐらいのものなのかなぁと刻まれた文字に目を凝らしましたが、はっきりと読み取ることはできませんでした。

自由にお参りできる土橋観音堂
路地をそのまま進み、東名高速道路の高架下をくぐります。左手の坂をぐぐぐっと上ったところに、準西國稲毛三十三所観音霊場第三十番札所の土橋観音堂が建っていました。12年に1度の午年の春、秘仏である千手観世音菩薩のご開帳が行われ、人々が参拝に訪れるそうです。
土橋観音堂を管理されている方が、「そばにある正福寺は稲毛七薬師霊場第三番札所で、寅年に開帳。土橋地蔵堂は都筑橘樹地蔵菩薩霊場第二十番札所で、酉年に開帳されるんですよ」と教えてくれました。さまざまな霊場めぐりがあって、それらの札所が身近なところにけっこうあるものなのだなぁとびっくり。

秋を感じさせるススキと夕陽
正福寺と土橋地蔵堂をめぐって、地蔵堂のわきの坂道を上ります。開けた視界の下には東名高速道路の料金所。ゆらゆら揺れるススキが夕陽に照らされ、きらきらと輝いています。
再びバスに乗って宮前平駅に到着したとき、駅前に並ぶお店にはすでに照明が灯され始めていました。
文・写真・イラスト:森田奈央
川崎市在住のフリーライター。散歩が好きで、
好奇心のおもむくままに日々歩きまわっている。著書に猫を追いかけて歩いた「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)。
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