
室内にはインド直輸入の品々も
ディスプレイされている
日の出とともに起き、オーガニックを摂り、ヨガや瞑想をして一日を過ごす。しかも、ここはインドである。海外旅行といえばヨーロッパやハワイを好み、買い物ばかりに気をとられていたひと昔前の自分を思うと、我ながら別人のようで苦笑いを禁じえない。だが「アーユルヴェーダ」に基づく1ヶ月間の生活は、彼女にかつてない充足感を与えていた。
看護師として働く栗林さんがそもそもインドに興味を持つようになったのは、仕事の疲労によって腰を痛めたことがきっかけだった。ヨガを始め、それに伴って呼吸法や瞑想の存在を知る。とくに呼吸法を初めて経験したときに受けた衝撃が、いまも忘れられない。
「とても感覚的なもので表現するのは難しいんですが……。たとえば呼吸法を採り入れたことで、髪や肌にものすごく艶が出るようになったんです。自分の知らない、新しい世界に触れた感覚。そのときに、実際にインドへ行きたいと強く思いました」
その出来事以来インドの虜になった栗林さんは、長期休暇をとり、呼吸法を習った知人のつてを頼りに初めて現地を訪れたというわけである。アーユルヴェーダ、すなわちサンスクリット語で「生命の科学」を意味するインド医学を身をもって体験したのも、インドに行ったのが契機だった。

個性を尊重して食事や生活も
指導するという栗林さん
「体ってほんとうはこんなに軽いんだと、驚きました」自らトリートメントを受けたときの印象を、栗林さんはこう話す。
「西洋医学はおもに薬を飲んで治そうとしますが、アーユルヴェーダはデトックス、つまり『毒素を排出する』という考え方なんですね。治癒によって、本来の自分を取り戻す。私もアーユルヴェーダを受けて初めて、自分の体がどれほど汚れていたのか判りました」
1ヶ月間の生活を終えて帰国すると、彼女はさっそく勉強を始めた。看護師の仕事と平行して本を読みあさり、セミナーにも積極的に参加する。ふたたびインドに飛び、アーユルヴェーダの資格を取ったのは、昨年2月のことだ。その後、知人との共同経営を経て、今年に入り独立を果たした。自宅開業にこだわったのは、「お客さんをじっくりと診たい」という気持ちからだった。

そのひとに合った手作りの
オイルでトリートメントする
「アーユルヴェーダは、肌艶といった見た目を治すだけではないんです」と、栗林さんはいう。
「一番重要なのは、“内側から得られる幸福感”。本来の自分を取り戻すことは、体だけではなく、じつは心がとても満たされるんですね。うつ病など精神疾患の多い現代は、バランスが崩れて本来の自分を見失った状態なんです。でも取り戻したらこんなにも居心地がいいんだということを、できるだけ多くの方に知っていただきたいですね」
この11月からは、銀座アジアンカルチャーセンターでアーユルヴェーダの講座も始めた。幅広い活動のすべてに一貫しているのは、「ひとを治す手助けをしたい」と願う栗林さんの、看護師のころから変わらぬ思いである。
取材・文◎隈元大吾