
教壇に立つ傍ら、斉藤さんは 小説を書くことをライフワークにしている
東大在学中、斉藤さんは勉学の傍ら、「学力増進会」に籍を置いた。この会は東大生が独自に始めた教育活動で、当時は中学年代を対象に勉強を教えていた。
「アルバイトをしたくて始めたんですが……」学力増進会に入った動機を振り返り、思わず苦笑いする。しかし彼にとって、教育の現場は単なる小遣い稼ぎでは終わらなかった。入って間もなく授業で使用する教科書の作成メンバーに抜擢され、またサマースクールをはじめ直接指導を行なうなど、当初から活動の根幹に携わったのである。そんな彼が、大学を出てすぐに塾を開いたのは、ごく自然な成り行きだったと言えるかもしれない。以来30余年、宮崎台で教鞭を振るっている。
「性に合っていたんでしょうね」斉藤さんは言う。
「自分は何が好きなのかって、最初は得てして判らないものじゃないですか。ここまでやってきて、『この仕事がほんとうに好きなんだな』とあらためて実感しています」

和気あいあいとした授業に、生徒の表情もほころぶ
対象は小学生から中学生、高校生と幅広い。教科も英語や国語、小論文などの文系科目から、生物や化学といった理系科目まで多岐に渡る。テスト前とあれば、家庭科まで教えるという。また教える年代や教科がさまざまなら、クラスも複数から個人までと、生徒の要望や勉強の進度によって臨機応変に対応する。
「“街の便利屋”ですね。生徒に訊かれれば、なんでも教えるというスタンスです。初めて高校生に数学を教えることになったときには、分厚い参考書を自分ですべて解きました。子どもたちにやる気があるかぎり、一緒に勉強していこうと努力しています」

高校生はマンツーマンでじっくりと指導する
ただ教育の推移を長年見ているなかで、ひとつ、肌で感じている危惧がある。
「昔に比べて、いまの子どもたちは計算力が格段に低い。割り算などはとくに、解答までに時間がかかります。『ゆとり教育』の弊害でしょう。いまは見直されてきましたが、それでも渦中にいた子どもたちが社会に出てから苦労するのは目に見えている。ですから私は、『自分の力で克服しなければいけない』と指導しています」
今年、60歳という節目を迎える。斉藤さんは、「この歳になって夢なんてないですよ」と笑いながら、その理由を説く。
「夢がないというのは、いまの生活に満足しているから言えるんです。朝から晩まで教えることもしばしばですから、もちろん体力的にはきついですよ。でも生徒を教える苦労や厳しさが、楽しくて仕方ない。充実感があります。死ぬまでやりたいですね」
塾を開いて30余年、長きに渡る歳月が、斉藤さんの教育に対する情熱を証明する。そしてその長い道のりは、さらに遠くまで延びている。
取材・文◎隈元大吾
宮崎コリーヌ学習塾
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