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路傍の晶:第24回 めぐみ保育園 渡辺さん

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地域に根ざしてご活躍をされている店主の方々へのインタビューをお届けします

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第24回 めぐみ保育園 渡辺さん

「お母さんたちの悩みも聴きます」という渡辺さん。母親の味方だ

「お母さんたちの悩みも聴きます」
という渡辺さん。母親の味方だ


「おかあさんに会いに来たよ」
 青年はそう言ってはにかみつつ、目の前のとんかつを美味そうに頬張った。なにか辛いことでもあったのだろう、店に入ってきたときの表情は見るからに曇っていた。だが“おかあさん”と他愛ない会話に花を咲かせると、腹が満たされたころには生き生きとした表情に戻っていた。「また来ます」暖簾をくぐったときに比べひと回り大きく見える背中を揺らしながら、彼はまた日常へ帰っていく。

 渡辺さんは30年ちかく、あざみ野でとんかつ店を営んでいた。フランスで修行を積んだご主人とともに切り盛りする店のメニューは多彩で、テレビや雑誌で紹介されたり著名人が訪れたりと、巷では評判だった。そしてなにより、彼女自身の人となりが多くの客を招いたに違いない。常連も多く、「おかあさんに会いに来た」と皆な口を揃えたものだ。

「ひとが好きなんですよ」渡辺さんは頬を緩めた。
「触れ合っていると元気が出てくる。だから、ひととの触れ合いが好きなんです」

子どもたちのためのスペース。アレルギー対策も施されている

子どもたちのためのスペース。
アレルギー対策も施されている


 それにしても渡辺さんのバイタリティは逞しい。3人の子宝に恵まれた彼女は、「自分の手で育てたい」という思いから我が子のための部屋を店に設けた。店に立ちながら子育てに励む一方、かつて保育士として働いていた経験を活かし、保育園で夜勤にも精を出す。さらに福祉について学び、手話が使える数少ない店として耳の不自由な人たちからも支持されていた。

 そんな渡辺さんが第二の人生を考えるようになったのは、子どもたちが手を離れてからのことだ。その結晶が「めぐみ保育園」である。

 東有馬の自宅を改築し、1階を遊び場に、2階を食堂にした。壁には珪藻土を使い、アレルギーを持つ子どもたちにも優しい。周囲は田畑に囲まれており、農家の人々の協力もあって、外に繰り出しては野菜や野の花にじかに触れられる。食事はご主人の担当だ。栄養士の知人が用意した献立をもとに料理の腕前を揮っている。庭に備えた石釜でパンを焼いたり魚を燻製にしてみたり、採った野菜でバーベキューをすることもある。

「食育は当たり前のこと。自然と触れ合うことで、子どもたちの五感を育みたい」


親戚の家に遊びに来たような雰囲気。部屋の外には庭も広がっている

親戚の家に遊びに来たような雰囲気。
部屋の外には庭も広がっている


 もうひとつ、渡辺さんが大切にしていることがある。母親たちのケアだ。
「お母さん自身、子育ての不安をたくさん抱えていて、公園に行けなかったり、家で引きこもっている方も少なくない。そんなお母さんたちに2階の食堂を使ってもらって、お話しの場にしたり、のんびり過ごしてほしい。いつでも、どんな相談にも乗ります。“心の駆け込み寺”というか、お母さんたちにとってホッとできる空間をつくっていきたいですね」

 働いていると子どもを産み育てられないと、あるとき知人が漏らしたという。そのため渡辺さんは、子どもたちを24時間受け入れている。子育てをする母親たちもまた、頼れる“おかあさん”に背中を押され、我が子の手をとりそれぞれの日常へ帰っていく。


取材・文◎隈元大吾
めぐみ保育園

住所:〒216-0002  川崎市宮前区東有馬2-7-1
電話番号:044-861-5370
保育時間:24時間保育
休園日:12/29〜1/4

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