川崎アワード
取材の前にまず腹ごしらえ、と、駅の下にあるマクドナルドでテリヤキマックバーガーセットを食べてたら、隣の席に座ってた今ドキの女の子二人が、演劇のこと、映画のことについて熱く語り合っていた。かなりの熱さで大声になっているが、本人たちは気づかないらしい…こりゃどう見ても日本映画学校の子たちだ。
マクドナルドの中から、道路の反対側にすぐ見える日本映画学校。
いったいどんな学校なんだろう?
【理 念】
日本映画学校は、人間の尊厳、公平、自由と個性を尊重する。
個々の人間に相対し、人間とはかくも汚濁にまみれているものか、人間とはかくもピュアなるものか、何とうさんくさいものか、何と助平なものか、何と優しいものか、何と弱弱しいものか、人間とは何と滑稽なものかを、真剣に問い、総じて人間とは何と面白いものかを知って欲しい。
そしてこれを問う己は一体何なのかと反問して欲しい。
個々の人間観察を成し遂げるためにこの学校はある。
創始者 今村昌平
春休み中とはいっても、課題や作品に取り組む学生は休みもなく登校しているとのこと。広報部木村さんの案内のもと、校内を見せてもらいました。
学校自体はおせじにも広いとは言えないくらいの大きさ。
廊下には、作品のポスターや講演の案内などがいくつも貼ってありました。
次に見せてもらったのはダビング室、MA(マルチオーディオ)室。
パソコンをはじめ、オーディオ機器、すべてプロ仕様で、映像ソフトもやはりプロが使う「AVID(アビッド)」というのを使っているそうです。
ARスタジオ。
いわゆる「アフレコ」を行っているところ。
ここでは、撮影後に入れる効果音などの音入れをするのだそう。
スタジオという名前と、「本番」のランプを見ると、まるでテレビ局に来たような気がする。
どこの教室、スタジオを覗いても、けっこう周りに目もくれず制作をしている学生が多い中、1箇所だけ大勢でワイワイしている教室が!
いやいや、もちろん皆さん一生懸命に課題をこなしている合間、なんですけどね。
演出コース2年 小島ゼミのサカモトリョウスケさんにお話を聞きました。
社会人の頃からずっと「表現する仕事」に就きたいと考えていたサカモトさん、社会人を3年経験してから入学したそうです。
この学校で過ごしてきた2年間、一番思い出深い課題は何ですか?
1年のとき、入学して最初に出された「人間研究」。1つの人物、事象など、1つのものについて追求するというものです。
自分は「特撮ヒーロー」について研究するチームでしたが、調べれば調べるほど奥が深く、睡眠時間もほとんどなく泊り込みで取り組んだ時期もありました。
11人1チームで研究に取り組んだ1ヶ月、課題だけでなくスタッフ全員の人間性などもわかり合えたことも素晴らしい勉強になりました。
学校では、名作とよばれる作品や自主作品などを見て、それについて意見を言い合うという授業があるのだそう。
授業で映画が見られるなんて、なんてうらやましいんでしょうという私に、「そんなに生やさしいものじゃないですよ」と木村さん。
見たあとのディスカッションがそれはそれは激しいのだとか。
「いい作品でしたね」なんてのんきなことを言おうもんなら大変なことに…!?
「映画を楽しむ」ということと「楽しめる映画をつくる」ということは正反対なのかもしれません。勉強あるのみ!
別のスタジオでは、これから上演する作品の最終リハーサル中。
大きなスタジオに大勢の人が集まり、さぞかしにぎやかだろうと思いきや、足音も響くくらいの静けさ。舞台の上も見る側も真剣そのもの、笑顔すら出てこないほどの緊張感…。
インタビュー不可。お邪魔にならないよう、そっと出ました。
取材も終わろうとしたとき、教室でひとり手帳を見つめる女の子を発見。お話を聞きました。
大学で教育学を学んだ後、入学したというイトウサイさんは、2年から緒方ゼミに入るそう。
ウワサによると、かなりハードなゼミらしい…!?
この学校を選んだきっかけは?
いちばんの決め手になったのは、この学校の理念、今村昌平監督の言葉。心に突き刺さりました。
この学校なら、技術と知識を丁寧に学べると思ったんです。
入学してからの1年、どんなことを学びましたか?
学んだことは……「自分はまだまだ人間を知らない」ということです。
人間を知らないとリアリティが出ない。
人間を知らないと伝えられない。
人間を知らないと表現できない。
だから、これからもっともっと勉強していきたいと思います。