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宮前バスの旅

「宮02 宮前区役所前—野川台」の旅

第18回

提供:川崎市
宮前区内を走るバスは約45路線。坂が多い地域でもあり、バスは日常の足として欠かすことができないものです。
そんな移動手段としてふだん利用している路線バスも、のんびり“バスの旅”を楽しめば、窓の外には今まで知らなかった風景が待っています。
毎回、ひとつの路線を始発から終点まで乗車し、気になる停留所に途中下車。そこで出会ったものを紹介します。

路線案内

【運行バス】 東急バス
【系統名】  宮02
【おもな停留所】 宮前区役所前−土橋神社前—宮前平駅(南口)−馬絹−金山—上野川−野川小学校—野川台—山下—上野川—金山—馬絹—宮前平駅(北口)—宮前区役所前
【運行距離】 約6.7km
【経路】 宮前区役所前停留所を出発し、イチョウ並木の坂道を下る。土橋交差点を左折、尻手黒川道路へ。宮前平駅停留所(宮前平駅南口)を経由した後、尻手黒川道路をひたすら直進。野川小学校入口交差点を右折し、権六坂を上りきったところに野川台停留所がある。さらに、この路線は循環線のため、野川西団地入口交差点を右折。梅の木坂を下ったところの信号を右折し、上野川交差点を左折。再び尻手黒川道路を行き、宮前平駅停留所(宮前平駅北口)、宮前区役所前停留所へと向かう。
【特徴】 上記したとおり、循環型のバス。宮前区役所前—宮前平駅と上野川—野川台は往路・復路でルートが異なり、宮前平駅—上野川は同ルートを行く。平日、土曜、休日ともに1時間に1便(7〜17時台、15時台のみ2便)運行。路線の多くが尻手黒川道路を走る。
宮前平駅
宮前平駅
土橋
土橋
東平台
東平台
西福寺前
西福寺前
野川台
野川台

バス旅記

鷺沼北公園の展望台。<br>案内板によると、<br>多摩川の花火大会も眺められるよう。
鷺沼北公園の展望台。
案内板によると、
多摩川の花火大会も眺められるよう。
 東急田園都市線宮前平駅北口にある宮前平駅停留所から、「宮02」に乗車。今回は循環バスなので、乗車しやすいところからスタートです。まず、宮前区役所方面へ。富士見坂を上ると、宮前区役所前停留所。ここから下る坂の途中に、土橋停留所があります。
 この“土橋”という地名。『宮前区ガイドブック』の「源頼朝伝説」と題された記事には、その由来が書かれています。江戸時代の書物『新編武蔵風土記稿』によると、昔、このあたりは“太田”という地名でしたが、鎌倉古道を通りかかった源頼朝がこの地に土橋を架けたことで、土橋と呼ばれるようになったそうです。
 その土橋は、現在の土橋5丁目付近にあったらしいとのこと。また、土橋4丁目から鷺沼4丁目の「鷺沼北公園」のあたりには、頼朝が鞍を掛けたとされる「鞍掛けの松」があったといいます。さっそく、土橋停留所で下車し、鞍掛けの松を探してみよう! と、ちょっと(いや、かなり?)無茶な計画です。

静けさが漂う正福寺。<br>入口のそばに馬頭観音や庚申塔、<br>境内に地蔵尊が祀られている。
静けさが漂う正福寺。
入口のそばに馬頭観音や庚申塔、
境内に地蔵尊が祀られている。
 『宮前区歴史地図』を広げると、東名川崎インターチェンジに沿った道から1本入った場所に、“鞍掛松跡”の文字。それー! と行ってみたら、そこには大きなマンション。ケヤキが1本、枝葉を伸ばしていますが、松の木は見あたりません。かつて、“梵天山”と言われていた高台に位置する鷺沼北公園には桜の木。ふと気づくと、1本の木にセミが、ぱっと数えただけでも7匹! ジージージーと夏の終わりを惜しむかのように大・大合唱です。
 公園でも松の木は見つかりませんでしたが、おもわぬものを発見。なんと展望台があり、新宿方面のすばらしい眺望が広がっているのです。
 深緑の葉を揺らす風を感じながら、しばらく観賞。その後、住宅街を下っていくと、尻手黒川道路の手前に「土橋地蔵堂」、道路の向こうに「正福寺」。どちらの境内にもサルスベリの花が咲いています。

天に向かって幹や枝を伸ばす<br>泉福寺のサルスベリ。<br>樹高は7メートル。<br>
天に向かって幹や枝を伸ばす
泉福寺のサルスベリ。
樹高は7メートル。
 サルスベリといったら、泉福寺の樹齢450年のサルスベリも見逃せません。次の目的地は「泉福寺」に決定! と、東平台停留所で下車します。
 泉福寺は天台宗で、現在のご住職は30代目。本堂は弘化4年(1847)に建て替えられたものです。毎年、開花するサルスベリは、「まちの樹50選」に指定されていて、ゴツゴツとした木肌に深い歴史を感じます。見上げると、夏の空に深紅の花。はっと目を見張るような色鮮やかさです。
 サルスベリの木のかたわらに、「一隅を照らす」と刻まれた石碑。背面には「一隅を照らす此れ則ち國寶なり」と書かれてあります。
 これは天台宗の宗祖である伝教大師・最澄の言葉。宝というものはお金などではなく、自分が置かれた場所で努力し、光り輝くことができる人こそが国の宝であるということを意味しているそうです。1人1人が輝くことで社会全体は輝く、自分のためより人のため世のために努力することが大切だという教えなのです。
境内にイチョウとヒイラギの<br>市保存樹林が立つ西福寺。<br>ハスも見事。
境内にイチョウとヒイラギの
市保存樹林が立つ西福寺。
ハスも見事。
 再びバスに乗って、おっと! と、“次とまります”ボタンを押したのは、西福寺前停留所。正福寺→泉福寺→西福寺と、名前に“福”がつくお寺が3つなんて、縁起がいい! これは行かねばなりません。
 「西福寺」は高津区梶ヶ谷5丁目にある天台宗のお寺。おぉ、天台宗。確か、正福寺も天台宗。もしかして、サルスベリの木もあるかな? と見渡したら、み〜っけ!! そういえば、サルスベリが植えられているお寺って、意外と多いような気がします。お寺とサルスベリ、何か関係があるのでしょうか……?
 サルスベリの原産は中国南部。木の肌がなめらかで、木登りが得意なサルもすべるというたとえから、サルスベリと名づけられたとされています。また、花期が7〜9月と長いことから、「百日紅(ひゃくじつこう)」とも呼ばれます。
 お寺とサルスベリの関係について、2ヶ所の某植物園に問い合わせてみると、どちらも「うーん、どうなのでしょうねぇ」。そして、「サルスベリは姿が美しく、庭園に好まれる樹木なので、お寺でもよく見られるものなのでしょう」というお話。ふむ、花が少なくなる盛夏に咲く花として、お盆のころにちょうど咲く花として、お寺の庭を彩ってきた花であることにはマチガイないと考えました。


2009年8月下旬に取材しました。
文・写真・地図:森田奈央
川崎市在住のフリーライター。散歩が好きで、好奇心のおもむくままに日々歩きまわっている。著書に猫を追いかけて歩いた「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)。