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坂道は続くよ、どこまでも

第1回「富士見坂」の巻

宮前区は丘陵地帯に位置し、坂道が多いところ。区内には公募によって愛称が制定された坂道が18カ所あり(昔からの呼び名を持つ坂道も含む)、それらの坂には命名の由来を記した標識がそれぞれ設置されています。
地域の人々に親しまれ続けてきた18カ所の坂道を上って下りて、周辺を散策してみましょう。
<標識に記された坂名の由来>
この坂から富士山を見ることができるので愛称としました。
平成12年1月1日制定

坂道データ

Data-01

【名称】富士見坂 ふじみざか
【所在地】宮前平2丁目/土橋1丁目
【緯度経度】起点E139.35.3.9N35.34.55.4/終点E139.34.52.7N35.35.9.8
【長さ】約560m
【形状】始点より急な上り、すぐ左へ大きくカーブ、後はほぼストレート。富士見台小学校前で右へややカーブ。このカーブしたあたりが最高地点となり、終点まで残り約170mは緩やかな下り
【道路形態】2車線で、両側に歩道あり。日中の交通量はそれほど多くない。路線バスの通行あり
【途中休憩地】 ●上り1つめの信号右コーナーにベンチ1台あり ●上り1つめの信号から約70m左の土橋1丁目こども公園内にベンチ3台、ブランコ、動物形の乗り物(パンダ/コアラ)、すべり台、鉄棒、水飲み場あり
【その他】歩道に数カ所、電車や飛行機などの乗り物のタイル絵あり。途中に立っているバス停留所は下方へ傾き気味
始点
始点
最高地点
最高地点
終点
終点
土橋1丁目こども公園
土橋1丁目こども公園
歩道のタイル絵
歩道のタイル絵

<散策ノート>

並木と花壇が美しい「心臓破りの坂」

宮前平駅北口
宮前平駅北口
東急田園都市線宮前平駅北口を出て、通りを渡った左手すぐの交差点角に「富士見坂」の名前と由来が書かれた標識を発見。坂道はここを起点として、かなりの急勾配で始まります。
 下りてくる人々の両腕は交互に大きく振られ、ゆっくり歩こうにも勢いがついて、止まることも急にはできそうにない様子。逆に上りは、腰を斜め45度に曲げて一歩一歩足を踏みしめながら行く人、両腕でぐんっと踏んばってベビーカーを押す人、ぜいぜいと肩で息をしながら自転車を押し歩く人などなど。傾斜がきつくて長い坂のため、「心臓破りの坂」という別名ももっているそうです。
坂の途中で休憩できるベンチ
坂の途中で休憩できるベンチ
歩道には整然と並ぶモクレン科のユリノキ。その両側には、この数年で建ったのだろうと思わせるきれいなマンション群。1つめの交差点のいっかくには色とりどりの草花が咲く花壇が造られ、花のなかに「散歩が楽しい街かど賞」という札が立てられています。花壇のとなりにはベンチが置かれ、花を眺めながらひと息つくのにありがたい場所なのでした。

いまでも富士山が眺められる場所

坂の終点にある宮前区役所
坂の終点にある宮前区役所
「富士山を見ることができる」という富士見坂。富士見台小学校の前で坂道はいちばん高くなります。見えるとしたら、やっぱり頂上付近からかな? と思うも、あいにくの曇り空で確認することができません。「『富士見台小学校』って名前もあるくらいだからね、5年前ぐらいまでは坂道からも見えたんだけどね」と通りがかりのおばあちゃん。「いまでも見通しのよい横道へ入って行けば、南西の方角に見えるところがあるのよ」。そして、別の男性から聞いた情報によると、「宮前区役所前の通り沿いの公園から、晴天の日は眺められるよ」。
天気がよければ見えるかな?
天気がよければ見えるかな?
そこで、富士見坂の終点である交差点で左に曲がり、土橋一丁目公園へ。園内の雑木林を抜けて反対側の斜面にある階段の上に立つと、視界がたちまち広がりました。うん、ここならきっと天気がよい日には富士山が見えるでしょう。

坂の周辺の高台に建つ2つの神社

急な石段の土橋神社
急な石段の土橋神社
土橋一丁目公園の階段を下りて、住宅街のなかを歩いて行くと、土橋神社がありました。幅がせまくて急な石段が上方へ続き、うっそうとした木々に囲まれています。江戸初期に創建され、土橋の人々に鎮守の神さまと大切にされてきた神社。7月14日の夏祭りと10月6日の例大祭には川崎市指定重要習俗技芸の禰宜舞(ねぎまい)が行われるそうです。緩やかな“女坂”が境内まで伸びているので、「助かった」と坂を行き、途中の祠にひっそりとたたずむ石碑に手を合わせました。
稲荷神社と並ぶ八幡神社
稲荷神社と並ぶ八幡神社
富士見坂へ出て、両腕を大きく振りながら、どんどん下って行きます。次に向かったのは宮前平駅前の八幡神社。こちらの石段も急で、何段も上った先が境内。この地は土橋村と馬絹村との境だったところ。八幡神社はいったん馬絹神社に合祀されましたが、後に現在の場所に戻されたという歴史をもっています。平成7年に改築された本堂はまだ木の香りが漂い、並んで建っている小台稲荷神社には花束と日本酒がお供えされていました。
 高台に建つ2つの神社。かつて、境内から富士山は見えたのでしょうか? 富士見坂と同じように、もし見えていたとしたら、「富士見神社」という名前もありだったかもしれませんね?
文・写真・イラスト:森田奈央