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技連協活動レポート

「技能職者に学ぶ」職種別講座(生田中)

提供:川崎市技能職団体連絡協議会
「技能職者に学ぶ」講座を告げる<br>玄関前の掲示板
「技能職者に学ぶ」講座を告げる
玄関前の掲示板
川崎市技能職団体連絡協議会(川崎技連協)は市内の中学校生徒を対象とした「技能職者に学ぶ」職種別講座に講師を派遣しています。講座は、川崎技連協が川崎市と連携して2000(平成12)年度から後継者育成事業として取り組んでいるもので、今年度で12回目の職種別講座です。

今年度は例年よりも規模を拡大し、市立中学校8校で行われました。協力団体は24団体、派遣された講師数は延べ231名、受講した生徒は全部で1147名にもなります。

2012(平成24)年2月24日は川崎市立生田中学校(多摩区)にて「技能職者に学ぶ」職種別講座、8職種が実施されました。

生田中学校 8職種に1年生168人受講

講座と講師
参加した職種は以下の通りです(カッコ内は団体名と派遣講師数)。

◎石工職(川崎石材商工業組合・4名)
◎着付士(川崎着付士協会・4名)
◎畳職(川崎畳組合・6名)
◎鍼灸マッサージ師(川崎市鍼灸マッサージ師会・4名)
◎表具・インテリア(川崎インテリア表具組合・4名)
◎洋裁師(川崎洋装組合・4名)
◎理容師(川崎市理容協議会・3名)
◎和裁師(神奈川県和服裁縫協同組合川崎支部・3名)

開会全体会で講師に歓迎の言葉を述べる<br>下村佳史校長
開会全体会で講師に歓迎の言葉を述べる
下村佳史校長
技能職について説明する川崎技連協の<br>山本知男後継者対策委員長
技能職について説明する川崎技連協の
山本知男後継者対策委員長
体育館で行われた開会全体会では、下村佳史校長が来訪した技能職者を歓迎する言葉を述べ、生徒に「毎年、ものづくりのエキスパートの技能職者の方々をお招きして、講座を行っています。君たちの先輩も技能職者の方々から学びました。長い年月かけて技術を磨いてきた技能職者の方々からものづくりについて学び、実感してください」と受講するにあたっての心構えを話しました。
川崎市技能職団体連絡協議会の山本知男副会長・後継者対策委員長が同校玄関前に技能職者を歓迎する大きなポスターが掲示されているなど、技能職者から一生懸命に学ぼうとする意欲を感じたことや、大工職の技術を身につけるためにがんばってきた体験にふれながら技能職について説明し、講師を紹介しました。
全体会後、生徒は講師とともにそれぞれの講座の教室に向かいました。各教室の講座では、講師の自己紹介、その職種の歴史、特徴、道具についてなどの講義後、実技が行われました。

この中から「畳職」「表具・インテリア」の講座の様子を紹介します。

畳職

最初に講師の廣澤常廣さんが、「畳はね、奈良時代(西暦710年~794年)から使われてきた」ものの貴族をはじめ位の高い者しか使えなかった。庶民が使えるようになったのは江戸時代中期から」と畳の歴史を話しました。そして、畳の上に置いてある針や長いものさしなどの道具と使用法について説明しました。

その後、数人ずつ教室に特設された畳を囲み座りました。どの畳にも講師がつき、実技に入りました。
ひとりひとりの手をとり指導する講師
ひとりひとりの手をとり指導する講師
生徒に縦横約30cmの「ござ」と幅約8cmぐらいの長い模様入りの布が手渡されました。実技では「ミニござ製作」の体験を行います。廣澤さんが畳縁(たたみへり)を縫うお手本を示し、言いました。「私のしているのがベターではありません。自分でよく考えて針を動かしてくださいね」。
講師の針の使い方を見つめる生徒たち
講師の針の使い方を見つめる生徒たち
生徒は講師から「これから、“ミニござ”を作ります。針はまっすぐ畳の下から上げて抜く。これが基本ですよ。基本どおりに針を使わないと、きちんと縫えないし、けがをすることもあります」と注意を受け、針を持ちました。畳が「硬くて、針が動かない」と額に汗をにじませながら格闘する男子生徒。すいすいと縫っていく女子生徒。みんな一言も発せず、黙々と“ミニござ”作りに挑みました。
畳に針を通したのが初めての女子生徒は「難しかったけれど、先生の教えてくれた通りにするうちに、“ミニござ”が出来上がり、楽しくなった」と言います。完成した“ミニござ”を両手で持ち胸いっぱいに広げた男子生徒は「先生がとても親切に丁寧に教えてくれて、嬉しかった。将来、どんな仕事をすればよいかはわかりませんが、今日、畳の仕事を体験して、こんな仕事も自分に向いているかな、と思いました」と話しました。
廣澤さんは今回の講座を振り返り「子どもたちは真剣に講座に取り組み、時間内に製品(“ミニござ”)を仕上げてくれました。時間不足もあって、きちんと教えてあげられなくて申し訳ない思いもありますが、とてもやりがいを感じました。」と感想を語っていました。
一生懸命、“ミニござ”のへりを縫い付けます
一生懸命、“ミニござ”のへりを縫い付けます
出来上がった“ミニござ”を手に全体会へ
出来上がった“ミニござ”を手に全体会へ

表具・インテリア

最初に表具・インテリア仕事の内容が講義されました
最初に表具・インテリア仕事の内容が講義されました
最初に、宮口組合長が表具・インテリアの仕事について説明しました。
表具や経師の仕事が近松門左衛門の浄瑠璃『大経師昔暦』の題材や、山本周五郎の作品『さぶ』に登場することなどから、昔から生活・文化に欠かせない仕事であったこと、現代にも掛軸や屏風、額装、ふすま、障子もありますが、今ではクロス張り工事としてインテリア、内装工事、室内装飾の仕事のウェイトが高まっていることなどが講義されました。
壁掛け見本。絵をつける台地みたいなもの
壁掛け見本。絵をつける台地みたいなもの
次に実技として、壁掛(日本画等を付けてインテリアとして使用)の製作体験を行いました。
色のついた紙にのりを塗り、ベニヤ板に貼り付けます。表具の仕事での基本の技術であるのり付けは、ハケを使って過不足なくのりを含ませ、一様に塗っていきます。貼った後は四辺余った紙を裏に返して貼るのですが、角をうまく処理する必要があります。適度に隅をカットして、角から板が見えないように貼ります。表面も裏面も色のついた紙を貼ったあとは、乾いたハケで丁寧にならして、しわにならないようにします。
ハケの使い方を教わります
ハケの使い方を教わります
角をカットし、きれいに折り曲げて貼ります
角をカットし、きれいに折り曲げて貼ります
絵をとめるヒモを、穴を開けて通します
絵をとめるヒモを、穴を開けて通します
そして最後の工程は、ヒモ掛けです。絵や写真が四隅に掛けたヒモに角がはみ込まれるように裏から掛けていき、最後は端の2本が上部の真中で結ばれるようにして完成です。印刷された日本画の墨絵を選んでもらい、掛けて持ち帰ります。生徒の感想は、「のり付けとヒモを通すところがちょっと難しかったけれど、今までやったことのない体験で楽しかった」とのことでした。
用意された絵をもらって自分が作った壁掛けにはめて持ち、記念写真
用意された絵をもらって自分が作った壁掛けにはめて持ち、記念写真

「学んだことを生かそう」 閉会全体会で誓う

教室から生徒が講師といっしょに体育館に入りました。閉会の全体会で生徒の代表が「講師のみなさん、ありがとうございました。生徒のみなさん、ものづくりの大切さ、すばらしさ、厳しさを学びましたか。今日学んだことを生かしましょう」と話しました。

講座ごとに代表の講師が「生徒さんの取り組む姿勢が大変、積極的でよかった。これからいろいろ体験して学んでください」(石工職)、「今日の経験で、いろんなことの経験、体験の大切さに気づかれたことは今後もきっと役に立つと思います」(表具・インテリア)、「私たちにとって大切なことは、お客様との出会いです。今日、生徒のみなさんに出会い、真剣に学ぶ姿に接し、とても嬉しく思いました」(理容師)など、感想と励ましの言葉を述べました。
閉会全体会で講師に質問をする生徒
閉会全体会で講師に質問をする生徒
全体会の中で質疑応答が行われました。

■仕事をしていて一番うれしかったことは?(男子生徒)
-お客様に喜ばれたこと。(理容師)

■自分の仕事でやりがいを感じたときは?(女子生徒)
-なかなか自分で満足に出来たと思うことは少ないですが、なによりもお客様から『ありがとう』といわれたときです。(和裁師)

■どんな思いで仕事をしていますか?(女子生徒)
-(お客様の注文に対し)出来ないとはいえない。どんなに難しいことでも、出来るようにしなければならないと思って仕事をしています。毎日が勉強ですし、勉強をしなければならないと思っています。(着付士)

などのやり取りがあり、あっという間に予定の時間が過ぎました。
生徒に励ましの言葉を贈る川崎市<br>技能職団体連絡協議会の若月偉男会長
生徒に励ましの言葉を贈る川崎市
技能職団体連絡協議会の若月偉男会長
川崎市技能職団体連絡協議会の若月偉男会長は講評の中で「衣・食・住」など、生活には技能職が欠かせないことを話し、生徒に「どんな職業でもよいです。そのプロになることを目指して進んでください」と激励の言葉を贈りました。
下村佳史校長は「生徒たちはやがて訪れる職業に就くとき、今日のこと(受講)は貴重な財産として生かされると思います」と述べ、講師に感謝の意を表しました。