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川崎36景

第1景 甘なっとの鍋とおばちゃん

甘なっとよ、永遠に…

川崎の隠れた景色を筆ペンでスケッチしていく「川崎36景」。
記念すべき第1回目は、私の大好きな「甘いもの」に関する絵を描かせていただきました。
六郷橋を降りるとすぐ目の前にある「上光」。
六郷橋を降りるとすぐ目の前にある「上光」。
う~寒い寒い。
はるばる東京から六郷橋を渡って(って、ほんの100メートルくらいだけど)やってきた、川崎の町。
こんな寒い日は早く帰ってこたつでお茶をすすりたい…
もちろん甘いものと一緒に!
そんなことを考えながら橋を降りてきたら、なんといきなりあるじゃないですか。甘納豆の店が!
甘納豆しか売ってないのかなあ?
私は甘納豆の店に遭遇したのは生まれて初めて。
ちょっとうれしい発見です。
昭和の香りたっぷりの店内
昭和の香りたっぷりの店内
ガラガラとガラスの引き戸を開けて中に入れば、思ったとおりの甘納豆の店。
「甘なっと」ののれんがいい感じ。かわいいよねこれ、「甘なっと」って。
しかしまあ、ショーケースの前、狭っ! 
ガラスに顔をくっつけて、どアップの甘納豆たちとにらめっこしながら選びます。
豆と見つめあっちゃうと、どれもこれも美味しそうに見えてしまう。これはもしや、戦略!?
どれもこれも美味しそうで、なかなか決まらない。
「すいませーん、これ全部100グラムずつくださーい」
こんなふうに注文できるのも、量り売りの魅力。
私が子どもの頃には当たり前だったお菓子の量り売りも、最近ではとんと見かけません。
うーん、子ども時代に戻ったみたい……いいよいいよこの昭和な感じ。
年季の入った塗りのお盆に映える甘納豆。
年季の入った塗りのお盆に映える甘納豆。
慣れた手つきで袋に入れてくれる。
慣れた手つきで袋に入れてくれる。
おばちゃん、このお店、いつからやってるの?
「60年以上だねぇ、でももう私の代で終わりにするんですよ」
えええー、今日初めて遭遇して大感激だったのに…もっとずっとやっててよ、おばちゃん。
「おじいさんが亡くなってからはずっと一人で作ってるんだけど、豆を煮る鍋が重くてねぇ、この年になると腰にきちゃうのよ」

そうなんだ……続けてほしいけど、体が第一だもんね……
初対面なのに、なんだかずっと昔からの知り合いのような気持ちになってしまう。
「その重たい鍋、見てみる?」
うんうん、見せて! 
おばちゃんは、裏の工場へ案内してくれました。
大きな鍋が並ぶ工場の中
大きな鍋が並ぶ工場の中
おおー、鍋がいっぱい! しかもみんなでかい!
お店の裏の小さな工場の中には、大きな鍋とざる、そして使い込んだ棒が所狭しと並んでいる。これで甘納豆を作るんだ。
「ちょっと持ってごらん」
そう言われて手をかけた鍋。「若い」私にも持ち上がらない…マジ重い!
「この鍋に豆と水が入るとね、軽く30キロは超えてしまうのよ」

いやいや、この鍋を毎日持ち上げて甘納豆を作っているとは。ホント、一緒に取材したうちの若い男の子も鍋を持ち上げて音をあげたほどの重さなんです。
常連のお客様みんなに「もっと続けて」と言われているというこのお店。
初めての私ももちろん続けてもらいたいと切に願います。ただ、こればっかりはおばちゃんの心次第なので無理は言えませんが…
おばちゃんの写真も撮らせてほしいとお願いしましたが、
「私はいいの出さないで、でもうちの甘納豆は出してもいいよ、自信持ってるから」
テレ笑いしながら言うおばちゃん。でもその姿、ぜひ紹介したい!
というわけで、その姿を筆ペンで描かせてもらいました。
古い大きな鍋とおばちゃん。お店の最後のその日まで、美味しい「甘なっと」作ってね!
甘なっとよ、永遠に…
甘なっとよ、永遠に…