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かわさきマイスター活動レポート

革張り椅子製作教室

川崎市最高峰の匠「かわさきマイスター」 出井 明さんに学ぶ

提供:川崎市
椅子製造業としては初めて「かわさきマイスター」に認定された出井 明さんに学ぶ「革張り椅子製作教室」が、平成24年1月28日(土)に、てくのかわさきで開催されました。当初募集人数は15人でしたが30人を超す応募があり、急きょ20人に変更するほどの人気ぶりでした。参加者は、男性7人・女性13人、年齢層では中高年主体で小学4年生の女子と一緒に参加していた親子が1組でした。当日は、出井さんの勤務先である(株)キルト工芸の社員の方11名もサポート役として参加しました。
■講師紹介
出井 明さん

平成22年度認定かわさきマイスター(椅子製造業)
株式会社キルト工芸勤務

椅子張りに卓越した技能を持ち、椅子作り約40年のキャリア、そして後継者づくりの功績などが認められて、平成22年川崎市より認定を受けました。勤務する椅子製造専門メーカー(株)キルト工芸の下で、デザインとものづくりの現場で自ら技能を発揮すると共に社員の育成にも努めていて、会社にはなくてはならない存在ととなっています。中でも名品やアンティーク椅子の修復の腕は追隋を許さず、また海外の航空会社のエアバスA380のビジネスクラスシート、新幹線の運転席シートなど特に精密さが要求される仕事では欠かせない存在となっています。

出井さんの詳しい紹介ページはこちら

体験教室の概要

(1) グループ分け
まず20人の生徒さんを4~5人ずつ7つの作業台に配置します。それぞれのグループにはベテランのキルト工芸の社員の方がサポート役として付きます。
(2) 椅子作りの材料
・ホワイトラワン(南洋材)で木組みされた椅子の骨格
・座面で体重を支える丈夫な麻布の帯4本
・その面を覆う麻布
・その上に載せて糊づけする硬軟のウレタンスポンジ2枚
・最終座面用の革(牛の背中部分の高級なめし革)
・タッカーでホチキス打ちした革の部分を目隠しする同色の帯革
(3) 道具
・タッカー(電動式の空気圧によるホチキス機具)
・電動の糊の噴霧器
・金づち
・仮打ちしたホチキスを抜く道具
・張るときに強度を高めるためのテコ材
・カッター
(4) 手順(工程)
1、木組みの上面(座面)に麻布の帯をホチキス止め
2、その上を麻布で覆いホチキス止め
3、4隅をカットされて整形されたやや硬い1枚目のスポンジの糊づけ
 整形していない2枚目の柔らかいスポンジをその上に整形して糊づけ
4、4隅の木が見えるように整形し座面を覆って椅子裏にホチキス止め

さあいよいよ椅子作り体験の始まりです

最初に作業の全体を説明する出井さん
最初に作業の全体を説明する出井さん
出井さんから、このような全体説明が行われ、第1工程から作業が始まりました。以下1つの工程が終わるとマイスター席の前に全員集まってもらい、次の工程の説明、実演、作業ポイント、注意点が行われ丁寧でスムースな進行が図られました。また、社員の方々はグループ内の生徒さんを注意深く見守り、手厚くサポートをしていました。
5色の革からそれぞれ好きな色を選びます
5色の革からそれぞれ好きな色を選びます
第1工程の前にまず5色の革を各人好きに選ぶ作業です。
はしゃぎながら各々好きな色を選んでいました。小4年生の女の子は白を、お母さんは汚れの目立たないものをと茶色を、年配の男性は4歳女の子の孫にと赤の革を選んでいました。
麻布の帯のタッカーでのホチキス止めの指導
麻布の帯のタッカーでのホチキス止めの指導
最初の工程は体重を支える麻布の帯を強く張ってホチキス止めする作業です。
女性にはやや手に余るようで、サポートしてくれている社員の方に助けを求める例が多くみられました。ちなみに女性が張ったものと男性のそれと比べてみると女性のクッション度はややソフトでした。
小4の女の子に丁寧に指導するキルト工芸の社員さん
小4の女の子に丁寧に指導するキルト工芸の社員さん
この工程も含めてタッカー使用が頻繁に出てきますが、危険の伴う道具なので、社員の方の指導もケガをしないようにと注意深く丁寧にその都度見守り指導していました。最初は皆さん恐る恐る作業をしていたため、完全に打ち込めなったり、瞬間手がぶれて一様でなかったりしていましたが、最後のほうでは小4女の子も慣れてきてバンバン打ち込めるようになっていました。
麻帯の上に麻布をカバーしてホチキス止め
麻帯の上に麻布をカバーしてホチキス止め
次の工程は、麻布で覆う作業です。
4隅を切り取りしわのないように4方に引っ張ってホチキス止めし、あまりの布をホチキスのラインに沿ってきれいに切り落とします。ここまではタッカーの扱い方次第で比較的難しい作業ではなさそうでした。
その上に1番目のスポンジクッションを糊付け
その上に1番目のスポンジクッションを糊付け
次の第3工程は2枚のスポンジクッションの糊づけ作業です。糊は電動噴霧器による吹付けですが、微妙なバルブ調節と距離の間隔など予想外に難しそうでした。糊面に噴射させないためにガードの段ボールを片手で添えて噴射するのですが枠外に出て木組みが汚れたりするので、サポート役の社員の方が、もしくは生徒さんが助け舟を、と大忙しでした。
いよいよ難関の革張りのホチキス止め作業です
いよいよ難関の革張りのホチキス止め作業です
いよいよ一番の要の作業、革張りの作業です。
今までの作業は基礎の部分で見えませんが椅子として機能するうえで大事な仕事でした。しかし革張り椅子として、その名に相応しい革の上質感としわのないスッキリとした仕上がりでなければその名に値しないものとなってしまいます。難しいところは、想像の通り4隅の革の巻き込み方がうまくいかないとあちらこちらにひずみが生じ、しわになってしまうところです。つまり4面・4隅の張り具合が均等でないとその可能性が大きくなります。皆さんこの工程では、今までにない真剣な顔つきで取り組んでいました。
サポートの社員さんも大忙し
サポートの社員さんも大忙し
サポートしている社員の方も「皆さんに満足のいく自作品を持ち帰っていただきたい」という気持ちで真剣に手伝っていました。打ち込んだホチキスをはずして引張り直したり緩めたり、しわの部分に綿入れをして膨らましたりと、1番忙しい工程で最も長い時間を要しました。
革のホチキス止め跡を同色の革帯で隠して完成!
革のホチキス止め跡を同色の革帯で隠して完成!
最後は、裏側の革張りのホチキス跡を同色の帯革で糊づけをし、目隠しをして完成品ができあがりました。

10時から始めて予定終了時間の13時を大きくオーバーして14時となってしまいました。それでも生徒の皆さんやや疲労は見えますが、満足気な清々しい顔つきです。

感想としては、

「久しぶりの工作大変面白かった。」 
「持って帰ってどこで何に使うか楽しみ」 
「参加費に見合った出来栄えで嬉しい」 
「楽しい一日でした。でもちょっと疲れました」 
「孫がどんな顔をしてくれるか気になる」 

などが聞かれました。

みなさん持ち帰り用の大きなビニール袋に入れた自作の椅子を抱えて、かわさきマイスターの出井さんと、サポートしてくれた社員の方に見送られて、お礼を言いながら満足そうに帰っていきました。
株式会社 キルト工芸

社員50人の、日本を代表する椅子張りメーカーとして80年の歴史を持ちます。創業者は14歳から修業し、ヨーロッパのクラシックな椅子張り技術をいち早く習得し、若くして大使館や高級ホテルの家具を手掛けました。この間最終縫合のための金属プレート「ピット」を開発し、それは今でも多くに家具製造に使われています。その歴史の中で培われてきた経験と優れた職人の技術力とデザインの力を融合させた椅子や家具づくりは高い評価を得ています。

■住所: 〒210-0858 川崎市川崎区大川町8-5
■TEL : 044-333-1798
■FAX : 044-366-1257
■HP  : www.kilt.co.jp
川崎市生活文化会館 てくのかわさき

てくのかわさきは、技能職者が技術を磨き、市民が多目的に利用し、技能職者と市民が、親しく交流する施設として開設されました。
「てくのかわさき」は、一般公募によりいただいた愛称で、それぞれ「て=手(芸)」「く=工(芸)」「の=能(技)」を表しています。

■住所: 川崎市高津区溝口1-6-10
■TEL : 044-812-1090
■FAX : 044-812-1117
■HP  : http://www.zai-roudoufukushi-kanagawa.or.jp/tekuno.html