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かわさきマイスター活動レポート

平成21年 高津区民祭・レポート

モノづくりに携わる匠の技を知るいいチャンスに!

提供:川崎市

「かわさきマイスター」が出展

出展会場となった高津区民図書館前のテント
出展会場となった高津区民図書館前のテント
今年7月26日(日)、神奈川県下の川崎市高津区で、夏の恒例となった高津区民祭が開催されました。開催場所は、川崎市高津区スポーツセンターをはじめ、同区内8カ所でさまざまな催し・企画展などが行われました。同祭は今年で、36回目を数えます。
会場の1つとなった高津図書館内では、開館80周年を記念しての写真展とともに、同図書館前の広場では、いくつかの企画展も開催されました。その1つに、川崎市が平成9年から推進する「かわさきマイスター」による展示ブースがありました。

「かわさきマイスター」出展ブース
「かわさきマイスター」出展ブース
川崎市では、極めて優れた技術を持つモノづくりの熟練技能者を「かわさきマイスター」として認定・表彰し、その技能の伝承を図る目的でさまざまな振興活動を行っています。今回の高津区民祭でも、これまでにマイスターとして認定された、各界の5名の熟練技能者が自らの手による作品・製品を持ち寄り、来場された市民の方々にモノづくりと技術の楽しさに触れてもらうため、広く紹介されました。
作品・製品を展示された5名のマイスターは、浅水屋甫さん(平成16年度表彰・広告看板製作)、石渡弘信さん(同9年度表彰・手描友禅)、井上衛さん(同20年度表彰・造園士)、鍵屋清作さん(同12年度表彰・金属ヘラ絞り)、流石栄基さん(同17年度表彰・印刷技能士)の方々でした。

当日出展した5名のマイスターの話

浅水屋甫さん(広告・看板製作)

表札づくりの実演をする浅水屋さん
表札づくりの実演をする浅水屋さん
浅水屋甫さんは、デジタル制作が主流となった現代で、昔ながらの味わい深い手書きの看板・広告制作の技法を極めた技能者です。「手書きでしか、文字が生きている感じはなかなか出せないんですよ」と、デジタル制作では表現が難しい、流れるようでいて、絶妙にバランスのとれた文字配置を技と勘で実現します。
デジタルでは表現できない手書きの魅力(浅水屋さん)
デジタルでは表現できない手書きの魅力(浅水屋さん)
以前に市内の中学校に講演で招かれた際、生徒からの依頼で約1メートル四方の紙に、『匠』の一文字を筆書き実演したときのことを、「生徒さんみんなに喜んでもらって嬉しかった」と顔をほころばせながら語ってくれた表情がとても印象的でした。

石渡弘信さん(手描友禅)

伝統の手描友禅の魅力を伝え続ける石渡さん
伝統の手描友禅の魅力を伝え続ける石渡さん
石渡弘信さんは、手描友禅の職人として、日本画のよき伝統をいまに伝える職人です。平成9年の第1期の「かわさきマイスター」表彰者で、経済産業省の認定
伝統工芸士でもあります。「モノが溢れる現代、何でも手に入る一方で、本物を求めそのよさをわかってくれる人もだんだん多くなっていると感じます」と語る石渡さんも、学校での実演指導などの機会があります。
伝統の手描友禅の魅力(石渡さん)
伝統の手描友禅の魅力(石渡さん)
そんなとき、「少しくらいはみ出してもいい。あまり細かい指導はせずに、生徒の自主性に任せて好きなように絵を描いてもらうんです」。すると「不思議なほどに、何時間でも夢中になって生徒たちは絵を描く」というのです。生徒たちにもきっと貴重な体験となっていることでしょう。

井上衛さん(造園士)

縄縛りを実演する井上さん
縄縛りを実演する井上さん
造園業を営む井上衛さんは、自ら図面を書き、庭全体のコーディネートを手掛け、そこに川・池・植物を配置しながら、いわば自然を再現できる高度な技能を持っています。ただし残念なことに「いま、そういった仕事は決してメインではなく、既存の庭のメンテナンスなどが多くなっています」。
世界的にも評価の高い日本の造園技術(井上さん)
世界的にも評価の高い日本の造園技術(井上さん)
エコ・環境への意識の高まりから、造園に興味を示す若者も少なくないということですが、「造園の醍醐味に触れられる機会が少ないのは可哀想ですよ。少しで
も、そんなチャンスを作ってあげたいと思っています」。世界的にも評価の高い日本の造園技術ですが、その振興に向け、率先して意欲的に取り組んでいます。

鍵屋清作さん(金属ヘラ絞り)

自身の手による金属ヘラ絞り作品を説明する鍵屋さん
自身の手による金属ヘラ絞り作品を説明する鍵屋さん
ステンレス・金属などを回転させる機械にかけて、金属製のヘラ工具で成型することを、金属ヘラ絞りと呼ばれますが、その卓越した技能を有していることで平成12年にマイスター表彰されたのが鍵屋清作さんです。「大型パラボラアンテナやロケットの先端部分などを作るにもこの技術は必要なんです」。
金属ヘラ加工によって実現される流線を醸し出す作品(鍵屋さん)
金属ヘラ加工によって実現される流線を醸し出す作品(鍵屋さん)
逆に小さいものならば、「シャープペンの先の数ミリの大きさのものまでいろんなバリエーションがあります」。そんな鍵屋さんも、製作現場はもちろん、それ以外の場所でも技術・技能の伝承に心血を注いでいます。若手人材の育成のポイントは「興味を抱かせ、やる気にさせることです」。

流石栄基さん(印刷技能士)

世界的にも著名なアーティストの印刷物も手がける流石さん
世界的にも著名なアーティストの印刷物も手がける流石さん
カラー印刷の世界で、思い通りの色をポスター・写真集などで表現するには、実は高度な技術と長年の経験が必要になります。流石栄基さんは、その分野を極めたスペシャリストです。「プロの一線で活躍する画家やアーティストの、色へのこだわりは並大抵のものではありません」。
カラー印刷技術の深淵さを伝える作品(流石さん)
カラー印刷技術の深淵さを伝える作品(流石さん)
その作品をカラーの印刷物にする際、彼らが「どうしても諦めがちになっているケースも少なくないんです」。それを表現できる流石さんは、世界的アーティストの印刷物をいくつも手掛けた実績があります。「素直さと謙虚さを持ち合わせた人が、やはり成長が速いですよ」とは、自らも後継人材の育成にも携わるなか、実感されることのようです。