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かわさきマイスター活動レポート

かわさきマイスター匠展(たくみてん)1日目レポート

次世代に伝えたい「一流の技能」をあなたに披露

提供:川崎市
川崎市では、平成9年度から、モノづくりに携わる高度で熟練した技を持つ技能者を「かわさきマイスター」に認定し、その技の伝承や、振興活動を支援しています。
平成21年9月2日(水)~9月4日(金)の9時から16時、川崎市多摩区登戸の多摩区総合庁舎1階アトリウムにて、「かわさきマイスター匠展」が開催されました。この「かわさきマイスター匠展」では、「かわさきマイスター」が、その卓越した技術・技能を実演・展示しました。開催期間中は、一日あたり約1,000人の人が訪れ、「かわさきマイスター」の素晴らしい技術、芸術の域に達した見事な「匠(たくみ)の技」に感嘆の声を挙げていました。
 
 

実演コーナー 4名のマイスターの熟練した技術を間近で!

1日目となる9月2日(水)は、4名のマイスターが実演コーナーに参加。来場者にとってその技を身近に感じるとても良い機会となりました。
参加されたマイスターは、
・平成13年度、の関戸秀美さん(神社寺院銅板屋根工事)、
・平成10年度、の内海正次さん(寝具製造)、
・平成17年度、の磯野紀子さん(印章彫刻士)、
・平成14年度、の三上峰緒さん(美容師)でした。


関戸 秀美さん (神社寺院銅板屋根工事) -鏨(たがね)を使ってのシルバーリング・根付作り製作体験

関戸秀美さんの実演です。
鏨(たがね)、金鎚(かなづち)を使ってスプーンやシルバーリングに模様を付けていきます。
昔からの作り方とそっくり同じにしてあり、古来から伝わる味のあるスプーンです。
昔からの作り方とそっくり同じにしてあり、古来から伝わる味のあるスプーンです。
細やすりやへらで磨き、エッジをかけて仕上げます。やすりで削るときは、むらを残して手作りの雰囲気を出します。
細やすりやへらで磨き、エッジをかけて仕上げます。やすりで削るときは、むらを残して手作りの雰囲気を出します。
今回の実演では、通常3,000円するスプーンが1,000円で販売されていました。
このスプーンは、味わいのあるスプーンとしても使えますし、ペンダントとして使うこともできます。
鏨(たがね)を使って、菊の模様、瓢箪(ひょうたん)の模様、将棋の駒(こま)などの模様を根付けに付ける。
鏨(たがね)を使って、菊の模様、瓢箪(ひょうたん)の模様、将棋の駒(こま)などの模様を根付けに付ける。
根付とは、ポケットのなかった江戸時代に、印籠や巾着、煙草入れなどの提げ物(さげもの)を腰の帯にさげて携帯するため、紐の先に結わえて使用する滑り止めとして作られ、装飾美術品の域にまで発達した、日本独自の小さな細密彫刻のことで、ケータイストラップの起源は根付とも言われています。
こちらが1700年前の大工さんの使ったのと同じ形状の鏨(たがね)です。
こちらが1700年前の大工さんの使ったのと同じ形状の鏨(たがね)です。
鏨(たがね)とは金属を切断したり、彫ったり、削ったりするのに用いる工具で、長さ7~8cmの鉄の棒です。

関戸さんは、「これは1700年前に使われていたのと同じ形状の鏨(たがね)であり、金鎚などを使って大仏殿の殿べんにも使っています。私も、これに憧れてこの世界に入りました。この良さをみなさんに少しでも味わってもらえたら。」と語っていました。

内海 正次さん (寝具製造) -布団・かいまきのミニチュア(1/25)(冨田屋流の技能継承)・変型ざぶとん・亀型・梅花型・ダイヤ型

冨田屋流のかいまきのミニチュア(1/25サイズ)
冨田屋流のかいまきのミニチュア(1/25サイズ)
かいまき(掻巻)とは、袖の付いた寝具のことで、綿入れの一種です。肩から風が入らないような形状になっている暖かい布団で、着物と布団が一体化したようなものであり、身体にフィットしているため、すきま風が入っても暖かいというものです。
実はこれ、1枚の布から作ってます。
こうしたものを作るには、熟練の技が必要であり、またこれほどのものは機械では作れないと言われています。
手造りの良いところは、胸元を軽くして、足先回りに綿を多目に入れるなど、身体に合わせた細やかな仕立てができることです。
この梅の形の座布団は、履物を履く際に利用されました。
この梅の形の座布団は、履物を履く際に利用されました。
この座布団は、椅子の上や、背もたれなどによく使われるそうです。
この座布団は、椅子の上や、背もたれなどによく使われるそうです。
綿の花と、布団
綿の花と、布団
これらの座布団や布団は、縫い目のない加工により作られています。
内海さんは、「手造りの布団の良さが、少しでも伝われば」と語られていました。

磯野 紀子さん (印章彫刻士) -密刻彫りゴム作品

注文を受けた密告の彫りゴム印作品を、無心に彫る磯野さん
注文を受けた密告の彫りゴム印作品を、無心に彫る磯野さん
磯野さんは、「かわさきマイスター匠展」に、9月2日と3日の2日間参加して実演されました。一個1,000円の磯野さん手彫りの判子の作品は、続々と注文される盛況ぶりでした。
この手彫りの判子は、主として絵手紙や年賀状に捺す用途で使われるそうで、とても味わいのある文字になっています。
注文する人の中には、「去年も彫っていただきましたが、今年もまた彫ってほしいと思って来ました」という方もいるほどの人気ぶり。
閉会時刻は16時でしたが、磯野さんは17時頃まで残って依頼されたゴム印作品を丁寧に仕上ていました。
このような判子を彫ることができます。
このような判子を彫ることができます。
これは以前小学生が磯野さんの指導を受けて彫ったものです。
これは以前小学生が磯野さんの指導を受けて彫ったものです。
密刻の、龍とこうもり<br>「龍は空中を飛行し、雲や雨を起こし稲妻を放つ強いものにさらに強を加えてくれます。」
密刻の、龍とこうもり
「龍は空中を飛行し、雲や雨を起こし稲妻を放つ強いものにさらに強を加えてくれます。」
密刻の、双龍(ふたつりゅう)
密刻の、双龍(ふたつりゅう)

三上 峰緒さん (美容師) -色と編むと結びによってその心を形に表わす「夢のある編み込み」

テーマ「以和(イーフウー)、為貴(ウェイクイ)(平和)の風」「千の風になって」の歌が流行ったことから発想されたヘアスタイル。人々が和やかにむつみ合うことの大切さや、平和を求める世界の人々と手をつなぐ事を、円結び=世界平和=和として、平和を象徴する塔に風が吹く様子が表現されています。
テーマ「以和(イーフウー)、為貴(ウェイクイ)(平和)の風」「千の風になって」の歌が流行ったことから発想されたヘアスタイル。人々が和やかにむつみ合うことの大切さや、平和を求める世界の人々と手をつなぐ事を、円結び=世界平和=和として、平和を象徴する塔に風が吹く様子が表現されています。
三上さんは、小笠原流礼法の心を編み込みスタイルにどのように生かしたら現代のヘアファッションにマッチするか自分で試作しながら自分で会得し、小笠原礼法の功労賞も受賞された方です。
※小笠原流礼法とは、相手のために自分はどのようにしたらよいのか、人を大切に思う「心」を、どのように表現して伝えるか、その「心」の表現方法としての基本的な立ち振る舞い・礼儀作法の流派です。
テーマ「一粒万倍」。この髪の結びは稲穂であり、小さな三つ編みで小さな米粒を表現したもので、僅かなこと、一粒のお米も粗末にしてはならない、という心からきています。
テーマ「一粒万倍」。この髪の結びは稲穂であり、小さな三つ編みで小さな米粒を表現したもので、僅かなこと、一粒のお米も粗末にしてはならない、という心からきています。
三上さんが編み込みに魅かれるようになったきっかけは、40数年前のある日、客待ちの際テレビ画面に、スワヒリ・スタイルというケニアで典型的なヘアスタイルといわれる編み込みの黒人女性が映ったことだと語っています。
この映像を見たとき、三上さんの頭に、「編み込みスタイルが日本でも、はやるんじゃないかな」という考えが、ひらめき、夢中になっていきました。

当時、三上さんは小笠原流礼法の手ほどきを個人的に受けており、水引や組紐を使った飾り結びの美しさにも魅せられていました。
そしてあるとき、小笠原流礼法で教えを受けた包み結びに使われている水引や組紐の飾り結びをあしらってみると、それが編み込みスタイルにとてもマッチすることを発見しました。
それから、水引と紐結びを初心に返って猛練習したそうです。水引きの結びと紐結びに表わされた伝統の意匠と小笠原流礼法の心を、編み込みスタイルにどのように生かしたら現代のヘアファッションにマッチするか、すべて、ひとつひとつご自分で試作しながら、会得していくことばかりだったといいます。

現在は創案した編み込みを、「夢のある編み込み」と名づけて、その普及に力を注いでいます。
テーマ「涼風至(すずかぜいたる)」。涼しい風が立ち始めて、髪を優しくなびかせる様子を表現しています。
テーマ「涼風至(すずかぜいたる)」。涼しい風が立ち始めて、髪を優しくなびかせる様子を表現しています。
テーマ「博覧強記(はくらんきょうき)」。いろいろな物事をよく覚え知っていることをいう。小笠原流礼法の技法と礼法をよく覚え知ってもらうことを作品に込めています。
テーマ「博覧強記(はくらんきょうき)」。いろいろな物事をよく覚え知っていることをいう。小笠原流礼法の技法と礼法をよく覚え知ってもらうことを作品に込めています。
テーマ「花鳥風月(かちょうふうげつ)」。自然の風物、自然美のこと。風流の意。詩歌を作ったり、琴の音を聞きながら別荘に引きこもって花鳥風月を友とする生活を楽しむことを想像しながら。
テーマ「花鳥風月(かちょうふうげつ)」。自然の風物、自然美のこと。風流の意。詩歌を作ったり、琴の音を聞きながら別荘に引きこもって花鳥風月を友とする生活を楽しむことを想像しながら。
テーマ「天覆地載」。天は上にあって物を覆い、地は地下にあってあらゆるものを載せていることから、天地のように広く大らかな心を表しています。
テーマ「天覆地載」。天は上にあって物を覆い、地は地下にあってあらゆるものを載せていることから、天地のように広く大らかな心を表しています。
小笠原流が説く「慎み」は言葉をかえていうならば「他人を思いやる心」であり、古今東西を問わず誰でも大事にすべき心情です、と三上さんは小笠原流の教えの現代に通ずる価値を訴えておられました。人は誰でも、形でも、心でも、美しいものを愛しますが、小笠原流礼法はそこを重要視して、具体的に立ち居振る舞いから礼儀作法に至るまで教えています。三上さんは美しさを基準にした礼法を、編み込みで豊かに表現しておられます。