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かわさきマイスター活動レポート

第29回幸区民祭

提供:川崎市
展示コーナーに張り出されたかわさきマイスターの案内文。<br>川崎市ではかわさきマイスターを認定し「匠の技」の継承や振興活動を支援しています。
展示コーナーに張り出されたかわさきマイスターの案内文。
川崎市ではかわさきマイスターを認定し「匠の技」の継承や振興活動を支援しています。
10月17(土)、18(日)の両日、幸区戸手本町の幸区役所一帯を会場にして「心のふれあうふるさとさいわい」をテーマに開催された「第29回幸区民祭」。ここでの展示コーナーに「かわさきマイスター」のブースも展示され、幸区在住の4人のマイスターのみなさんが技術・技能を披露するとともに手づくり品などの販売も行いました。総合庁舎裏に設けられた展示コーナーは、健康福祉プラザ側の入口から各会場に向かう人など大勢の往来者で賑わっていましたが、マイスターのコーナーにも多くの人が足を止め、川崎市が誇る職人さんが披露する技に興味深げに見入ったり、直接手づくり品を手に取り購入するなどしたりして大人気でした。好評を博したマイスターの皆さんの活動風景をリポートします。

石塚よし子(いしづか よしこ)マイスター 大好評の手づくりバッグは即完売

石塚さん(向かって左)の手づくり品は一味もふた味も違います。
石塚さん(向かって左)の手づくり品は一味もふた味も違います。
神奈川県でも10数名しかいない特殊婦人子供服技能士の資格を持つ石塚よし子さん。石塚さんの手にかかれば薄い絹など加工が難しいとされる素材も、その性質をうまく引き出してお客さんの嗜好に合わせた衣服にしてしまいます。この日はその技術を活かした手づくりのバッグやポケットティッシュ入れ、ペンシルケースなどを販売。
どの手づくり品も好評で、中でもきれいな刺繍をほどこしたバッグは2時間ほどで完売してしまいました。その一つを購入した主婦は「洋裁をしているお友達がバッグを作っているので、作る大変さがよくわかる。この値段で売るのはとても無理」と大感激。石塚さんは「お祭りですし、値段は気にしません。皆さんによろこんでいただければ」と、にこやかに答えていました。
ポケットティッシュ入れを一つ買い求めた主婦がしばらくして再び石塚さんのもとに。家に帰ってよく見たらファスナーがついていることに気づき「カードや領収書なども入れることができて便利。珍しいので娘や知り合いの分も、と思って」と何個も買っていく風景も見られました。
細やかな仕上げと値段にお客さんも大感激。
細やかな仕上げと値段にお客さんも大感激。
ネクタイをほぐして作ったペンシルケース。ファスナーが20センチと18センチの2種類が。18センチのものなら1枚のネクタイから2つ作れます。
ネクタイをほぐして作ったペンシルケース。ファスナーが20センチと18センチの2種類が。18センチのものなら1枚のネクタイから2つ作れます。
子供のお洋服の形をしたかわいらしいポケットティッシュ入れ。<br>
子供のお洋服の形をしたかわいらしいポケットティッシュ入れ。
手に持っているのはファスナーのついたポケットティッシュ入れ。「便利だし珍しい」と一人で何個も購入した人もいました。
手に持っているのはファスナーのついたポケットティッシュ入れ。「便利だし珍しい」と一人で何個も購入した人もいました。

若林近男(わかばやし ちかお)マイスター  高級和紙が素材の手づくり封筒を販売

高度な技術が必要とされる掛け軸や屏風などの修復に熟練した技を持つ表具師の若林近男さん。かわさきマイスターとして参加するイベントですっかりおなじみになり、愛好者もふえている手づくり和封筒を今回も販売しました。
若林さんの手づくり和封筒はかわさきマイスターとして参加するイベントですっかりおなじみに。愛好者もふえています。
若林さんの手づくり和封筒はかわさきマイスターとして参加するイベントですっかりおなじみに。愛好者もふえています。
若林さんの手づくり封筒はどれも高級な和紙を素材にしていますが、中でもご自慢は「鳥の子(とりのこ)」と呼ばれる最高級の和紙を使ったもの。紙の肌合いがなめらかで鶏の卵色に似ているところからそう呼ばれる美しい紙です。特に越前和紙として名高い福井で作られるものがすぐれているとのことで、紙幣の原料にも使われています。若林さんもそこで作られた和紙を使っているとのことです。
さまざまな図柄の手づくり封筒が並べられ来場者の目を楽しませていました。大小2種類あります。
さまざまな図柄の手づくり封筒が並べられ来場者の目を楽しませていました。大小2種類あります。
手づくり封筒は大小2種類。大きいのが300円で小さいのが200円。以前から小さい封筒を購入しているというおばあちゃんは、お孫さんにこのきれいな和封筒に入ったお小遣いをあげることをとても楽しみにしているそうです。おばあちゃんは、「こんなにたくさん買っていくと、お小遣いをあげる回数がふえちゃってたいへん」といいながらも、うれしそうに眼を細めていました。
福井産の「鳥の子」という最高級和紙で作られたもの。表面の図柄は紙を漉くときに流し込みます。
福井産の「鳥の子」という最高級和紙で作られたもの。表面の図柄は紙を漉くときに流し込みます。
お客さんからたいせつな絵をあずかって掛け軸や屏風に貼り付ける表具の仕事は、失敗が許されません。そのため非常に神経を使い緊張もします。「気がのらないと難しい作業だけれど、絵に対して『どのような着物をどうやって着せようか』ということを考える部分で自分の“器量”が出せる」と若林さんは言います。
この和封筒づくりには緊張感を伴う表具とはちがう楽しみをもとめているようです。

浅水屋甫(あさみずや はじめ)マイスター 手描き表札の実演販売

浅水屋甫さんは筆1本であらゆる文字を描いていく広告看板製作の熟練者です。この日は手描き表札の実演販売を行いました。珍しい手描き文字の実演とあって多くの人が足を止め浅水屋さんの筆使いに見入っていました。
米(べい)ヒバ
米(べい)ヒバ
浅水屋さんは表札の素材に北米大陸を主な産地とする米(べい)ヒバを使っています。米ヒバはヒノキの一種ですが、水に強く腐りにくく、シロアリに対しても強い抵抗力を持った貴重な木材です。写真でもわかるように木目も非常になめらかです。ちなみに、線路の枕木が木材だった時代は主にこの米ヒバが使われました。浅水屋さんの手描き表札は見た目のすばらしさと同時に耐久性も備えているのです。
表札に描く名前を確認している浅水屋さん。
表札に描く名前を確認している浅水屋さん。
この日、秘密兵器?として登場したのがヘアードライヤー。イベントではお客さんの都合によっては短時間で注文されたものを渡さなければなりません。そのため文字を早く乾かすためにこのヘアードライヤーが効力を発揮します。
実演の合間をみて石塚さんのバッグの販促文章も手描きしました。<br>
実演の合間をみて石塚さんのバッグの販促文章も手描きしました。
細かい文字までデジタルで描ける時代ですが、お寿司屋さんのメニューなど、さまざまなもので手描き文字は好まれています。「表札は家庭の表看板。やはり手描きでなくては」という人の要求に浅水屋さんの技は見事にこたえてくれます。この日も手描き表札の売れ行きは好調でした。

只木角太郎(ただき かくたろう)マイスター スカート・ズボンの型紙を無料配布

出来あがりの雰囲気のさわやかさや肩がこらないなどがオーダーメイド服の長所。只木角太郎さんはその要求に型紙や裁縫の熟練した技で見事応えてくれる洋服仕立ての技能士です。この日は作品の展示とともに生地を購入した人にスカートとズボンのパターンを無料で作るというサービスも行いました。
タイの世界大会に出展された紳士用ジャケット。生地は竹の繊維から作られています。
タイの世界大会に出展された紳士用ジャケット。生地は竹の繊維から作られています。
展示品はドレスと紳士用ジャケット。どちらも二度と作れない貴重な一着で、只木さんご自身も愛着のある作品です。ジャケットはタイで開かれた世界大会へ出したものです。大会には300点くらいの作品が参加しましたが、参加作品は主催者側が一番多く、日本からは6点のみ。その一つがこのジャケットで、生地は竹の繊維から作られているたいへん珍しいものです。
デザイン画も展示されていました。いずれも只木さんのすぐれたオリジナリティがよく表れています。
デザイン画も展示されていました。いずれも只木さんのすぐれたオリジナリティがよく表れています。
こういったファッションショーなどへの出展品は毎回、欲しがる人が出てきます。しかし、只木さんは絶対に手放そうとしません。デザインのイメージは「不思議なもので同じものが湧いてこない」そうで、そのときのイマジネーションを大切にして作ります。同じ作品をもう一度作ることはできないためそれぞれに愛着には深いものがあります。「それが手放さない理由なのでは」と、当日お手伝いをしていた奥様はいいます。「皆さんが見て楽しめるように」と、これからもイベントなどで愛着品を数多く展示していきたいとのことです。
婦人用パンツのパターン作りを実演する只木さん。今回はちょっと細目にデザインしたそうです。
婦人用パンツのパターン作りを実演する只木さん。今回はちょっと細目にデザインしたそうです。
ショールは花嫁の内掛けをモチーフにしています。それを脱ぐときらびやかなドレスに。モデルさんはショールを前で組むようにして舞台に出ていきます。
ショールは花嫁の内掛けをモチーフにしています。それを脱ぐときらびやかなドレスに。モデルさんはショールを前で組むようにして舞台に出ていきます。