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かわさきマイスター活動レポート

かわさきマイスターに学ぶ「ものづくりの心」

都倉正明さん(フラワー装飾)、「お正月用フラワーアレンジメント」講習会

提供:川崎市
華やかな気分で新年を迎えましょう―と、「お正月用フラワーアレンジメント」講習会が昨年12月27日(日)、川崎市生活文化会館(てくのかわさき)で開かれました。講師はフラワー装飾一級技能士の都倉正明さんです。今回は同じようにフラワー装飾一級技能士の資格を持ち、国際舞台でも活躍する娘さんの都倉八重子さん(日本マイスターフローラルアーティストスクール主宰)も講師のお手伝いをして、参加者からの相談に乗っておられました。
 講習会は午前と午後の部に分かれ、それぞれ39人と43人、合計82人が受講しました。受講生は主婦ら女性を中心に若い男性や子どもも混じり、講師のお話、実技指導を通して約2時間、生け花の基本やフラワーアレンジメントのコツを学びました。以下は午後の部の取材レポートです。

〝わび〟〝さび〟を表現する日本の伝統的な花き装飾を

都倉さんは1998年(平成10年度)にかわさきマイスターに認定され、2001年には「現代の名工」と呼ばれるフラワー装飾卓越技能者(厚生労働省)として厚生労働大臣から表彰されるなど、数多くの資格を持つフラワー装飾の第一人者です。宮前区の田園都市線・宮崎台駅前で都倉生花店を経営する傍ら、各地でフラワーアレンジメントの講習会などを開き、フラワー装飾の魅力、楽しさを伝えています。特に伝統的な日本の生け花(いけばな)の復活を提唱し、その普及に力を入れています。今回の講習会でも「お正月前という季節との絡みもありますが、皆さんにぜひ日本古来の和の精神を代表する〝いけばな”の伝統を学んでいただきたい」と語っていました。厚労省の卓越した技能者としての受賞理由も「日本の伝統的な花き装飾技能である〝わび〟〝さび〟の表現方法に優れる」というものでした。

毎年お正月には〝和風〟をテーマに勉強会

講座の出始めに都倉さんは次のように話しました。
「フラワーアレンジメントというと何となく洋風のものを感じますが、私は日本人でありますので日本風の作品を提供したいと思い、毎年お正月には〝和風〟をテーマに勉強会を開かせていただいています。ただ、伝統だからといって形にはめるというのではなく、皆さんは材料を自由な発想で使っていただいて、それぞれに独自の作品をこしらえていただければよいかと思います。材料をいかに生かして使うかというのが技術でありまして、私が持ってきた教材もただ1つの見本であって、このようにしなければいけないということではありません。といっても皆さんが同じようなものを作ったら面白くないので、そこは私が適宜アドバイスをさせていただき、独自の作品になるようにお手伝いいたします」

全体の美と調和を生み出すメリハリのつく構成

都倉先生の教材。見事に整っています。
都倉先生の教材。見事に整っています。
そして都倉さんが次に指摘したのは生け花の基本とでもいう、1つのセオリーでした。それは、花器に挿した材料に段差をつけるということです。「午前中の講習でもそうでしたが、皆さん何となくのっぺらぼうに花を生けてしまいますね。生け花はそれぞれの材料に段差をつけることが大事で、ただ挿して同じ高さに並べればいいというものではありません。メリハリのつく構成が全体の美と調和を生み出すことを覚えておいて下さい。用意された材料をうまく使って、豪華に見えるように作っていただきたいと思います。」

コツは、まず中心になる花材を決めること

まず、中心になる材料を決めましょう
まず、中心になる材料を決めましょう
さらに都倉さんが指摘するのは「いったん挿した材料は決して抜かないこと。これも皆さんよく、格好を整えようと何度も何度も挿したり抜いたりしていますが、ご法度です。大事なのは挿す前にしっかりと構図を頭の中に描いていなければなりません。そのコツは、まず初めに中心となる材料をしっかりと決めて、それを核に花材を回りに広げて挿していくことです。そしてきょう皆さんに用意された教材も過不足、良し悪しいろいろあるでしょうが、曲がった材料もうまく使えば生きてきます。これが技術です」

お正月用生け花の定番素材を使って、いざ作品作りへ

材料がそろいました
材料がそろいました
都倉さんの講義が一通り終わり、実技に移りました。きょう用意された教材は五葉松、根引松、千両、菊、スプレーカーネーションの五種類。花器は青々とした竹筒でした。いずれも、お正月用生け花の定番素材です。一つひとつ、花材の特徴と細かい注意点を都倉さんから説明を受けた受講生の皆さん、各自机の上に用意された材料を前に「待ってました」とばかり直ちに材料を手にとってパチン、パチンと花ばさみを入れる人、そうかと思うとじっと花材を見つめてしばし構想を練る人など、作品作りのスタートはさまざまでした。
材料を丁寧に扱って生ける準備。どんな作品ができるかしら。
材料を丁寧に扱って生ける準備。どんな作品ができるかしら。
まず基本になる松を植え込んで
まず基本になる松を植え込んで

都倉さん、個別指導に大奮戦、娘の八重子さんも助っ人に

一人一人に懇切丁寧に教える都倉さん
一人一人に懇切丁寧に教える都倉さん
都倉さんはテーブルを一つひとつ回りながら、個別指導。先のほうの席から「早く先生教えて」と催促の声がかかりますが、そこは順番。受講生が多い上、都倉さんのアドバイスも懇切丁寧のため、先生がそこの席にたどり着くまでには勝手に出来上がってしまうのではないかと心配でしたが、そこは心強い助っ人・八重子さんの出番です。

都倉八重子さんは1997~99年の3年連続、世界らん展日本大賞「フラワーデザインの部」で最優秀賞を受賞。さらに2009年世界らん展日本大賞で出品作品「やすらぎ」が優良賞を受賞しました。また2006年、タイ王国「チェンマイ国際園芸博覧会」のオープニングセレモニーで日本代表デモンストレーターを務めたほか、同年、世界遺産に登録されているクロアチアの古都ドゥブロヴニクで写真家と協力、遺跡と生け花の競演によるユニークな表現に取り組み、花と歴史の街が生み出す素敵な出会いを演出しました(そのときの作品集「IKEBANA STONE&FLOWER」が昨年出版されました)。

若い男性や小さな男の子も真剣な眼差しで挑戦

お父さんに負けず劣らずの技量を持つ八重子さんのアドバイスは女性らしさの繊細さも加えて好評でした。しかし、本命はやっぱり都倉先生。「先生、先生」と呼ぶ声があちこちのテーブルから飛んできます。そんな中、都倉さんが手つきも器用に花材を生けている若い男性受講生のテーブルに近づきました。午後の講習会で、ただ一人見かけた男性です(後で紹介する小さい男の子は除き)。「募集広告を見てすぐに受講の申し込みをしました。生け花は初めてですが面白いですね。もともと創ることが好きですし、やみつきになるかな」と話していました。
また会場では、小さな男の子もお母さんと一緒に作品作りに挑戦していました。お母さんから花ばさみを借りて枝を切ったり、「こっちの向きがいいかな」と花の位置を整えるなど、真剣な眼差しで花材に取り組んでいました。
若い男性や児童までもが無心に打ち込める生け花の魅力。これこそ都倉さんが長年、この世界に足を踏み入れてきた原動力でした。

「小、中学校でもっと生け花を教える時間が増えてほしい」

「昔は女の子がいれば、花嫁修業で近所の生け花教室に習いに行くのが普通の家庭の風景でした。今の日本に、そんな風習を復活したい」という都倉さん。その
思いが、いつかきっとこの子らに通じる日も近いのではないかと感じました。小、中学校で生け花を教える時間が増えてほしいと都倉さんは願っています。

繊細な自然の美を演出する花の名人は心も優しく

生け花のポイントの1つとして都倉さんは「生ける材料は多いほどいいです」と説明していましたが、会場の中からは「私のは、材料が少ないのでうまくいかないのかしら」と半分ぼやきに似た声を出す人も。聞きつけた都倉さん、さっそく追加の材料を持参して補充してあげていました。繊細な自然の美を演出する花の名人も、人に対して気を使う点でもきめ細かな優しい心づかいを見せていました。
講習会を終えて都倉さん、きょうの受講生の出来ぶりについて聞くと「7、80点ですかね。いいほうですよ」と誉めていました。そして受講生の皆さんは完成した作品を大事そうに紙袋に入れ、それぞれ手に提げて家路につきました。皆さん、今年は手作りの生け花で、きっと素敵なお正月を迎えたことでしょう。
完成品は大事に持って帰ります
完成品は大事に持って帰ります
記念撮影
記念撮影