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かわさきマイスター活動レポート

「夏休みものづくり体験」 銀の手作りストラップ教室

彫金のプロ、久保田宗孝さんが教える

溶かして・叩いて・削って・磨いて・一緒に手作りしよう!

夏休みものづくり体験教室が開かれた「てくのかわさき」。
夏休みものづくり体験教室が開かれた「てくのかわさき」。
「銀(シルバー)の板を使ったイニシャルストラップを作りましょう」と、夏休みものづくり体験教室が8月7日(土)、高津区・溝の口の「てくのかわさき」(川崎市生活文化会館)の工作室で開催されました。講師は、かわさきマイスター(デザイン彫金士)の久保田宗孝さん。

講師の久保田さん。平成21年に「かわさきマイスター」に認定されました。
講師の久保田さん。平成21年に「かわさきマイスター」に認定されました。
久保田さんは平成21年に「かわさきマイスター」に認定されました。18歳の頃から手作り飾り職人の道に入り伝統的な技法を用いながら、新しい技法にも積極的に取り込んでいる装飾品製作のプロです。金属の特徴や性質を活かした溶解から、叩き上げて強度を持たせる地金製作、オリジナルで繊細かつ丈夫なジュエリー製品となるまで、一人で仕上げることの出来る市内で唯一の職人です。また、技術を活かしてアンティークジュエリーや時計の修理・復元、オブジェなども手がけています。川崎区大島で手作り工房&ショップ「ジュエリークボタ」を経営しジュエリー、時計など斬新なデザインの創作活動を行うかたわら、彫金教室を開き後継者育成にも力を入れています。
手作り工房 有限会社「ジュエリークボタ」<br>【所在地】  川崎区大島2-12-5<br>【電話番号】  044-246-0071
手作り工房 有限会社「ジュエリークボタ」
【所在地】  川崎区大島2-12-5
【電話番号】  044-246-0071

小学生20人が道具を使って手作り挑戦

この日、午前10時から始まった体験教室に集まったのは小学3年生以上の男女児童20人(定員)。まず久保田先生から「きょうは銀の板を使ってイニシャル入りのストラップを作ります。皆さんが好きなデザインを考え、名前や誕生日などを刻印して世界に一つしかないオリジナルストラップを作りましょう。いろいろな道具や火を使いますから、怪我のないよう十分注意して作業を進めましょう」とあいさつがあり、さっそくデザイン描きに入りました。用意された紙の上に、子どもたちがストラップに付ける銀の板の図形を次々に描いていきます。スペードやハート、星、花びら、まが玉模様など、子どもたちの自由な発想が飛び交います。なかなか図案を思い付かない子もいます。そんな子を見つけては久保田先生や助手の先生がアドバイスします。

始まる前に久保田先生の話を聞く児童たち。
始まる前に久保田先生の話を聞く児童たち。
最初にデザインを描きます。
最初にデザインを描きます。
どんな絵柄がいいか、先生もアドバイス。
どんな絵柄がいいか、先生もアドバイス。
きょうの作業手順を分かりやすくパンフレットに。
きょうの作業手順を分かりやすくパンフレットに。
児童にイニシャル入りの銀の板を配る先生たち。
児童にイニシャル入りの銀の板を配る先生たち。
自分で描けない子の銀の板に図案を写し取る久保田先生。
自分で描けない子の銀の板に図案を写し取る久保田先生。
デザインが決まったら、今度は銀の板に直接描いていきます。久保田先生は事前に、きょう参加する児童のイニシャルを銀の板に刻んできました。子どもたちはそれぞれ自分の板を受け取り、図案を描き始めます。描けない子には久保田先生が代筆。。終わると次ぎは金切りペンチを使って図案通りに銀の板を切り取る作業です。しかし、ここは細かくて子どもたちにはちょっと危険な作業なので先生たちが代わりに切り取ってくれました。それぞれ切り取ってもらった板を、今度は子どもたちが金属ヤスリを使って切り口などをきれい整えていきます。ほとんどの子はヤスリを使うのは初めてのようでした。でも皆んな楽しそうに、ゴシゴシと削って形を整えていました。

図案どおりに銀の板を切っていきます。
図案どおりに銀の板を切っていきます。
細かい作業なので先生が代行。
細かい作業なので先生が代行。
金属ヤスリで切り口を滑らかに削ります。
金属ヤスリで切り口を滑らかに削ります。
ゴシゴシ削って、だんだんきれいになってきました。
ゴシゴシ削って、だんだんきれいになってきました。

ハンマーたたいて誕生日や名前を刻印

金床に銀の板を乗せ、刻印を押し当てて大きなハンマーで打ち込んでいきます。
金床に銀の板を乗せ、刻印を押し当てて大きなハンマーで打ち込んでいきます。
次ぎは刻印。まず裏側に「SILVER」と打ち込みます。これは純正の銀製品という証です。次いで表側に文字や数字などを打ち込みます。子どもたちは、それぞれに自分の生まれた年月日や名前、好きな言葉(単語)などを打ち込んでいました。金床に板を乗せ、選んだ刻印を1本1本ハンマーで打っていきますから、これも結構大変な作業です。しかし、子どもたちは嬉々として打ち込んでいました。

電動ドリルで板に丸カンを通す穴を開けます。
電動ドリルで板に丸カンを通す穴を開けます。
これが終わると、今度は工具を使ってストラップを結ぶ丸カンを通すための穴を板に開けます。電動ドリルを使うので、これも先生の担当です。
順番に穴をあけてもらった子どもたち、席に戻って銀の板をもう一度磨きます。今度は紙ヤスリを使って板の両面を磨いていきます。紙ヤスリを水で濡らしながら何度も何度も磨いてピカピカにします。
紙やすりで一生懸命磨く男の子。結構力のいる仕事です。
紙やすりで一生懸命磨く男の子。結構力のいる仕事です。
チッちゃいから大変だわ!
チッちゃいから大変だわ!
ピカピカになったら次ぎは丸カン作りです。銀の細い棒を先ほどあけた板の穴に通してニッパー(やっとこ)で丸く整えていきます。器用な子は一度くらいで真ん丸に丸めますが、ちょっと不器用だと楕円形になったり、輪が大きくなり過ぎたりと、大変です。ここでも先生方が微調整で手を貸します。
丸カン作り。ニッパーを使って細い銀の棒を丸めていきます。小さな輪にするのはなかなか難しい。
丸カン作り。ニッパーを使って細い銀の棒を丸めていきます。小さな輪にするのはなかなか難しい。
丸カンが通りました。
丸カンが通りました。

初めて使うバーナーにおっかなびっくりも

バーナーを使って丸カンの継ぎ目をロウ付けします。
バーナーを使って丸カンの継ぎ目をロウ付けします。
続いて大詰めの工程、バーナーを使って丸カンのロウ付けです。銀の溶ける温度は約970℃ということで、それより低い温度で溶融するロウ材を使って丸カンの継ぎ目を溶接します。高温なので、もちろん子ども一人では出来ません。しかし、これも先生が全部代行してしまったら本当の手作り体験教室とは言えないというのが久保田先生の考えです。そこで今回は先生と一緒にロウ付けに挑戦することにしました。作業めがねを掛け、先生に手を添えてもらってバーナーを扱います。

銀の溶ける温度は約970℃ということです。
銀の溶ける温度は約970℃ということです。
作業めがねを掛け、慎重に作業を進めていきます。
作業めがねを掛け、慎重に作業を進めていきます。
完成品をシリンダーに掛け、ピカピカに磨き上げていきます。
完成品をシリンダーに掛け、ピカピカに磨き上げていきます。
そして、いよいよ最後の工程、研磨です。これは久保田先生が一人ひとりの完成品をシリンダーに掛け丁寧に磨き上げていきました。超音波洗浄機に入れて、さらにメダルをピカピカにします。丸カンに紐を通して、ついに世界で2つとない銀色に輝くイニシャルストラップの完成です。ピカピカになったシルバーに子どもたちは大喜びです。

完成した銀のストラップ。
完成した銀のストラップ。
20人全員の作品作りが終わったのは午後4時ごろ。お昼休みの時間を除いて延々5時間の長丁場でした。初めて見る道具を使い、ヤスリ掛けに力を入れ、丸カンを作り、火も使いました。たくさんの工程をこなし、子どもたちもさぞお疲れかと思いきや、だれ一人、そんな表情を見せていません。むしろ自分だけの宝物を、自分の手で作り上げたという一種の達成感のような雰囲気を感じました。自分の作業が早く終わった子は、ほかの子に道具を配ったり片づけをしたりと教室のお手伝いをしていました。同じ目的のために仲間同士協力し合う気持ちも生まれたようです。

皆んな自慢げに見せます。
皆んな自慢げに見せます。
わたしのは、こっち!
わたしのは、こっち!

世界でたった1つの宝物が完成

久保田先生は一人ひとりの作品を見て回って、出来ばえを誉めていました。
久保田先生は一人ひとりの作品を見て回って、出来ばえを誉めていました。
作業が終わって久保田さんは各作業テーブルを順番に回り、一人ひとりの作品を手にとって「世界で一つしかない素敵なストラップが出来ましたね。ペンダントにも使えますよ」と出来ばえを誉めていました。そして最後に「きょうは少し疲れたと思いますが、また会って作りましょう」と終了のあいさつ。これに子どもたちからも「とても楽しかった。またやりたいです」「宝物が出来ました」「大事に使っていきます」など、元気な言葉が返ってきました。子どもたちの表情がとても明るく、生き生きとしていました。

久保田さんの話

子どもたちに道具を使ってモノを作る楽しさを伝えたい

きょうは、こんなにたくさんの道具を使いました。
きょうは、こんなにたくさんの道具を使いました。
「きょうは小学3年生以上を対象に手作り体験教室を開きました。日ごろ道具を使ってモノを作ることの少ない今の子どもたちに、ヤスリやトンカチ、ペンチなどを使ってものづくりの楽しさを体験してもらいたいと思って企画しました。実際にヤスリで銀の板を削ったり、刻印、紙ヤスリで丁寧に磨き上げる作業などを体験して、子どもたちはものをつくる面白さを味わったと思います。バーナーに火を付けてロウ付けするところでは、おっかなびっくりの子もいましたが、私が手を添えて誘導すると、火もきちんと使えば怖くないということを身を持って経験してくれたようです。何ごとも体験が大事です。ことに今の子どもたちには必要です。今回初めて外部で彫金の体験教室を開きましたが、機会があればまたやりたいですね」