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かわさきマイスター活動レポート

「この指とまれ2010」第33回多摩区民祭

かわさきマイスターの実演・販売ブースで熟練の技の披露と制作指導を

提供:川崎市
9月25日(土)、「この指とまれ2010」を合言葉に生田緑地・枡形山広場(多摩区枡形)で開催された第33回多摩区民祭にかわさきマイスターの実演・即売ブースも出展、関戸秀美(せきどひでみ)さんと内海正次(うつみしょうじ)さんのお二人のマイスターが、訪れた人に熟練の技を披露するとともに、作品の展示や技術が結晶した品物の販売と作り方の指導を行いました。
同区民祭が生田緑地で開かれるようになってから今年で8回目ですが、昨年までメイン会場となった噴水広場が改修工事のため、今回は会場を噴水広場わきと枡形山の2会場に分けて行われました。あいにくの台風12号の影響で午前中は雨のばらつくお天気でしたが、午後には天候も回復しておおぜいの人出でにぎわいました。主に行政関係の団体などが展示や物産販売を行った噴水広場わき会場にもうけられたかわさきマイスターのブースも、天気が良くなるにつれ立ち止まる家族づれなどが増え、お二人が実演する技に興味深いまなざしをそそいだり、展示品や販売品に見入ったりしていました。

鎚起の技術を使ったシルバーリング作りを実演

シルバーリングの純銀の帯を切る作業を実演する関戸マイスター
シルバーリングの純銀の帯を切る作業を実演する関戸マイスター
平成13年にかわさきマイスターに認定された関戸秀美さんは、神社寺院などの銅板屋根工事に熟練した技の持ち主で、これまで鎌倉鶴岡八幡宮や赤坂迎賓館など名だたる建造物の修理を手がけて来ました。この関戸さんの技に欠かせないのが鎚起(ついき)という技術。これは焼くと柔らかくなり、鎚(つち)でたたくと硬くなる銅の性質を利用したもので、1枚の銅板を大きさの違うさまざまな鎚や鏨(たがね)でくりかえし焼いたりたたいたりして製品を形作っていく手法です。
当日はこの技を使ったシルバーリング作りを実演し、希望者には模様彫りの指導をしながら販売を行いました。また、純銀の根付やスプーンの販売と屋根の銅板鬼板の展示も行いました。
シルバーリングは最初から丸くなったパイプ状のものなりがあるわけではなく、純銀の帯を切って丸めてロウづけをし、その後ロウづけした跡の線が分からなくなるようにきれいに削り、最後にリングの中にシルバーを証明する刻印を押します。関戸さんによると「この下ごしらえがけっこうたいへんな作業」ということで、当日はあらかじめサイズごと作ったものが用意されていて、購入者はサイズを測るリングに自分の指を通して大きさを決め、お好みの模様を関戸さんのサポートを受けながら刻んでいきます。リング表面に刻む模様を最後に行うのは、最初に刻んで丸くすると磨きをかけるさいに削れてしまうからとのことです。
リングに模様を刻む作業は模様が刻まれた鏨を押し当て上からたたいて転写します
リングに模様を刻む作業は模様が刻まれた鏨を押し当て上からたたいて転写します
リングに模様を刻む作業は、丸い金属棒にリングを通し固定して、模様が刻まれた鏨を押し当て上からたたいて転写します。花や昆虫などさまざまな種類が刻まれた鏨があらかじめ用意されていますので、お好みのものを組み合わせて模様をつけていきます。そのさい、手首だけをしなやかに動かす感覚で軽くたたいていくことがポイント。実際に作業した人に聞くと、「緊張するけど気にいったデザインが徐々に刻まれて行き、自分だけのオリジナルができあがっていくのが楽しい」とのことでした。
展示された銅板の鬼板。後ろの木のものは銅を被せる前の状態。何百年の風雪に耐えなければならないため、鬼板の内部は木でできています<br>
展示された銅板の鬼板。後ろの木のものは銅を被せる前の状態。何百年の風雪に耐えなければならないため、鬼板の内部は木でできています

冨田屋流の綴じ仕上げをミニチュア座布団を使って実演

平成10年にかわさきマイスターに認定された内海正次さんは、冨田屋(とんだや)流という布団づくりの技能を持つ寝具制作一級技能士です。中でも袖のついた布団、「掻い巻き(かいまき)」作りでは熟練の技を発揮し、当日も実物の25分の1サイズで作られたミニチュアの掻い巻きが展示されていました。
この日は希望者に置物の台などに利用されるミニチュアの座布団を、綴じ仕上げを指導しながら販売したり、ミニチュアグッズを展示したりしました。
綴じ仕上げは冨田屋流の特徴。冨田屋流の技で綴じ仕上げをすると長い間ゆるみません<br>
綴じ仕上げは冨田屋流の特徴。冨田屋流の技で綴じ仕上げをすると長い間ゆるみません
ミニチュアの座布団といえ、当然ながら普通のそれと同じような形づくりからはじめ、内部にはもちろん綿が入っています。当日、指導した綴じ仕上げは冨田屋流の特徴でもあり、通常は数年でゆるんでしまいますが、冨田屋流の技で綴じ仕上げをすると長い間ゆるまないでしっかりし続けます。ミニチュア座布団は土産物屋さんなどでも見かけることがありますが、角の綴じ方が冨田屋流とは違い、すぐにゆるくなってしまうものが多いそうで、「ちゃんと綴じ仕上げすることができる人が少なくなってきている」と内海さんもいいます。
一般的な手作りの座布団なら必ず付いている四隅の糸綴じですが、この糸はたんなる飾りではなく役割があるのはいうまでもありません。「飾りの意味もあるのでとうぜん見場はよくないといけませんが、先端まで入れた綿が抜けないように固定するため」(内海さん)というのが本来の役割。
座布団を購入する際の手っ取り早い良し悪しの見分け方を、内海さんに教えていただきました。
「中心の綴じを持って吊るしてみる。どちらかに傾くことなく平らに保たれる状態ならOKです」
ただし、売り物の布団に触りまくるのだけはご法度とのこと。
すっかりおなじみになったミニチュアの掻い巻きも展示され、訪れた人の目を引いていました
すっかりおなじみになったミニチュアの掻い巻きも展示され、訪れた人の目を引いていました
展示されたミニチュアには内海さんの熟練した技が凝縮されています
展示されたミニチュアには内海さんの熟練した技が凝縮されています

台風も去って午後からはすばらしい天気となった第33回多摩区民祭、2つの会場をいききしながらおおぜいの人がイベントを楽しみました。そんな中、引きも切らないでかわさきマイスターのブースを覗き込む人の質問の1つ1つにていねいに答えるなどしながら、川崎の持つ技をより多くの人に知ってもらうために一所懸命だったマイスターお二人、ほんとうに頭が下がる思いでした。