地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、川崎市宮前区の地域ポータルサイト「宮前ぽーたろう」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

川崎市宮前区の地域ポータルサイト「宮前ぽーたろう」

かわさきマイスター活動レポート

かわさきマイスターに学ぶ初心者・初級者向け旋盤教室

提供:川崎市
受講生(左)に説明する岡部さん(右)と大橋さん
受講生(左)に説明する岡部さん(右)と大橋さん
11月25日(木)午後1時~3時まで、川崎市の財団法人川崎市産業振興財団主催による、「KBIC テクノフォーラム発足記念 かわさきマイスターに学ぶ初心者・初級者向け旋盤教室」が開催されました。
 会場は、KBIC(かわさき新産業創造センター)ものづくり工房で、講師は、現在(株)クレールの技術顧問を務め、平成11年にかわさきマイスターに認定されたプレス順送・金型設計製作に携わる大橋明夫さんと、複雑な精密板金加工の熟練技能者で平成14年度かわさきマイスター認定の岡部勝夫さんのお2人でした。当日は、金属加工会社勤務や、レーザー開発・設計担当者など3名が受講、そのうちの2名の方が旋盤を学ぶのは初めてでした。
正面から見た旋盤 左側に取り付けられた材料、かんな台(上部)、ハンドルの付いたベッド(下部)
正面から見た旋盤 左側に取り付けられた材料、かんな台(上部)、ハンドルの付いたベッド(下部)
 旋盤とは、円柱形の材料を回転させて、それにバイトと呼ばれる刃物を当て、材料を削ったり、穴を開けたり、切り落としたりする機械で、岡部さんいわく、「旋盤の操作は基本中の基本で、少なくとも3年はかかりますね。」だそうです。
 今回の講習会は、コンピューターによるNC旋盤でなくすべて手動で行う操作です。盤機のスイッチの位置、早さが変えられる回転レバーや、ベッドと呼ばれる数個のハンドルが付いた部分、バイトを設置する(4本のバイトを直角で設置できる)かんな台など。
 大橋さんはまず、かんな台にバイトを取り付ける実演をされ、その際、「バイトの先端を材料の中心に合わせるように注意してください。そうしないとバイトが飛んでしまいます。」とのアドバイス。
ドリル(右)やバイト(真ん中)などの工具
ドリル(右)やバイト(真ん中)などの工具
その後は旋盤のハンドル操作を実演。参加者の方も、大橋さんの指導のもと、ハンドルを前後左右方向に動かしながら感覚をつかんでいきます。皆さん、時間をかけて身体で覚えていきます。
 当日の講習は、手動送りによる(1)外削り、(2)中繰り、(3)突っ切りの順番で行われました。

(1)外削り

外削りの実習。切り粉と呼ばれる切り屑が飛びます
外削りの実習。切り粉と呼ばれる切り屑が飛びます
大橋さんの実演の後、受講生の方は、手動でハンドル操作をしながら左側部分で回転している円筒状(直径約25mm)の真鍮の材料の外周をゆっくり削っていきます。
 テーブル上の左上のハンドルを左に回転させるとかんな台が手前に移動し、右に回転させるとかんな台は材料の方へ移動します。これがかんな台の前後の移動。また、右端の横送りハンドルを左に回すとかんな台が左側の材料の方に進み、右に回すと離れます。これが左右の移動操作です。そして、両ハンドルの間のレバーを左に動かして削ります。横送りハンドルの外周にはゲージと呼ばれる削り幅を調整する目盛り計(1目盛り1mm)がついています。
 受講生の方は、大橋さんの指導のもと、ハンドルを、時には両手で時には片手でゆっくりと操作しながら外削りにチャレンジしていました。
外削りバイトを操作する方法を学んでいるところ
外削りバイトを操作する方法を学んでいるところ
材料が削られると共に、切り粉と呼ばれる切り屑がはがれます。大橋さんは、「外削りに使うバイトは、先端の角度が60度の60型バイトで、材料の芯の部分にねじ山(バイトの先端部分)を合わせるよう注意します。操作の際は、保護メガネの着用も大事です。バイトを進める速度は「送り」と呼ばれますが、仕上げの加工面を細かくしたければ送りをゆっくりにします。細かいと谷が多いので、必要ならもう一度削れます。」とアドバイス。
 今回の講習会は、初心者の方が対象のため、「送り」は比較的遅い速度で行われ、外削りの実習は、30分ほどで終わりました。
 途中、岡部さんがシリンダーケージ(1目盛り0.001mm)で削った材料を素早く計測し、再び受講生の方が削りに取り掛かりました。

(2)中繰り

大橋さんが中削り用の芯押し台の説明をしています
大橋さんが中削り用の芯押し台の説明をしています
中繰りとは、円筒の内側をバイト、または、ドリルで加工することで、「ボーリング」とも呼ばれます。講習会では、円筒の直径が小さいためドリルで行なわれました。
 大橋さんが中繰りの説明をした後、旋盤の右手にある芯押し台にドリルを取り付け、ハンドル操作で送りをしながら中繰りの実演をします。「中繰りは、慣れるのに1年以上かかるので、今日は雰囲気を知る程度でやってください。外削りと違い、内部が見にくいですからね。それから、作業中の音は大事ですから注意してください。」とのアドバイスに従い、受講生の方が取り掛かります。
ドリルでの中繰りで大量の切り屑が飛びました
ドリルでの中繰りで大量の切り屑が飛びました
中繰りをするに従い、中から大量のおが屑のような切り屑があふれ出し、大橋さんが話されたように中がほとんど見えません。周囲にも切り屑が飛び散り、それを小型のほうきできれいにします。
 また、大橋さんは、受講生の方の実習中の音を指摘し直してくださいました。作業中に材料が熱を持つので、材料の回転速度を遅くしたりドリルの切り込みを弱くしたりもしました。
中繰りの仕上げは、荒取り(加工の対象となる素材が大きかったり、深い場合、最初に大きな刃物で目標寸法近くまで削り、その後小さい刃物に変えて仕上げていく)した素材の熱を冷ましながら(水に入れて冷ましても良いそうです)仕上げにかかるようにとのお話でした。
 中繰りの途中で大橋さんのドリルの研ぎの実演もあり、ドリルの先端の角度は切り屑が逃げられる120度になっていることを教えて下さいました。ここにもマイスターならではの熟練の技が見られました。

(3)突っ切り

突っ切り用バイトの取り付けを行う受講者
突っ切り用バイトの取り付けを行う受講者
講習会の最後は、外削りした材料をバイトで切断する突っ切り加工でした。
(2)で使用したドリルをチャックから外し(突っ切り用の削りバイトを選びます。バイトの取り付けは、余計な負荷を避けるため、材料の芯部分より多少低めに設置します。そして、再びかんな台のハンドルを操作しながら、材料を幅2mmほどのリング状に切断します。
材料が熱くなるので、竹ブラシを使ってすくい取るようにして加工しました。受講生の方は、慎重にゆっくりと作業を進めていました。旋盤加工を初めて目にした私は、手動で切断されたリングが美しい工芸品のように見えました。
ドリルを研いだ後、ドリルの逃げ(切り屑が出て行く角度)の説明をする大橋さん
ドリルを研いだ後、ドリルの逃げ(切り屑が出て行く角度)の説明をする大橋さん
右手の芯押し台が左の材料を中繰りします
右手の芯押し台が左の材料を中繰りします
突っ切りのハンドル操作の再確認をします
突っ切りのハンドル操作の再確認をします
突っ切りで切断したリング状の材料を竹ブラシで掬い取ります
突っ切りで切断したリング状の材料を竹ブラシで掬い取ります

こうして内容の濃い2時間の講習会は終わりました。
大橋さんは、永年に亘り培ってこられた感と技を披露してくださり、また、岡部さんは、講習会の間、大橋さんと参加者の皆さんをサポートしてくださいました。そして、お2人からはマイスターとしての風格が感じられました。有難うございました。

参加した方の感想

レーザー開発と設計を担当するAさん

金属の扱い方が参考になりました。中繰りは難しかったですが、参加してよかったです。こういう技術は、言葉でなく動作で憶えていくことが大切だと思いました。

化学研究者のBさん

講習の技術が面白かったです。難しく感じたところは特にありませんでした。

〈講師紹介〉

大橋 明夫 
平成11年度認定かわさきマイスター  プレス順送 金型設計製作

金型製作の熟練した経験を生かして順送金型を駆使した全工程の設計・管理を行い、中小企業の製造業で課題となっている量産と工程の省力化を進めている。トランスファー型のCAD-CAMシステムを駆使し、設計時間を短縮すると共に技能の継承を容易にした。特に「順送」による「しぼり」(図面をもらい、考え、一枚の板からしごいて筒のようにする)等を得意とし、日本のハイテク産業を支えている一人である。 川崎区在住 
■勤務先:株式会社クレール 
■住所:川崎区藤崎3-14-2
■電話:044-244-5231 / Fax: 044-299-3958
■営業時間:8:30~17:00 土曜・日曜休み
■HP:http://www.clr.co.jp/
■e-mail:c-info@clr.co.jp

岡部 勝夫
平成14年度認定かわさきマイスター 精密板金

工場板金の中でも、板金・溶接・組立てを一体化した、精密板金加工の熟練技能者である。主として、精密で難度の高い、アルミ、ステンレス、鉄鋼などを素材とした船舶 装用通信機器の 体製作や工学測定器の加工では最も確実で効率的な作業の段取りで作業を進め、高度な技術を発揮していた。後継者の育成にも積極的な職人である。複雑な全ての加工を頭の中で順序よく効率よく考えていく。

多摩地区在住。元(有)岡部製作所経営 ∗引退

KBIC(かわさき新産業創造センター)とは?

かわさき新産業創造センター(KBIC)は、川崎市が2003年1月に設置した研究開発型企業のインキュベーション施設です。
起業化精神を持つ個人や創業者、新分野・新事業創出をめざす中小企業に事業スペースを提供し,スタートアップ期、アーリーステージの企業育成や企業の新たな事業分野への進出を支援しています。川崎市産業振興財団等の経営支援機関を活用して、専門家等による経営支援、技術支援など成長発展段階に応じたきめ細かい経営支援に取り組んでいくことにより、市内への定着を図るとともに、入居企業と市内企業との交流を促進し、新事業創出のためのネットワークを形成しています。
また、「ものづくり都市かわさき」を支える中小企業の国際競争力を強化するための基盤技術の高度化を通して地域経済の活性化を図っています。
■KBIC(かわさき新産業創造センター)
 川崎市幸区新川崎7-7
 TEL: 044-587-1591 / FAX: 044-587-1592
 http://www.kawasaki-net.ne.jp/kbic/