地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、川崎市宮前区の地域ポータルサイト「宮前ぽーたろう」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

川崎市宮前区の地域ポータルサイト「宮前ぽーたろう」

かわさきマイスター活動レポート

かわさきマイスター飯島義弘さん〜大きな柱時計を修復

「あ!時計が動いてる!」川中島小学校で行われた完成披露式のレポートです。

提供:川崎市

飯島さんにより、約1年半がかりで修復された大きな柱時計。

ゆっくりと振り子が動きだし、<br>再び時を刻み始めた柱時計。
ゆっくりと振り子が動きだし、
再び時を刻み始めた柱時計。
 2011年9月26日、川崎市立川中島小学校(川崎市川崎区川中島2-4-19)で柱時計の完成披露式が行われました。長年、子ども達を見守って来た時計が止まってしまったのは昨年5月のこと。古く複雑な構造をしている柱時計の修理をどこに依頼すればいいのか、考えあぐねていた学校に、市が仲介役となり、時計技能士の飯島義弘さんが修復することになりました。

 飯島さんは、平成19年度認定のかわさきマイスター。ロレックスを始めとする世界的に有名なアナログ式時計の多様で複雑な構造を熟知し、的確に故障箇所を把握。時には、独自に製作した修理用の器械を使うことも。あらゆる時計に対応し、もう一度、新たな命を吹き込むことができる、希有な時計技能士として業界で名前を知られています。

 前日に行われた「てくのかわさき技能フェスティバル2011」にもマイスターとして参加されていた飯島さん。翌日に控えた時計の修復完成披露式について「あのような古い時計は、実際に設置して動かしてみないと結末がわからないものなんです。ただ私は、時計が持ち込まれた時に、修理できるものとできないものはすぐに見分けがつきます。できないものは引き受けません。」と確信のある面持ちで話されていたのが印象的でした。

スイスから取り寄せた振り子の「振りバネ」が、修理の要に。

柱時計の設置に向けて、<br>最終作業に取り組む飯島さん。
柱時計の設置に向けて、
最終作業に取り組む飯島さん。
 当日は、飯島さんと市の担当職員が予定より早く川中島小学校へ到着。時計の設置に向けた準備を進めながら、校長の小林信昭(こばやしのぶあき)さんと完成披露式に向けて打ち合わせを進めていました。時間近くになると、2社の新聞社から取材記者が訪れ、柱時計の設置場所である校長室の横には、忙しく話し合う複数の大人達の姿が。その様子に気づいた児童が「大きな古時計」を歌いながら通り過ぎる場面も見られました。

 長い歴史を感じさせる佇まいの柱時計。残念ながら、いつ頃作られたものなのか、その正確な年代は不明。飯島さんは「昭和20年代あたりのものではないか。」とおっしゃっていました。柱時計としては大きく、作りも重厚なことから、記念品として小学校へ贈呈されたものではないかと、学校でも確認をしたそうですが、詳細のわかる人が見つからず、また記録も残っていなかったようです。

 これまで数万個に及ぶ様々な時計の修理をして来た飯島さん。今回も時計の構造を把握し修理を進めることは順調に進んだそうですが、苦労したのは、何と「部品の調達」。柱時計の心臓部ともなる振り子の「振りバネ」は、日本国内では合うものが見つからず、スイスから取り寄せることに。必要な部品が、どこで手に入るのか、それを見極められるのもマイスターの実力であることを知らされるエピソードでした。

いよいよ完成披露式へ。再び時を刻む柱時計。

 完成披露式の時間になると、児童代表の子ども達が続々と校長室に集まりました。校長先生から「かわさきマイスター」について説明を受け、目の前に座っている飯島さんがそのマイスターであることを告げられると、子ども達は少し緊張した様子に。飯島さんが柱時計の部品を見せながら、今回の修理について説明をすると、真剣な表情で聞き入っていました。
完成披露式に集まった<br>児童代表の子ども達。
完成披露式に集まった
児童代表の子ども達。
時計の構造について<br>子ども達に説明する飯島さん。
時計の構造について
子ども達に説明する飯島さん。
ひととおりの説明が終わったところで、全員で設置場所へ移動。柱時計に向かう飯島さんの手元に、子ども達の視線が集中しました。大きな時計の外観とは裏腹に、作業は非常に細かいステップで慎重に進められていきます。手作業を施した後は、顔をぴったりと時計につけるようにして音を聞き、動きを確認する飯島さん。何度もその微妙な調整を繰り返し、見事に振り子が動き出した時は、自然と拍手が起こりました。
時計の動きを音で確かめながら<br>調整を進めていきます。
時計の動きを音で確かめながら
調整を進めていきます。
振り子が左右に揺れ、<br>見事に復活した柱時計。
振り子が左右に揺れ、
見事に復活した柱時計。
「まだ動きが不安定。これから時間をかけて微調整をしていく必要があります。」と飯島さんは言います。休み時間に入って時計を見に来た子ども達からは「あ!時計が動いてる!」と驚きの声が。川中島小学校で、再び柱時計が時を刻み始めました。

川崎市はメカの発展都市。その面白さを学んで欲しい。

 完成披露式の終わりでは、時計の復活を見守った子ども達の代表から「僕が入学した時には動いていた柱時計が止まってしまった時は、とても寂しかったです。また時計が時を刻み、川中島小学校を見守ってくれることがとても嬉しいです。柱時計は、川っ子達の自慢の時計になりました。飯島さん、ありがとうございました。」と、お礼の言葉が送られました。

 飯島さんからは「みなさんにお願いがあります。川崎市はメカで発展してきた街です。是非、メカを学んで下さい。人間と違って、メカは正直です。きちんと直せば、きちんと治るので、とても面白いものです。メカを勉強して好きになってください。」と伝えられ、子ども達の拍手で完成披露式が終わりました。

 小林信昭校長は「物を大切にする気持ちや、飯島さんのように、手に職を持って長年ひとつの仕事を続けているからこそ育まれる技術とその思いの素晴らしさを知ってもらいたかった。」と話していました。

 「こうゆう仕事は、お金に変えられないものなんです。」と語っていた飯島さん。柱時計の修理は、無償で引き受けることにしたそうです。見事に復活した柱時計。これから再び、川中島小学校で時を刻み続けることでしょう。

川崎市立川中島小学校

川崎市川崎区川中島2-4-19
(044)288-3167
http://www.keins.city.kawasaki.jp/2/ke200501/
プロフィール
飯島 義弘(いいじま よしひろ)さん

岩手県出身。20歳で時計技能士として川崎で独立。世界的な有名時計ブランドを始めとするアナログ式時計の構造を熟知し、独自に編み出した器材を使って修理をする高度な技術を有す職人として名前を知られている。後継者育成にも力を注いでおり、時計技術者が集まる組織「日本時計研究会」では、月1回講師を勤め、技術・技能の普及に努めている。平成19年度認定かわさきマイスター。川崎区在住。飯島商会経営。

★飯嶋さんの詳しい紹介はこちら

飯島商会 
川崎市川崎区池田1-9-3 
(044)233-6929