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かわさきマイスター紹介

和服仕立業 吉田 茂さん

日本の民族衣装きものを多くの人へ

提供:川崎市
吉田茂さんは父親の和服仕立業を引き継ぎ、その技術、技能を高めるよう修業を積み重ねてきました。反物(幅36cm~72 cm、長さ4m~26 mの細長い布)を裁断し、絵柄を合わせ、微妙な針の動きで美しく縫い上げるのは高い技術、技能が求められます。吉田さんは抜きんでた日本伝統の技で、お客様の注文に応えています。吉田さんは「日本の民族衣装、きものは華やかです。きものは手入れさえちゃんとすれば、親から子、子から孫へと長く着られます」と呉服・和服の魅力、良さを紹介し、多くの人へ和服を広げるために力を注いでいます。
プロフィール
吉田茂(よしだしげる)さん

父親の和服仕立業を継ぐ決意をしたのは1963年でした。高校卒業後、2年間、呉服店に勤め、呉服についての基礎を学びました。その後、父親のもとで、和服仕立ての職人として修業。技術、技能を高め、丁寧な仕事ぶりが呉服業界で高く評価され、横浜のデパートの専属として留袖や振袖など高級和服を仕立てるようになりました。そのデパートが2003年、呉服売り場を閉鎖したのを機会に、「お客様から直接、注文を受ける」ようになりました。これまでに仕立てた和服は6,000を超えます。平成23年度認定かわさきマイスター。
川崎市幸区在住。吉田和裁所経営。
これは、吉田さんの技能を紹介する動画です。クリックしてご覧ください。

吉田さんについて教えてください

始めるきっかけは何でしたか?

「この部屋は父の代から仕事で使っています」と語る吉田茂さん
「この部屋は父の代から仕事で使っています」と語る吉田茂さん
親父の代から和服仕立てをしてきました。この家はもう50年余になるのですよ。今、私が仕立てで使っている(2階の)10畳の部屋で最も多いときは6人で仕事をしていました。
高校を卒業するころに、親父の仕事を継ごうと思うようになって、呉服店(東京)に就職しました。ここで(和服の生地になる)白生地や織物の素材の見方、又お客様の要望によるデザインや染色工程など、「きもの」に関わることについての基礎を学びました。2年ぐらいして、うち(父親経営)の和裁所へ飛び込みました。
当時、私のように20歳ごろから和裁の仕事を始める者は少なかったです。和裁は手仕事ですから、体、骨のやわらかい内に入るのが「覚えが早い」といわれていたので、中学校を卒業するとすぐ、うちのような所に入って修業していましたね。この頃、うちには住み込みで女の子が4人ほど居て、仕事をしていました。
仕立職人になろうとする人は京都で2年ぐらい修業するのが普通でしたが、私はここ(自宅)で仕事ができるよう、自分なりに修業しました。私の20代の頃はひとつの所(自宅の和裁所)で座布団に座ってやる仕事に、じっとしておれず、全国各地を(旅して)まわりましたね。

やっていて一番面白いと感じることは何ですか?

あぐらをかいて仕事に入る吉田茂さん
あぐらをかいて仕事に入る吉田茂さん
見た目、色あせた感じのきものを洗張りしてから仕立てると、生地に光沢が蘇えり、とても華やかな仕上がりになります。また、あらかじめ、配置が決まっている絵柄ですが、絵柄合わせはパズルのような感じです。それを合わせて、きものに縫い上げます。これらは一例ですが、仕立てという仕事は面白く、楽しさもあります。

また和裁の世界では、先生同士でも互いに手の内(技術)をなかなか見せようとしません。 そこには仕事の取り合いが見え隠れする、戦いの場が展開しているのです。そういうこともあって、他人と比べて自分の仕立てがうまいかどうかわかりません。
そのような中で、私の仕立て、仕事の良し悪しが、お客様の中で評価されているのです。私は、良い仕事をして、クレームのないようにと心がけてきました。自分の仕立てに、どのような評価がされているか判らないからこそ、納品に伺った時お客様から、『この前のきものとても着心地が良かったわよ!』と、喜ばれると、この仕事をしてきて良かったなぁ と思い、やりがいを感じます。 

長年、継続して技能研鑽に努めることが出来たのはなぜですか? (他の道に行こうと思わなかったですか?)

尺のものさしで計測する和服仕立
尺のものさしで計測する和服仕立
日本の民族衣装、きもの(呉服・和服)は、どの国の民族衣装にも負けません。きもののように鮮やかで、いろんな色彩を使っている華やかなものは外国の民俗衣装にありません。この、きものをお客様の注文に応え、お客様に喜んでもらえるものをつくろうとしてきたことが、技術、技能を高めていくことになったのだと思います。

苦労したことはありますか?

縫うときは足で生地を引っ張る
縫うときは足で生地を引っ張る
デパートの特選売り場のものを作っているときは、きつかったですね。週に3回、納品するものを取りに配達の車がきます。車を空で帰せないので、休む間なんてなかったです。寝る間もなかったぐらい仕事をしていました。休むと(デパートの)店員から電話がかかってきました。「仕事に殺される」という言葉が合うぐらい、注文が次から次にきました。デパートの店員は呉服屋のように客の注文を受けて私の所に注文してきます。留袖とか振袖など高額のものを多く手がけました。丁寧に縫ってきました。きつい仕事でしたがデパートの売り場だからこそ、滅多に縫えない反物が売れ、それを仕立てる楽しみも有りました。沖縄の織物で、芭蕉布とかね!

自分が誇れる、自信のある卓越した技能を教えてください

熱くしたコテで生地をきれいにのばす
熱くしたコテで生地をきれいにのばす
自分のモットーとして、修行8年目から『裁ちから仕上げまで、全て一人縫いの仕立て』をしてきました。そういうこともあって、いろんな注文がきます。急な仕事でも断らないようにしています。喪服は急に注文がきます。葬儀は急ですからね。もう時間との勝負です。注文を受けて3日ぐらいで仕立てて、納品できるようにしてきました。そうしないと、食べていけませんからね。とにかく、注文に応えるようにしてきました。
(仕立て職人の腕の見せどころの一例として振袖、礼装などの表地と裏地の生地を安定させる「ぐしびつけ」について)私は、1寸(約3.3cm)の中に、9針が目安の「ぐしびつけ」というしつけをしています。こういうのは、普通の仕立て屋ではあまりやりません。やり方によって、粗くなったり、生地に糸がもぐったりしてしまいますが、それではいけない。縫い目がきれいに見えるようにしなければなりません。この「ぐしびつけ」は仕立ての見栄えに差をつけます。
先程も言いましたが、お客様に喜んでいただける、お客様から苦情の出ないものを届けるようにしたことが私の誇りです。

ものづくりについて教えてください

ものづくりの魅力を教えてください

和服について説明をする吉田茂さん
和服について説明をする吉田茂さん
汚れた和服をほどき、洗い張りをして、仕立てをすると新品のような和服に蘇ります。私は反物を裁つとき(失敗したら反物代の弁償をすることになる)や、きれいに、そして金属の針を刺すのですから生地を傷めないように縫うなど、とても神経を使って仕立ての仕事をしています。このような苦労をして仕立て上げたものを手にしたとき、仕立ての仕事に魅力を感じます。

かわさきマイスターに認定されて良かった点を教えてください。

マイスターに認定されたら、すぐ「新聞でみました」といって注文がきました。マイスターとしての責任の重さを感じます。これまでは市民の方々との交流があまりなかったのですが、マイスターに認定されてから交流ができるようになったと思います。

後継者を育成するため、何に取り組まれていらっしゃいますか?

「この〝七ツ道具〟で和服をつくります」と話し机上に並べた道具
「この〝七ツ道具〟で和服をつくります」と話し机上に並べた道具
きもののことを学びたいという若い人もいますので、若い人へ、きもののこと、仕立てという職業について伝えるために、自分なりの力で、お手伝いをするようにしようと思っています。

これから「ものづくり」を目指す方たちへアドバイスをお願いします

仕上げ間近の和服を机上に出す吉田茂さん
仕上げ間近の和服を机上に出す吉田茂さん
和裁への入門は、まず、あぐらをかけるようになること。仕立ては、あぐらをかいてします。(ひごろ、あぐらをかいていない人の場合)大体、30分ぐらいで、足がしびれてきます。
あぐらをかくのも仕事だと思って、我慢してやっておれば、仕事ができるようになります。

最後にこれからの活動について教えてください

(デパートの仕事をしているときは)店員からお客様の良し悪しを聞いて、仕事をしていました。今は直接、お客様に会って、注文を聞いて仕事をしています。お客様の声がナマでわかります。お客様の要望に応えられる仕立てをするために努めることと、和服、その仕立てについて多くの人に知ってもらい、和服の普及に役立つようになりたいと思っています。

どうもありがとうございました。日本の伝統文化の一つである、きものの良さを多くの人に知ってもらえるようにしたいという吉田さんは、きものの良さについて教えてくれました。

きものの生地は50年前のものでも大丈夫です。ただし、糸は10年ぐらいが寿命で、ほどくとキュ、キュと切れてしまいます。きものは汚れがきつくなったら、ほどいてシミを抜き、洗い張りをし、仕立て直しをすれば、いつまでも着ることができます。きものをすぐ仕立てる気がしなくても、洗い張りだけはして反物にしておいてください。手入れをちゃんとしておけば、長持ちします。
きものは高価だから、こしらえにくいという方がいます。よーく考えてみてください。50年も着られるのですから、決して高い買い物ではありません。

これからかわさきマイスターの活動を通して、一層きものの良さを市民に伝えてくださることだと思います。

川崎市の技能者や職人の皆様を紹介する映像番組「The 職人魂」でも、紹介されました。

【問合せ先】  
吉田和裁所

■所在地   幸区古市場1-48-10
■電話    044-511-1682
■FAX         044-511-1682
■営業時間  9:00~18:00
■休み    日曜日
■e-mail
tabinabi.since2007@gmail.com
■HP
https://yoshidawasai1929.on.omisenomikata.jp/