ロボットカーを作り、動かしてみよう
基盤技術セミナー「ロボット技術研究会 マイコンを用いてロボットカーを制御する!」レポート
かわさき新産業創造センター(KBIC)では平成22年度より毎年、「ロボット技術研究会」を開催しています。ロボットを作り動かすためには、機械・電気・ソフトウエアの技術が必要です。この講座では距離センサーとモータを持つロボットカーに、LEDヘッドライトを組み込んだ自作のバンパーを取り付け、これらを制御するソフトウエアを開発します。
この講座ではコンピュータのプログラムを作ったことがない人でも、ARM(Coretex M3)CPU搭載のロボット用マイコンボードを用いてロボットカーを製作し、組み込み技術の基礎を習得できます。
平成24年度は講座を2回実施し、各回4日間にわたってさまざまなカリキュラムを用意。1日目と2日目はプログラミングに必要なC言語の学習、3日目はロボットカーの部品の3D CAD設計と3Dプリンター加工。4日目は各自で製作したロボットカーの走行実験を行い、講座の成果を確認します。
講習では講師がホワイトボードを使って、わかりやすく説明
※かわさき新産業創造センター(KBIC)とは
新たな事業を始めようとしている人や企業に対して不足する資源(資金、技術、人材、オフィス、ソフトなど)を提供し、支援するインキュベーション施設。また、市内のものづくり企業の技術能力向上(人材育成や技術革新対応)のための講習会も行っており、今回の「ロボット技術研究会」もその一環で開催。川崎市が地域経済の活性化を図るために施設を設置し、川崎市産業振興財団が運営。
平成24年度 ロボット技術研究会
■日時 4日間 毎回土曜9:00~16:00
第一回 7月7日、7月21日、8月4日、8月25日
第二回 9月29日、10月20日、11月10日、12月1日
■参加者 各5名
■対象 市内在勤・在住の方、中小企業技術者など
■会場 かわさき新産業創造センター(KBIC) 2階CAD/CAM研修室
■講師 C言語/有限会社Kinder Heim 代表取締役 萩原 哲夫さん
3D CAD/東京工業大学 北野 智士さん
組み込み技術/株式会社テクノロード 代表取締役 杉浦 登さん
おもなカリキュラム
1日目
【講習】C言語とは、C言語基礎(入出力、制御文、配列など)
【実習】Visual Cでプログラム初級演習I
2日目
【講習】C言語基礎(演算子、関数、構造体など)
【実習】Visual Cでプログラム初級演習II、初級演習III
3日目
【講習】3D CAD「ソリッドワークス」とは
【実習】3D CAD「ソリッドワークス」によってロボットカーのバンパーを設計
3Dプリンター「V-Flash」によってバンパーを作成
バンパーにヘッドライトとなるLEDを取り付け
4日目
【講習】マイコンとは、ロボット用マイコンボード「Coron」とは
「壁避け制御ロボットカー」について
【実習】ロボットカーを製作
ロボット用マイコンボード「Coron」にC言語でプログラミング
ロボットカーを走行させ、距離センサー、LED、モータの動作確認
初心者も安心して参加できる
プログラミング講座。実習が楽しい
センサーに反応しながら走行し、
LEDが点滅するロボットカー
ここでは、2012年12月1日に開催された4日目の講座の様子と、参加者の感想を紹介しましょう。
いよいよ講座の集大成 ロボットカーを製作して発進!
3D CADでデザインしたデータを実体化できる3Dプリンター「V-Flash」。本体は中央で、造形後に奥の「パーツ洗浄システム」で洗浄、手前の「UV硬化オーブン」で表面を硬化させて仕上げる。バンパーはこの装置で作りました。
参加者は、
(1)ロボットカー本体とバンパーを組み立て、
(2)C言語でマイコンボードに距離センサー、LED、モータの動作をプログラミング
の順に作業していきます。
(2)は、距離センサーによってロボットカーが障害物に近づくとヘッドライトのLEDを点灯、離れると消灯するようにプログラミングします。次にPCキーボードの入力操作によってロボットカーを前進、後退、右旋回、左旋回、停止するようプログラミング。最後に障害物に近づくとモータの回転速度が遅くなるようにプログラムを組んでいきます。
それが終わったらロボットカーがプログラミングどおりに動くか確認し、不具合があればPCモニター上でプログラムを細かくチェックしていきます。
参加者はわからないことを積極的に質問し、講師は一人一人に丁寧にアドバイスしながら問題を解決していました。
そして、全員が壁避け制御ロボットカーを走行させることに見事に成功しました。実際のロボットカーの動きは、下の動画をご覧ください。
3Dプリンターで実体化した家の模型。
液状プラスチックで薄い層を作り、
何層も積み重ねて立体化する
距離センサーを繋げたロボットカー。
左に3Dプリンターで作成したバンパー。
LEDが2個取り付けられている
初めの一歩の足がかりになり、広い分野で役立つ講座内容
講師陣はものづくりのプロフェッショナル。
とても頼りになる
「今回の講座で取り組んだC言語プログラミングや3D CAD設計は、独学で始めるには敷居が高いものです。もちろん4日間の講座で身に付くものではなく、本格的に学ぶきっかけにしていただいたり、学び方を知る機会と捉えていただければいいなと思っています」と話すのは、C言語の講師を務めた川崎市産業振興財団の萩原哲夫さん。
「ものづくりにおいて、今まで経験のないフィールドに足を踏み入れることは、何からどう始めたらよいかわからないうえ、技術的にも難しいことです。この講座はそのようなときの足がかりとなりますので、気軽に参加していただけたら嬉しいです」とも話してくださいました。
組み込み技術講師の杉浦登さんの指導で
参加者は技術を確実に習得
今回、参加者は講習で知識を学ぶほか、実習で技術を実体験することで、組み込み技術の理解をより深めたようです。ロボットの製品企画や開発を目指して、C言語、設計や加工、プログラミングなど総合的な技術を必要とする際はもちろん、ロボット以外のものづくりに取り組む際にも、習得した知識や技術がさまざまな分野で役に立つことでしょう。
参加者の感想
2012年第二回の参加者は開発者、設計者、技術者などの仕事をしている人が多数で、自分のステップアップのために参加。講座の内容は今後の仕事に活かせるという声を多く聞けました。
「ロボットシステムの組み込みをしていて、設計の選択肢を増やしたいと思って参加した。とても実りのある4日間だった」
「3D CAD設計とCPU搭載マイコンボードで組み込み体験をしたかった。これから勉強するきっかけとなってよかった」
「3D CADでデザインを組み込むことのおもしろさを知り、もっと学びたくなった」
「3D CADを使えて楽しかった。3Dプリンターも初めて使い、貴重な体験ができた」
「頭の中で思い描いたものがそのまま3Dプリンターで立体の形になるのがおもしろかった」
「マイコンボードのプログラミングをするだけでも楽しかった」
「多種多彩なCPUを今後どのように開発していくかを学べ、選択肢が広がった」
「この取引先にはこのCPUが合っているなどと、CPUのレベルを見極める勉強になった」
「ものごとを教えてもらうこと自体が楽しいので、講座の日数をもっと増やしてほしい」
「大企業は分業だが、中小企業は一人が受け持つ仕事が多くてたいへんな反面、さまざまな仕事に携われるおもしろさがある。今回の講座でものづくりの全体像が見わたせた。ものづくり初心者にもおすすめだ」
「ものづくりの仕事がしたいとただ考えているだけでは何も始まらない。本で勉強するより先生から直に教えてもらうほうがわかるし、3D CADや3Dプリンターに実際にふれられるのも大きな収穫。受講料は格安だし、また参加したい」
まだまだある、技術を学ぶきっかけづくり ―あなたも挑戦してみませんか?―
かわさき新産業創造センターでは、「ロボット技術研究会」以外にも様々な講習会を開催しています。
3次元CAD/CAM講習会や精密加工に関する講習会などがあります。
また、やすりがけやはんだづけなど、地味ですが、ものづくりの基礎となる重要な技術も学ぶことができます。
正しいやすりがけの方法を動画で見ることができます。
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