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路傍の晶

ダイニングキッチン スプーン  瀬戸さん

お店を切り盛りする瀬戸さん。
シェフの兄とともに楽しい時間を提供する。
お店を切り盛りする瀬戸さん。
シェフの兄とともに楽しい時間を提供する。
自分たちがやっていることは、ある意味“ショー”だと、オーナーは言う。
「つまり、来てくださったお客さまにいかに楽しんでいただくかだと思うんです。食材があって作り手がいて、そしてお客さまがいて。シェフの手の動きやホールでの会話も含めて、きちんとしたモノが揃わなければショーは始まらないし、もちろんお客さまがいなければ成り立たない。お客さまと作り手、さらに食材の仕入れ元があって、それらすべてが合致して初めて楽しい空間になると思います」

 2006年2月、瀬戸さんは自身が育った川崎市宮前区で、シェフを務める兄の恵造さんとともに「スプーン」を開いた。厨房はホテルや洋食店でおよそ15年にわたり修行を積んだ兄に任せ、瀬戸さんはおもにホールを担当している。
清潔感あふれる店内。ワインは
オーストラリア産を中心に各種取り揃えている。
清潔感あふれる店内。ワインは
オーストラリア産を中心に各種取り揃えている。
「小さいころから商売をしたかった」という瀬戸さんは、起業する以前は農協で働いていた。そこで培った10年余りの経験は得がたい。作物の知識はもちろん、生産者やエンドユーザーと育んだ信頼関係が、経営者となったいまも活きている。なにより大きかったのは、生産者たちの思いに触れたことだろう。
「農家のひとたちがどれだけの気持ちを込めてつくっているかを、間近で見てきました。だから彼らが一生懸命つくったその食材を、作り手である僕らはきちんと届けたい」

 食材集めは、瀬戸さんが培った縁をもとに、シェフが自ら足を運んで品定めする。北は北海道から南は九州まで、安全性と味、価格にも気を配りながら厳選している。

 ただ一方で、「ヘンなこだわりはない」と、瀬戸さんは言う。
「何料理のお店かと訊かれると難しいですね。基本的には洋食店ですが、本マグロを使うこともあるし、毎週アレンジを変えるオムライスは和洋折衷の味も多い。食材にしても、ただ闇雲に無農薬にこだわる必要はないと考えています。プロの目で選び、プロの料理人がつくる以上、いいものを出すのは当たり前。品質のいい食材を使って、美味しくて安全なものを提供する。自分たちが客として行ったときに美味しい、満足できる店にしたいと、兄ともよく話しています」
地元の川崎市宮前区で旗揚げ。
街道沿いに佇む瀟洒な雰囲気が目を引く。
地元の川崎市宮前区で旗揚げ。
街道沿いに佇む瀟洒な雰囲気が目を引く。
そうした瀬戸さんの思いは、店の名と軒先を飾るサインにも込められている。
「食事をするときに、子どもが最初に持つのはスプーンですよね。もちろんスプーンは大人も使う。子どもから大人まで楽しめるという意味を込めて、この名前にしました。お店のロゴデザインは、デザイナーの友人がつくってくれました。右側の明るいハニー色が子どもを表していて、左のビター色が大人、なかのオレンジ色は食材をイメージしています。店ではワインも提供するので、スプーンのかたちがワイングラスにも通じています」

 開店して3年目に入った。家族連れからお年寄り、常連に新規と、多彩な客層が足を運ぶ。だが瀬戸さんは、「まだまだ、これからです」と語る。
「お客さまに笑顔で帰っていただくのが僕らのコンセプト。やるべきことはまだたくさんあります。まずはこの味を広めて、『宮前区にスプーンがある』ということを定着させたいですね」

 味付けの加減を含めて、「スプーン」はそのひと匙にたくさんのひとたちの思いを乗せている。彼らが織り成すショーに主役はいない。役者がひとりでも、ひとつでも欠けたら、楽しい空間にならないからだ。


取材・文◎隈元大吾
ダイニングキッチン スプーン

住所:〒216-0015  川崎市宮前区菅生1-9-28
電話番号:044-976-3001
営業時間:11:30~ (ラストオーダー14:00)
       17:00~ (ラストオーダー22:00)
定休日:水曜、第3木曜