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かわさきマイスター活動レポート

かわさき市民祭りレポート

第32回かわさき市民祭り・3日目レポート

最終日・3日目も、川崎市民祭りには、約23万人の来場者が
最終日・3日目も、川崎市民祭りには、約23万人の来場者が
第32回「かわさき市民祭り」も最終日となった3日目、11月1日も、日曜日で晴天にも恵まれ、多くの来場者が詰め掛けました。マイスターブースでは、この日も数多くの方々が実演・展示に参加されました。

参加されたマイスターは
・中村量貢さん(建築板金 同9年認定)
・石井一夫さん(刃物研ぎ・鋸目立て 平成10年認定)
・内海正次さん(寝具製造 同10年認定)
・鍵屋清作さん(金属ヘラ絞り 同12年認定)
・小林伸光さん(和服洗い張り 同14年認定)
・前原昭さん(木型士 同14年認定)
・竹内三郎さん(円筒研削技能士 同17年認定)
・鈴木貞吉さん(難切削特殊加工 同18年認定)
・野浦惣一さん(ものづくり多能工 同19年認定)
・平賀正明さん(生産システム/加工・組立の設計・製作)

また初日に続き、浅水屋甫さん(広告看板製作 同17年認定)、飯嶋義弘さん(時計技能士 同19年認定)も実演に加わり、合わせて12名のマイスターによる共演でした。
さらにこの日、「かわさきマイスター」当事者で構成される「友の会」の現会長・大橋明夫さん(プレス順送金型設計製作 同11年認定)、前会長・岡部勝男さん(精密機械板金)も、応援に駆けつけ、最終日にふさわしく大いに賑わいを見せた1日でした。

中村量貢さん(建築板金)

中村さん(建築板金)の話に聞き入る来場者
中村さん(建築板金)の話に聞き入る来場者
かつては、「ブリキ屋」とも呼ばれていた建築板金は、加工した板金を、屋根・外壁・雨樋などに取り付けたり、工芸品などを作成したりして、建物の所定の場 所に取り付ける業務を請け負います。中村さんは1級建築板金技能士の資格を持つ、この分野でのスペシャリストです。金属の特質を熟知し、現場の環境を見極めながら、長年の技と勘を頼りに、ピッタリ合うものを完成させます。特殊な形状や、繊細できめ細かな模様を住宅の板金装飾をあつらえる際には、中村さんの極めた技能が必要とされます。
この日も、板金装飾の実演が披露されました。

石井一夫さん(刃物研ぎ・鋸目立て)

家庭での刃物手入れについて丁寧にアドバイスする石井さん
家庭での刃物手入れについて丁寧にアドバイスする石井さん
家庭のキッチン・レストランの厨房などで使われる包丁から、大工のカンナ・鋸、理美容師・植木職人のハサミなど、あらゆる用途で使われる刃物を研ぎ、新品 同様あるいはそれ以上の切れ味を再現させる技能を持っているのが、石井さんです。石井さんはもともと鋸(のこぎり)を作っていたこともあり、鋸の切刃をよくする「目立て」が専門。10代から長年にわたって、鋸鍛冶屋での修行で得た鋸目立ての技能は、いまでも多くの引き合いがあります。一方で、家庭用の包丁やハサミ研ぎの依頼も後を絶ちません。使う人や切る物に応じて研ぎ方を変え、その人に合った仕上がりにしてくれます。
この日、石井さんの刃物研ぎの実演には、つねに多くの来場者に囲まれ、家庭での包丁手入れの方法の質問などにも、丁寧にアドバイスをされていました。

内海正次さん(寝具製造)

来場者の寝具相談に乗る内海さん
来場者の寝具相談に乗る内海さん
良質な睡眠は、1日の疲れをしっかりと取り、翌日の活力を与えてくれる意味でも、重要です。内海さんは、寝具店を営みながら、販売のみならず、手作りの綿布団の製作にもこだわり、そのよさを伝えていくことにも、積極的に取り組んでいます。また、日本の伝統的な夜着で、袖のついた着物状の寝具である「かいまき」も手掛けています。内海さんはお客さんの体格に合った手作りの布団を販売しています。本物の寝具のよさを知った、お得意さんから寄せられる要望はいまも途絶えることはありません。
この日は、内海さんの手による、 真綿の入った座布団などの販売実演がされました。

鍵屋清作さん(金属ヘラ絞り)

子ども達にも、ヘラ絞りの技術は興味津々(右上が鍵屋さん)
子ども達にも、ヘラ絞りの技術は興味津々(右上が鍵屋さん)
金属製のヘラを使って、鋼材を回転させながら滑らかで正確無比に円形に削っていく工程が、金属ヘラ絞りです。鍵屋さんは、その熟練した技能を身につけ、手作業で少量生産するしかない、各種製品になくてはならない大小の精密部品を数多く手がけ続けています。円・円錐の形状をしたものは、この技術で製造されます。シャープペンシルの先にある芯を送り出す微細な部品、ロケット・戦闘機の先端部分の部品まで、幅広いニーズがあります。
今回の市民祭では、家庭で使える金属 製の花瓶を製作し、格安価格で提供されました。

小林伸光さん(和服洗い張り)

かつては一般家庭でも行われていた和服伸子張りの風景(小林さん)
かつては一般家庭でも行われていた和服伸子張りの風景(小林さん)
日本の伝統着である和服・着物は、汚れても洋服のように洗濯機で洗うわけには、当然いきません。袖・襟口など汚れの箇所を1つひとつ丁寧に手洗いし、生地 を天日干しします。その洗い張りの技である「伸子張り」を正統に継承している数少ない職人の1人が小林さんです。伸子張りは以前は各家庭の屋外でも行われており、その光景は日常的なものでした。しかし、1960年代以降、和服を着る人が少なくなるにつれて、家庭で伸子張りをする人は見なくなりました。盛時には、川崎市内だけで60軒ほども あった、洗い張りのできる和服店も、いまでは数軒にまでなっています。
この日は、一定以上の年代層の方には懐かしい伸子張りによる和服洗いの実演がされました。

前原昭さん(木型士)

木型製作についての質問に回答する前原さん
木型製作についての質問に回答する前原さん
マンホール・自動車エンジン・歯車などの工業製品は、その製品の形をした「鋳型」に金属を溶かして流し込んで作ります。前原さんは、さまざまな製品の型を決めるこの鋳型製作になくてはならない木型作りで卓越した技能をお持ちです。製品化・量産化の工程は、ここからスタートすることになります。その素材は、従来は木材でしたが、現在ではスピード化、コストを抑えるために、発砲スチロールを使うことが主流になっています。前原さんが携わる、この木型工の業務は、 工業の発展を下支えする、重要な役割をいまも担っていることに変わりはありません。
市民祭り3日目、前原さんの手による自動車エンジンの製品サンプルの展示もされました。

竹内三郎さん(円筒研削技能士)

竹内さんの説明に真剣に聞き入る少年たちも
竹内さんの説明に真剣に聞き入る少年たちも
竹内さんは1万分の1ミリメートルという超ミクロの円筒研削の達人です。硬材と呼ばれる、タングステン・コバルトといった金属は、加工を施すだけでも、高度な技能が求められます。竹内さんは、そんな種類のさらに微細な金属を、円筒研削盤の特殊機材を巧みに操り、正確かつ精密に加工し製品化していきます。硬い金属は丈夫ですから、製品の強度を保つため、さまざまな製品の微細な部品として使われることが多くあります。自動車製造に欠かせないゲージ、冶工具・金型の部品などです。
この日は、竹内さんの手による貴重な製品のサンプル群が、マイスターブースで展示されていました。

鈴木貞吉さん(難切削特殊加工)

鈴木さん(左)の手による製作物は、〝幸運ストラップ〟と命名
鈴木さん(左)の手による製作物は、〝幸運ストラップ〟と命名
加工が困難とされる各種の金属を、極めて正確に、精密に切削加工をする技能を極め、広くモノづくりに大きな貢献をしているのが、鈴木さんです。加工をしているときには、あらゆる感覚を研ぎ澄まし、集中して業務に臨みます。特に、音を聞けば、作業がうまく進んでいるかどうかの見極めをつけることができると言います。削る音を聞くだけで工具の寿命や切削条件等を見極めることができ、違和感のある音を聞きつければ、即座に微調整をして対応します。
市民祭り3日目は、チタン・アルミなど各種素材で製作された携帯ストラップが展示販売されました。

野浦惣一さん(ものづくり多能工)

実は野浦さん(左)と難切削特殊加工の鈴木さん(中)は同じ職場の仲間です。
実は野浦さん(左)と難切削特殊加工の鈴木さん(中)は同じ職場の仲間です。
野浦さんは、主に工作機械の開発・製造をこれまで長年手がけ、そのスペシャリストとしての技能が極めて高く評価されています。職場の工場にある、加工機械 類のすべての特質・機構も熟知し、修繕点をいち早く見つけだすことができます。メンテナンスのシーンにおいてもなくてはならない技能者の1人ということが できます。開発にかける意欲は、いまも衰えることはありません。設計・開発・製造すべての工程に通じた、貴重な人物です。野浦さんの勤めている株式会社日の出製作所が開発した「川崎ものづくりブランド」認定の「総削りだしゴルフパター」などには、長年身につけてきたメカニクスについての卓越した知識やノウハウが活かされています。

平賀正明さん(生産システム/加工・組立の設計・製作)

平賀さんの製品サンプルに興味津々の来場者の皆さん
平賀さんの製品サンプルに興味津々の来場者の皆さん
製品づくりをより効率よく行うためには、その生産の工程をシステム化していくことが大切です。その設計はもとより、製造時に使う冶工具の開発にもあたっているのが、平賀さんです。平賀さんが開発した冶工具は、製品の特性に合った装置を作るだけでなく、作業者の付加も少なくなるように工夫されています。
顧客から依頼される各種の部品を作るために一度開発した冶工具であっても、顧客からのより高い要求に応えるため、より効率的な冶工具の製造に向け、常に自身のスキル向上に取り組んでいます。
当日は、製品サンプルの展示に加え、来場者の質問にも真摯に対応されていました。
また、初日に引き続き、浅水屋甫さんによる手書き表札の製作の実演、飯嶋義弘さんによる、時計の時間計測・修理相談の実演が行われました。
大盛況の浅水屋さんによる手書表札の実演(3日目)
大盛況の浅水屋さんによる手書表札の実演(3日目)
飯嶋さんの時計計測器の前にも多くの来場者が
飯嶋さんの時計計測器の前にも多くの来場者が

「かわさき市民祭り」は、毎年10月末もしくは11月初旬、週末の3日間をかけて開催されます。来年も、また「かわさきマイスター」による実演・製品展示ブースが開設される予定になっています。一度、ぜひ足を運ばれ、素晴らしい匠の技に、実際に触れてみてはいかがでしょう。