「Find」という店の名前に、中原さんの想いは込められている。
「ちょっと楽しくなったり、気分が和らいだりする品物を何かひとつでも見つけて頂けたらいいな、という意味で名付けました。なるべくコストを抑えて、日々の生活のいろいろなご提案ができればと思っています」

　なるほど、店内には洋服からアクセサリー、雑貨など、多種多様な品が散りばめられている。すべて手づくりによるFindオリジナルのアクセサリーをはじめ、品揃えのコンセプトは流行にとらわれずここにしかないもの、また中原さん自身が気に入ってセレクトしたものだ。なかには天然石やお香、間接照明など、癒し効果をもたらす商品もある。

「興味がなかったことでも、ここで新たに知るきっかけになれば」と、中原さんは語る。
「たとえば、いままでは身に着けたことのないアクセサリーをしてみたらお友だちに褒められたとか、気分が高揚したというお客様の声を聞きました。また、明かりには興味がなかったけど点けてみたらお子さんが喜んだというお話もあった。そのように普段とは違う色や明かり、香水など、洋服だけでなく新しい生活のきっかけになればうれしいです」

そんな中原さん自身、むかしから雑貨や洋服が好きだったという。「いつか自分の店を持ちたい」と生まれ育った静岡を飛び出し、老舗デパートの専門店で働き始めたのは25歳のころだった。世は棒グラフによって販売力を競い合う時代である。右も左もわからない新人は、しかしベテラン店員に揉まれながら着実に売り上げを伸ばしていく。苦労はいつしか楽しみに変わっていた。

　結婚し退社してからも、アパレル業界は彼女を放っては置かなかった。縁あってべつの老舗ショップから声が掛かり、中原さんはそこでも売り上げを伸ばすと、企画から営業、社員教育まで一手に任されるようになった。得意客のリクエストを受け、自宅に足を運び、クローゼットのセットアップを行なったこともある。洋服のコーディネートはもちろん、ファッションに係わるその眼力は、そうしたこれまでの経験によって育まれていた。

昨年5月に宮前区は鷺沼駅ちかくでオープンし、1年半が経つ。「地域密着型なので、お客様の声を伺い、できるだけお応えしたい」という想いで始めた小さなショップも、月日を経るにつれ客足は次第に伸び、顔なじみも増えた。お店を目指してやってくるひともいれば、通りすがりにふらりと入り、「楽しかった」と笑顔を見せるひともいる。

　中原さんは言う。
「ストレス社会のいま、みなさん色々な悩みを抱えながら生活しています。だから、すこしでも癒されたり、元気になってもらえたらいいなという想いがあります。やはり私自身が楽しくないと、好きな品物でなければお客様にお勧めはできません。買って頂いた方にその品を可愛がってもらえたら、私としてもうれしいですね」

自身が大切にしている商品を、おなじく大切な利用者へ届ける。Findでは商品を買ってもらったときはいつも、「お嫁に行く」と言うそうだ。



取材・文◎隈元大吾