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路傍の晶

宮前村の台所 せいや 店主 鮫島さん

この11月で丸2年を迎える「せいや」
この11月で丸2年を迎える「せいや」
幼いころ体験した、とある出来事が忘れられない。生まれ育った地元・宮前区の神社で開かれた祭で、少年は初めて神輿を担いだ。「せいや、せいや」噴き出す汗もかまわず、皆で力を合わせて重い神輿を担ぐときの掛け声が、このとき彼の胸に強く刻み込まれる。だがまさか将来、自身が店を開き、さらにそのフレーズを屋号に使うことになろうとは、当時は想像もしなかっただろう。

 居酒屋ダイニング「せいや」を営む鮫島さんが料理人を志したのは、高校受験のころまで遡る。
「私立に行かせてもらう以上、なにか手に職をつけて両親に恩返ししたいと思いました。どこを受けようか探していたところ、ちょうど料理を学べる高校を見つけた。3年間勉強して調理師免許が取れる仕組みだったので、私には最適でしたね」
 共働きの両親とふたりの姉に囲まれて育った彼は、家で台所に立つこともしばしばだったという。すなわち、料理の道へ進む素養は自然に備わっていたのだった。
棚にはキープされたボトルが所狭しと並ぶ
棚にはキープされたボトルが所狭しと並ぶ
日本料理から中華料理、西洋料理、製菓、また栄養学や食品衛生学に至るまで、高校でひと通り学んだ鮫島さんは卒業後、日本料理店に入った。以来、足掛け11年に渡って修行を積み、料理の基礎を体得した。独立の夢を描き、「せいや」という名前を編み出したのは、修行もちょうど10年を迎えたころである。

 料理の腕前を磨いた彼には、しかしひとつだけ課題が残されていた。「接客」である。
「日本料理店ではいつも厨房に立っていましたから、レジの使い方やホールの段取りなど、まったく知りませんでした。でも自分で店をやるためには、接客は不可欠。ですから開店前の1年間は、居酒屋に勤めてホールの仕事を学びました」

 こうして料理と接客という飲食店には欠かせない両輪を携えた鮫島さんは、満を持して30歳で独立を果たした。開店を聞きつけた地元の知り合いをはじめ、宮前区で働く社会人やこの地域に暮らす人々など客層はさまざまだ。落ち着いた店の雰囲気ゆえだろう、女性客も半数ちかくを占めるという。
県下ではここでしか飲めないという
「咲紅来(さくらい)」を手に
県下ではここでしか飲めないという
「咲紅来(さくらい)」を手に
「地元の皆さんに支えられてやっているようなものですよ」川崎の市場に自ら足を運び仕入れた魚を捌きながら、鮫島さんは照れ笑いを浮かべる。
「おかげさまで最近はボトルキープも増えてきました。接客しながら料理をつくるのは正直、大変な面もありますが、それ以上に楽しい。たくさんのひとと触れ合えるいまのスタイルが、私には一番合っていると思います。『美味しい』と言っていただけたときが何よりもうれしいですね」

「店を開くならこの街しかない」と心に決め、店名に「宮前村の台所」と冠するほどに、地元をこよなく愛している。生まれ育った地域に支えられながら、一方で地元に恩返しをすべく、32歳の若大将は今日も包丁を握る。



取材・文◎隈元大吾
宮前村の台所 せいや

住所:〒216-0007  川崎市宮前区小台2-7-19 ニューラポール1階
電話番号:044-855-3322
ファックス番号:044-855-3322
営業時間:17:30~24:00
定休日:月曜、第3日曜 *変更もございますので詳しくはお問合せください。