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路傍の晶

ピアノ音楽教室 フィヤージュ 門田さん

「伸ばすためには褒めることが必要」と門田さんは言う
「伸ばすためには褒めることが必要」と門田さんは言う
「subito(スビト)」という音楽用語がある。「突然」を意味するこのラテン語は、たとえば「subito piano」というかたちで使われ、これはすなわち「ただちに、静かに」という意味を成す。門田さんの人生のひとつの転機も、まさに突然、訪れた。

 都内有数の音楽大学を卒業した彼女は、音楽を専門とする高校や大学の教壇に立っていた。専門はフランス音楽である。講師として後進の指導にあたる長年の生活が、その先もずっと続くものだと思っていた。

しかし、現実は違った。多くの企業がそうであるように、教育の現場もまたトップが変われば方針も体制も一新する。ある日を境に、門田さんは行き場を失った。「毎日のように通っていた場所が突然なくなり、一日やることがなくなった。初めてゼロになりました」

「目に映る景色さえ違って見えた」というほどに、彼女のショックは大きかった。時間は有り余っていても、向かうべき教壇はない。だが現実と向き合えば向き合うほど、「自分にはピアノしかない」という自覚がくっきりとかたちを成していった。
「数十年間、食事するのとおなじような感覚で音楽に携わってきた。離れることはできないし、毎日ボーっと過ごすわけにもいかない。まずは弾くしかないと思いました」
教室は学校の前にあり、子どもたちも通いやすい
教室は学校の前にあり、子どもたちも通いやすい
知人との演奏活動を通じて、門田さんは音楽への情熱を取り戻していく。と同時に、指導者としての思いも膨らませた。「私のできることで少しでも地域のお役に立てれば」転居を機に鷺沼の自宅でピアノ教室を開いたのは、7年前のことだ。

「子どもの成長は、見ているだけでワクワクします」彼女は目を細める。
「価値観が凝り固まっていないから、いかようにも伸びる。まさに“白紙”。ある日突然、予測もできなかった成長を遂げるんです。太陽の光を当てて水を遣る、まるで木を育てるような思い。学校に通っていたころは子どもに教える機会はなかったんですが、こうして教室を開いていると、これまでに味わったことのないやりがいを感じています」

 音楽は感性が大事だからと、詩や絵画、写真を採り入れることもあるという。もちろん教壇で培った経験を活かし、子どもたちだけの発表会を用意する傍ら、大人にも指導している。
あらゆる教材のなかから、生徒の好みに合わせて選ぶ
あらゆる教材のなかから、生徒の好みに合わせて選ぶ
ところで「フィヤージュ」とは、フランス語で「葉」を表す。意図はこうだ。「葉っぱには花を支える役目があります。そのためには忍耐も必要。でも、かといって葉っぱがなければ、花だけで咲くことはできません。花ばかりを求めず、葉の美しさや存在の意味を考えてほしいという思いから名付けました」

 かつての挫折に耐え、乗り越え、新たなやりがいと出合った。かつての経験を糧に、門田さんは、まだ幼い才能という芽に水を遣り続けている。自身が葉となり、いつの日か、子どもたちが花を咲かすことを想いながら――。





取材・文◎隈元大吾
ピアノ音楽教室 フィヤージュ

住所:〒216-0003  川崎市宮前区有馬7-11-3
鷺沼ショウエイプラザ202
アクセス:東急田園都市線鷺沼駅より徒歩13分
東急田園都市線鷺沼駅より東急バス・川崎市営バス小杉駅行き他に乗り、三田橋バス停下車徒歩3分
電話番号:044-857-3710
授業時間:応相談
定休日:日曜・祝日