うら若き10代のころに味わった痛みをいまも忘れない。山口さんは高校3年生だった当時、卒業後の進路を定めるべく就職活動に励んでいた。美容部員を志し、とある化粧品会社を受けたときのことだ。面接官は席に着いた少女の顔を見るなり、こう言い放った。「あなたみたいなニキビだらけの顔で接客されて、いったい誰が化粧品を買うというの？」と。

　生まれながらに肌は弱かった。たしかに顔じゅう荒れていた。だからこそ綺麗になりたいという気持ちが痛いほど解り、むしろ仕事にも活かせるだろうと思っていた。だが面接官の予期せぬ一言に、彼女は打ちひしがれた。

　その後、旅行代理店に勤めるようになると、肌荒れはいっそう深刻になった。ニキビがないのは目蓋だけだ。「ピーナツの上にピーナツが乗ってる感じ」と表現する肌は炎症で赤く腫れ、化膿している箇所さえあった。慢性的な睡眠不足にくわえ、仕事のストレスや不摂生な生活も影響したのだろう。台湾生まれの山口さんにとっては、慣れない日本での赴任も当時は負担になっていたかもしれない。顔を見られたくないがために顔を上げられず、俯きがちな日々が続いた。

｢ワミレス｣と偶然出合ったのは、そんな沈んだ20代の終りだった。「肌が赤身から中トロに変わったんです」そう言って、山口さんは茶目っ気たっぷりな笑顔を見せる。
「使い始めて3ヶ月ほど経ったら、新しいニキビができにくくなりました。1年で嘘のように綺麗になった。実際、友だちも『別人みたい』と、皆んな驚いていましたから」

思えば、それまでは化粧品の底を見たことがなかった。つまり、試してはみるものの肌に合わず、最後まで使い切ったことがないのだ。だが初めて知ったこの商品は、ほかのどの化粧品とも違っていた。

異なる点はもうひとつある。
「お店の方が、自分のことのように親身になって相談に乗ってくれたんです。売ればいいという、それまで散々経験してきた化粧品の販売とはまったく違いました」
　結婚し、会社も辞めていた山口さんは、こうして身の周りの知人に広めるようになる。その後、彼女を診ていた先生の勧めもあってライセンスを取得、自ら施術を行なうまでになった。あれから15年が経つ。

「台湾や上海にもこの技術を伝えたい」と、山口さんは将来を見据える。
「私は身をもって苦い経験をした分、さまざまなアドバイスができます。栄養学も皮膚についても勉強した。いずれはトータルビューティーを手掛けたいですね。私の原点は、ニキビだらけの自分から生まれ変わった喜び。おなじ喜びを、できるだけ多くのひとたちに味わってほしい」

　かつての傷はもう癒された。いまは痛みを抱え俯くひとたちに、笑顔を取り戻してほしいと願う。顔を上げた瞬間、景色が違って見えることを知っているから――。





取材・文◎隈元大吾