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路傍の晶

西欧風家庭料理 レストラン マ・メゾン 増倉さん

「お客さんの笑顔がうれしい」
と語る増倉さん
「お客さんの笑顔がうれしい」
と語る増倉さん
「一番になりなさい」 幼いころより、親父には口酸っぱくそう言って聞かされたものだ。勉強に関して口うるさく言われたことはない。ただ、礼儀やひととしてあるべき姿勢については厳しかった。そして、何に取り組むにせよやるからには頂点を目指せと諭された。いま思えば、人生にはそれぐらい真摯な姿勢が大切だということを教えてくれたのかもしれない。

増倉さんが“親父”と呼ぶ人物は、じつは彼の実の父親ではない。母方の親戚、つまり叔父をそう呼ぶのだ。父のない彼にとって、叔父は父親そのものだったのである。

 大阪で洋食店を営む叔父の勧めで初めて厨房に入ったのは、まだ中学を卒業したばかりの15歳のときだった。「手に職をつけたい」と当時から思い描いていた少年は、結婚式場に設けられたフレンチレストランで働き始める。しかしまだ英語すら儘ならぬ年齢だ。ましてやフランス語の知識などあろうはずもない。洗い物をする手が空けば、メニューを覚えるべくフランス語の辞書を繰ったものだ。
雰囲気を大切にした店内は
食事の楽しさを膨らませる
雰囲気を大切にした店内は
食事の楽しさを膨らませる
フレンチで2年あまり修行を積んだ後は、店を移り叔父のもとで料理のいろはを学んだ。高級食材を扱う洋食店の指導は厳しく、ビンタやフライパンが飛んでくることも少なくなかったが、それでも腐ることはなかった。ただ父と息子の関係というのはいつの時代も難しい。20代もなかばを過ぎたころの出来事だ。ちょっとした反抗心も手伝い、増倉さんは“親父”のもとを離れ上京した。このとき出合ったのが、「マ・メゾン」である。

フレンチや高級洋食店を経て「確かな味」にばかり気を取られていた料理人にとって、食事の雰囲気づくりに力を注ぎ世間の人気を獲得していた店の存在は、「カルチャーショックだった」という。
「それまでは値段なんて気にもしないようなお偉いさん方に対して、レシピに間違いのないよう作っているかが一番大事でした。でもマ・メゾンに移って、たとえば料理の盛り付けや食器にちょっと工夫を凝らすことによってお客さんは喜んでくれた。家族連れのお客さんたちが会話を弾ませながら美味しそうに食べている姿を見て、これがお店の第一歩なんだと思いました。そういう笑顔を見ることができれば、儲けなんて考えずにもっといいモノを作ろうと思える。僕は職人上がり。やっぱり『おいしい』と喜んでもらえることがなによりも一番うれしいですからね」
リーズナブルな価格ながら
確かな味を提供する
リーズナブルな価格ながら
確かな味を提供する
その後マ・メゾンは全国展開し、増倉さんは30歳で店を任されるようになった。現在はグループの母体が変わり彼も独立したかたちになるが、リーズナブルに美味しい料理を提供するという根本はいまも変わっていない。

宮崎台に店を構えたのは92年のことだ。これによって、自分の店を持つという料理人を志した当初の目標はすでに達成されたことになる。では、増倉さんはつぎなる目標として何を見据えているのだろう。
「こんどは宮崎台、さらに宮前区で一番の料理屋になりたい」
15歳のころから約40年、晴れて職人となったいまもなお、“親父”の教えは彼の胸の中に息づいているようだ。


取材・文◎隈元大吾
西欧風家庭料理 レストラン マ・メゾン

住所:〒216-0033  川崎市宮前区宮崎2-13-4 ミノワビル2階
電話番号:044-865-8798
営業時間:
11:30~15:00 平日 ランチ
17:00~23:30 平日 ディナー
11:30~23:30 土曜
(ランチは11:30~14:30)
11:30~22:30 日曜、祝日
(ランチは11:30~14:30)
定休日:不定休