幼いころから体が弱かった。すぐに疲労を覚え、風邪をひけば1週間は寝込んでしまう。あまりの体力のなさに、学生時代には「根性がない」と罵られることもあった。システムエンジニアとして働き始めてからは、一日じゅう座り通しの生活が祟ったのだろう、軽い運動をするだけで熱を出してしまうほどに体力は落ち込んでいた。

「健康になりたい一心でした」妻の水香さんは振り返る。
「根性がないと言われたのはショックでした。でも、根性を出せるだけの体のベースさえなかった。なんとかならないかと本を読み漁り、辿り着いたのが食事療法だったんです」

新たな取り組みによって、水香さんは体を内側からケアする方法を知る。勉強と実践の日々が、彼女の肉体を次第に癒していった。そして、「食事でこんなにも改善されるのか」という驚きと発見をより多くのひとたちに知ってほしいと思うようになった。勤めていた会社を辞めてからは、整体を学び、治療院で施術の腕も磨いた。

つぎの道へ踏み出した妻を、たか聡さんはおなじシステムエンジニアの仕事を続けながら支えていた。しかしあるとき、カイロプラクティックを新たに学ぼうとする水香さんに誘われ、彼もまた転機を迎えることになる。
「カイロの技術に強く惹かれたんです。それで私も仕事の傍ら、一緒に学ぶことにしました。はじめは趣味のつもりだったんですけどね」
　そう言って笑うたか聡さんは以後、熱心に勉強を続けた。一方、水香さんは整体やカイロの技術を活かして出張施術を行なった。妻が退社して3年、夫婦で開業する機は熟していたのだった。

こうして2001年1月、大賀さん夫妻は「健康へるぱー・たかみか」を立ち上げた。
「名前のとおり、皆さんの健康のお手伝いをしたいと考えています」と、たか聡さんは語る。彼らが見据えているのは、目の前の施術にとどまらない。
「痛みや凝りなどの症状にはもちろん対処します。ただ、体に不具合が生じるのはもっと根本的な原因があるから。そこを改善しないかぎり、たとえ痛みが解消されたとしても本当の意味で健康体にはなっていません。私たちは食事と運動、睡眠という3原則を柱に、健康のために何をすべきかお伝えしています」

　実際、症状が回復しても月に一度、体のメンテナンスに訪れるひとたちは多い。リピーターからは、「ここと出会えてよかった」という声も届く。

「健康を維持するためには、食事だけではなく体のバランスも大事。トータルに診るよう心掛けています。体が発するサインに、皆さんが自分ですぐに気付けるようにしていきたい」と水香さんはいう。たか聡さんも、「最終的には私たちが診なくても健康を維持できるようになっていただくことが理想」と語る。

　身をもって味わったからこそ理解できることがある。苦しみ、克服した自らの体験をもとに、ふたりは訪れた人々と向き合う。ひとりでも多くのひとたちに喜んでもらうために。


取材・文◎隈元大吾