地元暮らしをちょっぴり楽しくするようなオリジナル情報なら、川崎市宮前区の地域ポータルサイト「宮前ぽーたろう」!
文字サイズ文字を小さくする文字を大きくする

川崎市宮前区の地域ポータルサイト「宮前ぽーたろう」

宮前バスの旅

「鷺01 鷺沼駅-東山田営業所」の旅

提供:川崎市
宮前区内を走るバスは約45系統。坂が多い地域でもあり、バスは日常の足として欠かすことができないものです。
そんな移動手段としてふだん利用している路線バスも、のんびり“バスの旅”を楽しめば、窓の外には今まで知らなかった風景が待っています。
毎回、ひとつの路線を始発から終点まで乗車し、気になる停留所に途中下車。そこで出会ったものを紹介します。

路線案内

【運行バス】 東急バス
【系統名】  鷺01
【おもな停留所】 鷺沼駅-中有馬-すみれが丘-センター前-東山田営業所
【運行距離】 約5.2km
【経路】 東急田園都市線鷺沼駅からさぎ沼南大通へ。国道246号を横断して有馬街道(久末鷺沼線)を進み、中有馬交差点を右折。「有馬変電所」を過ぎたところで横浜市都筑区との市境を越えてケヤキ通りを行き、すみれが丘入口交差点を左折。日吉元石川線を進んで城山交差点を左折し、終点の東山田営業所へ。
【特徴】 道幅が広く、並木が美しい通りを行く。鷺沼駅と横浜市都筑区の港北ニュータウンをつなぐ路線で、1日中利用客が多い。
鷺沼駅<br>
鷺沼駅
中有馬<br>
中有馬
山田富士<br>
山田富士

バス旅記

トウカエデ並木に沿って<br>カッパーク鷺沼は広がっている<br>
トウカエデ並木に沿って
カッパーク鷺沼は広がっている
鷺沼駅からバスに乗る前に、東急田園都市線の線路をまたぐイチョウ並木をちょっとお散歩。このイチョウ並木は宮前区役所の前を通り、お隣の宮崎台駅のそばまで、道沿いにずっと続いているものです。
 イチョウの葉が色づいて黄金に染まった通りがどこまでも続く季節はきっと素晴らしいだろうと想像しながら行くと、カッパーク鷺沼入口交差点。右へ曲がり、前後にトウカエデの並木が伸びているのに気がつきました。
 トウカエデも紅葉が美しい木で、緑の葉が黄色から朱色や紅色へと染まってゆく様は見事。秋空に映える鮮やかな風景を眺めて歩けば、心が洗われるでしょう。
毎月第1・第3金曜の午前中は<br>ジャブジャブ池の清掃日<br>
毎月第1・第3金曜の午前中は
ジャブジャブ池の清掃日
昭和41年(1966)、東急田園都市線が開通され、大規模な宅地開発によって鷺沼駅近くの線路沿いに「川崎市水道局鷺沼配水池」が設置。昭和43年(1968)、貯水池屋上部に大小4つの屋外プールを備えた「鷺沼プール」がオープンし、沿線各地からの来場者でたいへん賑わいました。
 平成14年(2002)、プールは施設の老朽化と利用客減少のため廃止。平成18年(2006)、跡地に「土橋小学校」、川崎フロンターレが運営するフットサル場「フロンタウンさぎぬま」、ジャブジャブ池がある公園「鷺沼ふれあい広場」などが整備され、一帯は「カッパーク鷺沼」と呼び親しまれるようになりました。
 鷺沼ふれあい広場にはたくさんの親子連れ。水遊びをしている子、砂遊びをしている子、芝生の上を走りまわっている子。子どもたちのはしゃぎ声がこだまし、人々の生活にうるおいを与える場であり続けています。
5~6月頃に大きな黄緑色の<br>花をつけるユリノキ並木<br>
5~6月頃に大きな黄緑色の
花をつけるユリノキ並木
トウカエデ並木とイチョウ並木を戻り、鷺沼駅のバスロータリーへ。東山田営業所行きの4番乗り場から眺められたのはサクラ並木。サクラの葉はすでに色づき始め、本格的な秋の到来を感じさせてくれます。
 走り出したバスの窓には有馬方面へ連なるイチョウ並木。中有馬交差点を右折したところで、別の並木が目に飛び込んできました。
 それではと、中有馬停留所に下車。この並木は何だろう? と歩きながら木の名前が書かれたプレートを探しますが、なかなか見つかりません。まわりの風景が商店街から住宅街に変わったあたりで、散歩中の男性に「ユリノキの並木ですよ」と教えてもらいました。
のんびり散歩に最適な<br>植木栽培地のつげ・もみじの里<br>
のんびり散歩に最適な
植木栽培地のつげ・もみじの里
住宅街の交差点に標示板「植木の里めぐり→」が立っています。「→」といわれたら、行かないわけいかないよなぁと歩き始めると、「宮前植木の里 総合案内板」を発見。その後ろにツツジ、キンモクセイ、サルスベリ、シャラ、ハナミズキなど、さまざまな種類の木が並ぶ植木栽培地が広がっています。
 「植木の里めぐり→」の標示板はこの先にもあり、またもや歩を進めれば「つげ・もみじの里」の案内板。かつてこのあたりは栗の産地で、つぎ木による苗木の生産が行われていたそうです。「今ではその技術を生かし、もみじの生産地となっています」とのことで、ツゲやモミジ、その奥にはクリ園が眺められました。
植木栽培地のところどころに<br>モミジが見え隠れしている<br>
植木栽培地のところどころに
モミジが見え隠れしている
キューイキューイと甲高い鳥の鳴き声。木々のあちらこちらにグレー色の尾が長い鳥がいて、何かの拍子にいっせいに飛び去っていきます。
 クリ園には背中に縞模様がある鳥。木の中の虫を捕ろうとしているようで、枯木をくちばしでつついています。クルマも人もほとんど通らない静かな通り。コンコンコンコン、コンコンコンコンという軽快な音だけが響きわたっています。
 通りに面したモミジの葉は緑色。真っ赤に紅葉した日には、散歩にますますぴったりの道となるでしょう。
山田富士の頂上からの眺めも<br>見逃せない山田富士公園<br>
山田富士の頂上からの眺めも
見逃せない山田富士公園
中有馬停留所からバスに乗り、しばらくユリノキ並木の景観を楽しみます。坂を上りきったところは川崎市と横浜市の市境。窓の外が今度はケヤキ並木に変わり、バスは坂を下って行きます。
 港北ニュータウンのマンション群にはさまれた道を進んで行くと、建物の向こうに小高い山。山田富士停留所に下車し、「山田富士公園」へ向かいます。
 江戸時代に盛んだった富士山信仰の富士講は、富士山へ実際に登って参拝できない講員のために富士山を模した富士塚を各地に築き、6月の山開きの日などに登りました。
 山田富士はその1つで、2本の登山道の頂上には富士山そっくりに噴火口まで造られています。近代的な街並みのなかで、地域の歴史をかいま見られる貴重な場所です。
ふじやとのみちは<br>山田富士公園と徳生公園を<br>結んでいる<br>
ふじやとのみちは
山田富士公園と徳生公園を
結んでいる
港北ニュータウンは宅地開発の際、それまでにあった自然環境や地域の歴史を最大限に保存。公園緑地や樹木林、神社仏閣などを全長14.5kmにもおよぶ歩行者専用の緑道で結びました。山田富士公園にも緑道「ふじやとのみち」が通じていて、人々が行き交う姿があります。
 2008年3月末、横浜市市営地下鉄4号線「グリーンライン」が開通され、山田富士公園のそばに「北山田駅」が開業予定。港北ニュータウンに新しい“道”が開かれます。今回のバスの旅でたどってきた並木道の行く先もまた、広がっていきそうです。
文・写真・地図:森田奈央 2007年10月に取材しました。
川崎市在住のフリーライター。散歩が好きで、好奇心のおもむくままに日々歩きまわっている。著書に猫を追いかけて歩いた「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)。