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宮前バスの旅

「野川南台コミュニティバス『みらい』運行開始!」

第12回

宮前区内を走るバスは約45系統。坂が多い地域でもあり、バスは日常の足として欠かすことができないものです。
そんな移動手段としてふだん利用している路線バスも、のんびり“バスの旅”を楽しめば、窓の外には今まで知らなかった風景が待っています。
毎回、ひとつの路線を始発から終点まで乗車し、気になる停留所に途中下車。そこで出会ったものを紹介します。

路線案内

【運行主体】 県営野川南台団地自治会(738世帯1500人)
【利用対象】 県営野川南台団地自治会の会員
【運行日】 月・水・金曜日(祝日などは運休)
【運行時間】 9時台~15時台(1日18便運行。12時台は運行なし)
【運賃】 無料
【使用車両】 乗車定員10名の車両1台
【運行ルート】 3つのルートを1時間かけて走行
団地集会所前に
用意されている発着場所
団地集会所前に
用意されている発着場所
3ヶ所の乗降場所は
民間の駐車スペースの
一部を借用
3ヶ所の乗降場所は
民間の駐車スペースの
一部を借用
発車時刻は毎時、統一させて、乗客がおぼえやすいように設定
発車時刻は毎時、統一させて、乗客がおぼえやすいように設定

バス運行の道のり

1969年に完成した
県営野川南台団地
1969年に完成した
県営野川南台団地
約40年前、県営野川南台団地が完成した野川南台地区。当時、入居した住民の年齢は30代前後が多かったといいます。野川南台地区は高台に広がり、周囲の低地との高低差は約35メートル。勾配率7%の急な坂道が伸びているところもあります。
 地区内には日常的に必要なものを買い揃える商店や定期的に通う病院などがほとんどなく、公共の交通機関も乗り入れていません。高齢となった住民が坂道を行き来するのは困難で、外出しにくい状況となっていたのです。
右奥に乗降場所(1)の
セブンイレブン川崎高津野川店。
周辺には病院が多い
右奥に乗降場所(1)の
セブンイレブン川崎高津野川店。
周辺には病院が多い
平成17年、県営野川南台団地自治会が中心となって、「南台コミュニティ交通導入推進協議会」を設立。コミュニティ交通の導入を目指し、行政と協働で取り組みをスタートさせます。
 コミュニティ交通の形態は、路線バスや乗り合いタクシーの運行も考えられましたが、運行の環境や採算が合わないと判断。持続性を重視しようと、自治会が運行することを選択します。それにより、ガソリン代、車両保険代、運転手への謝礼などの運営費は自治会費で負担、運転手は地域のボランティアとされました。
乗降場所(2)の野川郵便局。
尻手黒川道路を挟んで左に郵便局、
右にオーケー川崎野川店
乗降場所(2)の野川郵便局。
尻手黒川道路を挟んで左に郵便局、
右にオーケー川崎野川店
そして、平成18年度に約1ヶ月、平成19年度に約6ヶ月の試行運行が行われ、同時にアンケート調査を実施。路線ルートや運行内容の検討が重ねられ、ようやく、平成20年7月より本格運行が開始されることになったのです。
 なお、試行運行にかかる費用の一部や本格運行時の車両購入費などは川崎市が補助。協賛企業として、川崎フロンターレ、オーケー川崎野川店、セレサ川崎農業協同組合野川支店などが名を連ねました。
運転手は国土交通省主催の
運転者講習を受講した
地域ボランティア
運転手は国土交通省主催の
運転者講習を受講した
地域ボランティア
コミュニティバス「みらい」の発着場所は、野川南台団地集会所の前にあります。発車時刻が近づくと乗客が集まり始め、集会所の玄関はまるでバスの待合室のようです。
 乗客がバスに乗る際、運転手さんは踏み台を用意して、「ドアの上に頭をぶつけないように気をつけてくださいね」と声をかけます。乗り合わせた乗客たちは「あら、こんにちは」「いいお天気ですね」などと挨拶しあい、和やかです。
 利用客の数は日時によって変わり、とくに午前9~10時台は団地から出かけていく人でにぎわいます。乗降場所①のセブンイレブン川崎高津野川店で下車する人はその周辺の病院へ、乗降場所②の野川郵便局で下車する人は郵便局や郵便局前のスーパー、オーケー川崎野川店へ、乗降場所③のセブンイレブン野川くぬぎ坂店で下車する人は川崎市バス・東急バス停「野川くぬぎ坂」から小杉駅・中原駅行きや鷺沼駅行きのバスなどに乗り換えることが多いといいます。
乗降場所(3)の
セブンイレブン野川くぬぎ坂店。
野川くぬぎ坂停留所から
路線バスに乗り換え
乗降場所(3)の
セブンイレブン野川くぬぎ坂店。
野川くぬぎ坂停留所から
路線バスに乗り換え
それぞれの乗降場所は安全を確保するために、郵便局やコンビニエンスストアの駐車場の一部を借用。バスを降りる人々は「どうもありがとう」「乗せてもらって本当に助かったわ」と、笑顔を残していきます。
 「団地から出かけていくときは健康のために歩く方もいますが、帰りは上り坂ですし、買い物をした荷物を持って上るのはたいへんです。午後はそういった方々が乗降場所からバスに乗って、戻ってこられます」と、野川南台団地自治会の前自治会長、藤田さん。
 コミュニティバスの運行によって外出する機会が増えたというほかにも、乗車中に利用者同士が会話を交わすことでコミュニケーションの輪が広がったという効果も出ているそうです。
坂道を上る「みらい」。
ここを歩いて上るには
体力的にも精神的にもたいへん
坂道を上る「みらい」。
ここを歩いて上るには
体力的にも精神的にもたいへん
「バスの運行が徐々に浸透してきて、バスが運行されなくなったら困ると、存続を希望する声をよく聞きます。しかし、ガソリン代が高くなるなど費用がかさむと厳しくなることも考えられます。たくさんの方々に乗っていただいて、地元の民間企業の協賛などを求めていけたらよいですね」。
 バスの名前「みらい」は、未来につながるようにという思いでつけられたといいます。乗客のなかには高齢者だけでなく、赤ちゃんとおかあさんの姿もありました。未来のためにコミュニティバスが走り続けることを願います。
文・写真・地図:森田奈央 2008年8月に取材しました。
川崎市在住のフリーライター。散歩が好きで、好奇心のおもむくままに日々歩きまわっている。著書に猫を追いかけて歩いた「ネコ路地へ行こう」(小学館文庫)。