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かわさきマイスター活動レポート

平成21年度 かわさきマイスター認定式

新たに5名のマイスターを認定

デザイン彫金士 久保田宗孝(くぼたむねたか)さん

 久保田宗孝さんは18歳でこの道に入り、ジュエリー学校に通い、その後、宝石店や毛皮店にも勤務して1988年に独立しました。手作り飾り職人として伝統的な技法を用いながら、新しい技法も取り込んでいます。
 金属の特徴や性質を活かした溶解や、叩き上げて強度のある地金製作、オリジナルで繊細かつ丈夫なジュエリー製品まで一人で仕上げることの出来る市内で唯一の職人です。また、技術を活かしてアンティークなジュエリーや時計の修理・復元、オブジェなども手がけています。

 必要な技術・技能は、彫金、キャスティング、ヤスリ、溶接などで、これらの工程を一通り習熟するのには5年ほどかかるそうですが、職人として自立するにはセンスと努力が必要です。
 「独立すると技能が向上し、幅も広がる」と、顧客からの難問や難しいデザインの製作依頼などに積極的に対応することで、一層の意欲がかきたてられ、オリジナリティのある技術を磨いています。
 古くなったジュエリーや金歯など、金・銀・プラチナ製品はどんなものでも溶解分析して再利用します。べっ甲などを再利用して宝飾品を作ることもあります。

 そして「他の店で修理が無理と言われたが諦められない」という飛び込みの客に自分の技術を活かして、客の大切なジュエリーを蘇らせることに仕事の喜びを感じるそうです。
 自身の技術向上に努める一方で、若手の指導育成に力を入れてその技術を伝えることにも熱心なマイスターです。今までに教えた弟子は50人ほどで、そのうち3人が開業したそうです。
 地元で30年続けているだけあって、親子三代に渡って手がけているお客さまもいらっしゃるそうです。ひとつひとつ手作りされるジェリーは、とても繊細です。
 この日奥さまが身に付けていらっしゃったジュエリーもすべて久保田さんが手がけたもの。「気付いたら、こんなにたくさんあるの?というくらいあってビックリした」と仲睦まじいご様子です。
 リフォームも手がけていて、古いジュエリーを、新しい感覚で今身につけられるように作り替えるのも自分の仕事とおっしゃいます。「高い宝石ということではなく、思い出はかけがえのない宝物。眠っているジュエリーや、思い出の品を、ぜひ持ってきてください」。

■手作り工房ジュエリー・クボタ
(川崎区大島2-12-5、TEL044-246-0071)

食品サンプル 田中司好(たなかしこう)さん

 田中司好さんは食品サンプルを作る会社を経営しています。1960年からこの道のトップ企業で修業し、1973年に創業しました。
 食品サンプルでは形状、色合い、レイアウト等において見た目の美味しさを表現することが必要とされています。特に色合いに関しては技術の差が強く反映されるそうですが、田中さんは食べ物であれば何でも写し取って、本物を見ずに色・形を正確に再現する技術をお持ちです。
 とりわけ難しいと言われる和食に関しても見事な再現性を持ち、ご指名で長年発注をいただくお得意先が100社弱あります。

 材料はパラフィン、ソフトビニールなどで、色は油絵の具を使います。レタスをパラフィンで作るところを実演する際には、パラフィンをお湯に入れて製作しますが、レタスは葉を一枚ずつ作っては巻いて行き、最後に包丁で半分に切ると中の形や色までレタスそのものに再現されます。
 魚は本物をシリコンで型どってからソフトビニールで作り、鱗一枚一枚手書きで再現します。魚が出来るようになったら一人前となるよう、20年以上の経験が必要とされます。
 また、ビールはゼラチンで作り、泡もゼラチンをかき混ぜることで再現します。

 田中さんは極めて研究熱心で、本物を再現するために、直接、近くにある北部市場などへ頻繁に出向いて観察します。ものづくりの楽しさを伝えることの出来るマイスターです。

 本物以上においしそうに見える食品サンプルを作ることで定評があります。大阪万博では1m級の鯛のサンプルを作成したこともあるそうです。
 後継者は次男で、20歳からこの道に入り、14年ほどになります。家族で食事に行っても、出てきた料理を観察するため、なかなか「いただきます」と言えないそうです。
 業界大手の企業で経験を積み、独立してから36年。「こういう機会を頂いて光栄です」と語ります。
 今でこそブームでもある食品サンプルですが、当初はとても珍しい職種でした。ロウをたらして作る天ぷらは、テレビ出演でもリクエストされることが多いといいます。
 高い技能を要するのは鯛など鮮魚だそうです。「洋食はソースなどでごまかせるけど、生の魚は色や光を表現する必要があるので、非常に難しい」と言います。
 他にも難しい素材はたくさんあります。グラタンのチーズがトロンと伸びる感じは、奥さまに作ってもらって研究することもあるそう。バレンタインのときにショーウィンドウに飾られるサンプルは、そのお店から注文をうけて、オリジナル商品そっくりに作り上げるそうです。

■有限会社つかさサンプル
(宮前区水沢3-3-15、TEL044-976-0828)
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農業(花卉(かき)生産) 吉田義一(よしだよしかず)さん

 吉田義一さんは宮前区馬絹で農業を営んでいます。近隣の農家が農地を手放したりする中、農業を守り、古くから栽培されていた伝統のハナモモを中心とした枝折(しおり)物の栽培に専念してきました。

 かつて、枝折物作業は重労働で、管理、保存等には地下ムロを利用していました。吉田さんは作業の軽労化を図るため創意工夫をし、枝折作業は結束機を開発し、ムロは地下から地上へと変えました。結束機による枝折作業は、品質を落とさず、作業時間を1/3~1/5に短縮しました。
 地上ムロはあまり費用をかけずに、市販の器具を用いるなど工夫をして、地下ムロと変わらぬ条件を整えました。これにより、作業効率が上がり、軽労化による生産量拡大に結びつきました。
 この点で全国的に高い評価を受けており、昨年度、全国で28名、神奈川県で唯一の「農業技術の匠」として農林水産省から認定されています。

 また、長年の経験からマイスターならではの花卉露地栽培に関する様々な技術・技能をお持ちです。
 良いものを作るためには「勘が大事」とのことで、他の農家の人たちを自宅に寝泊りさせて生活を共にしながらじっくりと技術を教え、勘を会得させております。
 さらに、社会経済情勢を分析し、輸入されない植物を栽培するなど、企業家的かつ研究者的な思考をお持ちです。これからの都市型農業の将来像を示すマイスターです。
 今回の認定には、「自分自身にとっても責任重大です」と、語る吉田さん。生花吉忠の三代目として、地元で農業を続けています。
 「次の世代に技術を伝えるだけではなく、人間性も育てたい」と、生活をともにしながら教えた弟子は100人を越えるといいます。
 地元の小学生が総合授業で見学にくることも多いそうです。後継者である息子さんやご家族、そして吉田さんご自身の、笑顔を絶やさないお話から、地元の子どもたちも多くを学び取っていることでしょう。

生花吉忠(宮前区馬絹1761、TEL044-866-3357)