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かわさきマイスター活動レポート

小学生120人がものづくり体験

マイスター3人が市立長沢小学校へ

仲亀 誠市さん(洋菓子士、平成20年度認定)

洋菓子を作りはじめて44年の仲亀さんのお菓子には全国にたくさんのファンがいます。
洋菓子を作りはじめて44年の仲亀さんのお菓子には全国にたくさんのファンがいます。
洋菓子を作りはじめて44年の仲亀さんは、25歳でドイツの老舗菓子店コンディトライ(ドイツ語でケーキ店の意味)「マドロン」に出向き、そこで本格的なドイツ菓子を学びました。「伝統を崩さずに日本人の味覚に合うよう」手を加えられた仲亀さんのお菓子にはたくさんのファンが。とくに、いまではよく知られる「シュトーレン」を普及させた第一人者で、全国でもこのお菓子を作る店は2,3軒しかなく、毎年クリスマス時期には生田駅近くにあるご自身のお店からたくさんのシュトーレンが日本中に発送されます。

ロールケーキづくりを通して洋菓子士の仕事を学ぼう

生徒たちは仕事に対しての内面的なことや技術的なことについてたくさんの質問事項を用意しました。
生徒たちは仕事に対しての内面的なことや技術的なことについてたくさんの質問事項を用意しました。
長沢小学校の6年生が行っている「未来へゴー・自分を見つめて」という授業は、これまでの自分を見つめなおして将来を考えて行こうというものです。それぞれの児童はなりたい職業への夢を持っていますが、自分の家族の仕事を通してその楽しさや意義を探ったり、いろいろな人の職業への思いなどを学んだりすることによってその夢を少しでも現実にするための何かを習得するのを目的としています。この体験教室も、大人が仕事に対して誇りを持ちながら素敵な生き方をしている姿を身近に体験することに意義があるという観点から設けられています。仲亀さんの教室はロールケーキづくりを通して洋菓子士の仕事を学ぼうというもので、大治聡子先生の指導のもと38名の児童が参加しました。
仲亀さんのお話を聞きながら熱心にノートを取る子どもたち。
仲亀さんのお話を聞きながら熱心にノートを取る子どもたち。
ロールケーキづくりに入る前に、まずは仲亀さんからお菓子づくりの世界に入った自分史についてのお話がありました。

○洋菓子士を選んだきっかけは?
静岡県でお菓子店をしていた親戚にあそびに行ったときにケーキづくりのお兄さんが作ったケーキを食べて感動した経験がこの道にはいったきっかけです。最初はそのお店で働きました。

○お菓子づくりの修行について
お菓子職人は技術的に磨きをかけるため1か所で5、6年修行をしたあと、違う店に移って修行するのがパターン。私も静岡のお店から超有名洋菓子店の「クドウ」に移りそこに3年間いました。将来は本場のドイツ菓子を学びたいと思っていたので休日はドイツ語習得のため語学学校にも通いながら、朝6時から夜8、9時まで働いてお菓子づくりの腕を磨きました。
ドイツの老舗菓子店コンディトライ「マドロン」に行ったのはそのあとにスイスに姉妹店のある先輩のお店を1年間手伝ってからです。帰国後はNHK「今日の料理」などでよく知られる森山サチ子さんに任せられて洋菓子店を経営するなどして、30歳の時に自分の店を構えました。
ドイツ菓子の写真を食い入るように見る子供たち
ドイツ菓子の写真を食い入るように見る子供たち
仲亀さんのお話に熱心に耳を傾けながら子供たちは内容を一所懸命ノートに。話が終わると仲亀さんはドイツ修行時代の「ヘキセンハウス」(グリム童話の「ヘンゼルとグレーテル」で登場するお菓子の家)や前述したシュトーレン作りの風景写真を披露しました。手から手へ回されてきた写真を食い入るように見る子供たちはケーキに夢中。仲亀さんによると、クリスマスになるとドイツのお菓子屋さんにはレープクーヘンの生地で作られたこのヘキセンハウスが所かまわず並ぶそうで、職人さんは11月の終わり頃から大忙しとか。また、シュトーレンもドイツのクリスマスには欠かせないもので、仲亀さんの作るものは修行先「マドロン」の6代目シェフ直伝。かわさきマイスターに認定される際に評価されたお菓子です。

いよいよロールケーキづくりへ!

まずは、調理テーブルの前に全員が集まってお菓子作りに使う道具の説明を。
まずは、調理テーブルの前に全員が集まってお菓子作りに使う道具の説明を。
いよいよロールケーキづくりに入りました。最初は調理テーブルの前に全員が集まって仲亀さんが使っているお菓子作りに使う道具の説明を聞きました。お菓子づくりの機械は10種類くらい、道具は100種類くらいあるそうです。例えばトリュフチョコなど小さいものを作る特殊なホークだけでも10種類、人形を作るヘラも15種類くらいあります。当日持参したものはほんの一部。おうちにおいてある物とちがってなにか威厳のようなものが漂ってきます。
生地はあらかじめ作ったものを用意。
生地はあらかじめ作ったものを用意。
ロールケーキの生地は時間と設備を考慮して仲亀さんがあらかじめ焼いたものを持参しました。お店では大きいものを作りますが、今回は作業しやすいように小さめなものを6枚用意。6本のミニロールケーキを作ります。
生クリームを泡立てます。
生クリームを泡立てます。
まずは、ロールに巻くキャラメルソース作りを仲亀さんが実演しました。「生クリームだけでも美味しいんだけれど、ちょっとつまらないんで」(仲亀さん)ということで今回はキャラメルを加えてキャラメルソースに。砂糖にキャラメルを足すと甘さや苦味がうすまりキャラメル独特の風味がでるそうです。
ガスコンロに仲亀さんが火をつけ、生クリームを泡立て、ボールに入れたグラニュー糖に生クリームを混ぜ合わせていきます。生クリームはフレッシュクリームという牛乳から作った純正のもの。値段はちょっと高目ですが美味しいとのこと。水などを加えていないのに砂糖が液状になっていきます。教室中においしそうな香りが漂いました。
泡立てた生クリームをグラニュー糖が入ったボールの中に。
泡立てた生クリームをグラニュー糖が入ったボールの中に。
あとはキャラメルと水で冷やした板ゼラチンを入れてできあがり。ゼラチンはクリームを垂れにくくさせる効果もあります。今回は板ゼラチンを使いましたが、粉末や顆粒のものでもかまわないそうです。ただしそれを使うときはクリームが硬くなりすぎないように量を少し減らすようにするのがコツだそうです。
ソースを塗る作業とそれを巻くお手本を仲亀さんが子どもたちに実演。巻きはじめがけっこうむずかしく、横から眺めながら少し巻いたら5センチほどもちあげ表面の生地をちょこんと抑え、鉄棒をするときの要領で手首を少し返すようにするのがポイントとのこと。見本の1本ができあがるとみんなからいっせいに歓声と拍手がわきおこりました。
生地にクリームを塗ります。焼き色のついている面に塗っていきましたが、逆面でももちろんかまいません。
生地にクリームを塗ります。焼き色のついている面に塗っていきましたが、逆面でももちろんかまいません。
巻きはじめがけっこうむずかしい。仲亀さんがお手本を示します。
巻きはじめがけっこうむずかしい。仲亀さんがお手本を示します。
さて、いよいよ子どもたち自身が実際にソースを塗り巻く作業をする番になりました。各グループが1本ずつそれぞれのテーブルで挑戦。初めて体験する人にとってはどちらの作業も苦戦していました。そういうときは仲亀さんが各グループをまわってお手伝い。中にはみんなでじっと腕を組んで生地を見つめたままのグループもいます。でも、みんなであれこれ指示しあいながら協力すると、うまく仕上がりました。「できた、できた」と頭の上にロールケーキをかかげて大騒ぎする子も。
みんなで生地にソースを塗っていきます。
みんなで生地にソースを塗っていきます。
なれないと意外とむずかしい作業。仲亀さんもお手伝い。
なれないと意外とむずかしい作業。仲亀さんもお手伝い。
冷蔵庫で冷やすにあたって自分たちのケーキがわかるように印を。
冷蔵庫で冷やすにあたって自分たちのケーキがわかるように印を。
作りたてはクリームが安定していないので、巻きあがったケーキは少し冷やすために冷蔵庫に。各グループのものが判別できるようにケーキを包んだ紙の上に印をつけます。

教えて、仲亀さん

子どもたちからはさまざまな質問が。
子どもたちからはさまざまな質問が。
○お菓子づくりでたいへんなことは?
忙しいときは朝早くから時間に追われてしまうこともあります。それに何人かで作る場合、一人が誤ってケーキをこわしたりするとたいへん。約束の時間に間に合わせるため大忙しです。

○得意なお菓子はなに?
やっぱりシュトーレンかな。これは同業者のあいだでの評判も高く私自身も美味しいもののひとつと自負しています。

○仕事をつづけてきてよかったと思うことは?
一所懸命つくったお菓子が「おいしかった」とお店でいわれるだけでなく、手紙などでいただいたときかな。

○ロールケーキ以外でお菓子づくりをはじめるのに適したお菓子は?
デコレーションケーキやショートケーキは初心者にもつくりやすいですね。あとクッキーは入門コース。それとゼリーなんかもいいかも。果汁100%の新鮮なものに砂糖やゼラチン、いま人気の海藻からできたパウダーなんか使ってつくるとおいしいですよ。

○お菓子づくりでいちばん多く使われる材料は?
やはり砂糖、粉、卵が基本です。洋菓子屋さんだとそれ以外にチョコレートやナッツ類も多く使われますね。お寿司屋さんなどと違って、何もないところから材料だけで作っていかなければならないので、たいへんといえばたいへんですが、その分いろいろな創意工夫もできて楽しいですよ。

いただきまーす

仲亀さんが1本1本を8等分にきりわけたものを目の前にしてみんな目を輝かしながら大騒ぎ。
仲亀さんが1本1本を8等分にきりわけたものを目の前にしてみんな目を輝かしながら大騒ぎ。
ロールケーキは冷蔵庫で20分ほど冷やして、いよいよ試食。仲亀さんが1本1本を8等分にきりわけたものを目の前にしてみんな目を輝かしながら大騒ぎです。あちらこちらのテーブルから「おいしィ」の声が聞こえてきました。当然ですよね。

わたしたちが感じたこと

○国母竜太郎君
「いいお話もいっぱい聞けたし、おいしいロールケーキも食べることができてとても楽しかったです。自分もパシティエになるのもいいかもと思いました」。国母君は今日のためにパシティエや料理職人さんお仕事について調べたそうです。質問したり、ケーキを巻いたりと活発に体験を楽しんでいました。

○杉野朱里(あかり)さん
「楽しかった。おばあちゃんがつくるお菓子をみて下調べみたいなことをしました。ケーキも一度作ったことがありますが、マイスターのものは自分の作ったものとはちょっと違うかな」。将来パシティエになって自分のお店を持つのが夢だという杉野さんにとって今日の体験はたいへん有意義なものになったことでしょう。

仲亀さんのお話

セミプロ対象の教室で長く講師をつとめてきた仲亀さんですが、中学校での体験教室は経験があるというものの、小学校は初めてとのことですが、「ちょっと緊張していたので疲れましたが、みんな真剣に話を聞いてくれたり、楽しそうにケーキづくりを体験してくれたりしたのでうれしいし、私自身にとっても有意義な経験となりました」と話してくれました。

長沢小学校で3人のマイスターが一度に体験教室を開くというのは初めての試みでしたが、校長先生の「子供たちには有効な時間を過ごしてもらいたいし、マイスターのみなさんにも心に残る時間になってほしい」という願いは十分に達せられた体験教室でした。