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かわさきマイスター活動レポート

てくのかわさき技能フェスティバル2010

かわさきマイスター20人が熟練技を披露

都倉 正明 さん ――フラワー装飾

フラワーアレンジメントの体験コーナーを設けた都倉さん。参加者には「型にはめず、思うままに活けたらいいよ」とアドバイスしていました。自由な発想こそ、都倉さんの流儀。顧客の要望に応えるとともに、独創性にあふれたフラワー装飾で、多くのファンに喜ばれています。技術としては、生け花のように立体的にアレンジするのがコツ、と教えてくれました。このほか、金網のフレームをかぶせて3年がかりで造形したトピアリーも展示され、注目を集めていました。

右上が3年がかりで造形したトピアリー
右上が3年がかりで造形したトピアリー
ひらめきを大切にする都倉さんですが、その発想も、親の代からの花卉生産で蓄積した、深い見識があってこそ生かされます。「日本の花が好きです。四季を通じて、日本の風土が育てた花だから、長持ちするんです」と都倉さん。花の持ちを計算して、巧みにアレンジしています。例えば、輸入物のバラは、最後まで開かずに枯れてしまうとのこと。また、県の風土、高原か暖地かでも、花の特性が違うそうで、夏は高冷地で生産された花を仕入れるといいます。「知識がないと、できない仕事です」と都倉さん。講師を務める教室では、花の産地から講釈するそうです。

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飯嶋 義弘 さん ――時計技能士

メーカーごとに異なる高級アナログ時計の部品機構が、すべて頭に入っているという飯嶋さんは、故障個所を的確に把握し、分解、洗浄、部品交換、組み立てを行うことができる、時計のプロフェッショナル。「全部直せなければ、職人とはいえない」と言い切ります。ストップウオッチ機能がついたクロノグラフを修理できる、数少ない職人でもあります。時計の作りの良し悪しは、歯車の精度で決まるそうで、ロレックスなどの高級時計は可能な限り設計図通りに作っているため、コストが高くなるとのこと。飯嶋さん曰く、「何ミクロンの世界」だそうです。

歯車が動く様子がよくわかります
歯車が動く様子がよくわかります
展示されていた柱時計は、会場のてくのかわさきに保管されていた60年前の時計を、飯嶋さんが修理して蘇らせたもの。歯車が動いてハンマーを動かし、鐘が鳴る様子が、クリアケースを通してよくわかるため、子どもたちが夢中になって見つめていました。時計の総合相談では、自宅の柱時計を直したいという来場者が訪れ、修理を依頼していました。

時計は内部に潤滑油を蓄える穴がありますが、油切れのまま使うと、部品の摩耗が激しいので、3年に1度の間隔で油を刺すのが基本だそうです。「手入れをすれば、100年でも使えるよ」と飯嶋さんはいいます。


竹内 三郎 さん ――円筒研削技能士

円筒研削盤を使い、コバルトなどの超硬合金を公差±0.001ミリ以内に加工する技能を持つ竹内さん。自動車や電子機器、工具などの生産に必要不可欠な精密部品を加工しています。展示のスーパーコンピューターの基盤(縦横約40センチ)では、90ミクロンという超硬合金の超極細ピンを製作し、10万基分の極小の穴を加工しました。

スーパーコンピューターの基盤(中央)
スーパーコンピューターの基盤(中央)
円筒検索には、「経験の積み重ねが大事」と話す竹内さん。経験値について、直径22ミリの製品を作る場合、22.5ミリから22.04ミリまで削れるようになるのに2年、そこから22ミリまで3年、7~8年かかってやっと完成品が作れるようになるレベル、と説明してくれました。

経験によって鍛えられるのが、「目と手の感覚」。金属にダイヤの砥石をかける際、熱による膨張を防ぐため、水をかけながら削っていきますが、この水の色が、ミクロ単位まで削っていくと、黒ずんでくる瞬間があるといいます。「灰色になったタイミングを見逃さないこと」と竹内さん。ミクロ単位は研削盤の目盛にないそうで、まさに目と手の感覚だけで正確な厚さを見極める、達人の世界です。


井上 衛 さん ――造園士

設計から作庭まで、樹木の選定や配置、石組み、霜よけなど、造園に関するあらゆる知識と技術を持つ職人、井上さん。公園、街路樹、マンションの植え込みなど、様々な場所で緑のある快適な環境を整えています。会場には丸竹を隙間なく並べてシュロ縄で結んだ「鉄砲垣」、二つ割した太めの丸竹を縦に並べて胴縁に結んで留めた「木賊(とくさ)垣」、竹を縦横に組んだ「四つ目垣」の、それぞれミニチュアを展示。「木賊垣」について、「名前の通り、盗賊が登れないように造ったんでしょう。継ぎ目やとっかかりがなく、本物は1.8メートルの高さがあります」と説明してくれました。

手前が「鉄砲垣」、奥が「木賊垣」
手前が「鉄砲垣」、奥が「木賊垣」
「剪定には、木の種類に沿った方法があり、センスも必要」と話す井上さん。今は植え込みの手入れの仕事が多くなりましたが、手間がかからないように鋸で切ってほしいと言われることが、残念だといいます。「木が成長しやすいように手入れをするのが、造園の常識。ばっさり切ってしまうと、木が悔しがるから、来年はぐっと伸びてきて悪循環になります」とのこと。また、ここ数年の温暖化が植物の成長サイクルにも影響しているそうで、以前は正月に備えて10月に植え込みの手入れをしましたが、今では同じ頃手入れをすると、正月にはまた剪定が必要になるほど樹木が成長してしまうといいます。長年、現場で木に向き合ってきたマイスターのお話は、とても興味深いです。


久保田 宗孝 さん ――デザイン彫金士

デザイン、制作、修理、加工まで、ジュエリーや時計に関するあるゆる注文を受け付けている久保田さん。「全部やらないと、お客さんに嘘をついているような気がするから」と、地金作りや石留めなどすべての工程をひとりでこなしています。その作品も、現代風のデザインからアールヌーボー調のものまで、様々。昔の造りまで対応する職人は珍しいのだそうです。

展示の猫の小物は、18金製。子どもが描いた絵からデザインしたユニークな作品です。目はサファイア、胴にヒスイの飾り、よく見ると、足にはダイヤの粒が埋め込まれています。この日はリフォーム相談やオーダーメードの注文が続々と舞い込み、大忙しでした。

18金製の猫
18金製の猫
「お客さんのイメージに合ったものを作りたい」と、独立した久保田さん。技術とセンスが求められる、オーダーメードの品物を作る時は、特に腕が鳴るそうです。「今はシンプルだけど存在感のあるデザインが人気ですが、派手なものより、腕がでるから難しい。わかる人にしかわからない世界というか、微妙なカーブにこだわったり」と久保田さん。一方で、修理には当時の職人の仕事を再生する、復元の面白さがあるそうです。「自分の仕事も将来、復元されるようになってほしい」と語ります。

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小林 誠一 さん ――調理師

シンガポール、ポーランド両大使館に勤めて料理の腕を磨き、現在はホテルの総料理長を務める小林さん。「基本をわきまえ、食材をいかに現代風にアレンジしていくかが、料理の醍醐味であり、調理師としての腕のみせどころ」といいます。フランス料理をベースにした煮込み料理を得意とする小林さんですが、日本では味を一つ手前で仕上げ、日本人向けにアレンジしています。

大人気だった特製ビーフカレー
大人気だった特製ビーフカレー
横浜の歴代市長にこよなく愛されてきたカレーライスも、その奥義をいかしたもの。開業から30年間、基本レシピを変えていないそうです。工夫を凝らしたマイスター特製のビーフカレーはこの日も大人気。たちまち、売り切れてしまいました。

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川崎市民の祭典としてすっかり定着した感のある技能フェスティバル。ふだん何気なく使ったり、見ていた製品、わたしたちの暮らしを支えてくれている製品が、じつは長年、職人が培ってきた熟練技がなせる、手仕事によるものだということがよくわかりました。そんな職人の中でも、最高峰の匠であるかわさきマイスター。そのすばらしい技術をいつまでも、伝えていきたいものです。